体調が気になって検索すると、近くのクリニックがいくつも見つかります。「どこも同じように見えて、選び方が分からない」「病院のサイトに『専門医』と書いてあるけれど、何を意味するのか分からない」——そんな声を、外来でもよくうかがいます。
結論からお伝えすると、「専門医」とは、研修・症例経験・試験・更新という第三者の審査を経て認定される資格です。このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(総合内科専門医・呼吸器専門医・アレルギー専門医)が、この資格の仕組みと医療機関のサイトにある「医師紹介」ページの読み方、そして専門医を受診したほうが良い理由をご説明します。読み終えたときに、医師紹介を見る目が変わっていれば幸いです。診察のご予約はWeb予約からどうぞ。
「専門医」とはどんな資格ですか?
専門医とは、その診療領域の学会や日本専門医機構(にほんせんもんいきこう:専門医の認定を統括する第三者機関)が、研修・診療実績・試験にもとづいて認定する資格です。医師が自由に名乗れる肩書きではありません。
2018年に始まった現在の専門医制度では、内科・皮膚科・外科など19の基本領域が定められています。医師免許を取得し、2年間の初期研修を終えた医師が、さらに3〜5年の専門研修プログラム(内科は3年、皮膚科は5年など)に登録し、決められた症例経験を積み、試験に合格して初めて専門医と認定されます。呼吸器やアレルギーなどの「サブスペシャルティ領域」は、基本領域の専門医を取得したうえで、その先にさらに研修を重ねる二階建ての仕組みです。
もうひとつ重要なのが更新制です。専門医資格は一度取れば終わりではありません。多くは5年ごとに、診療実績や講習の受講を審査する更新手続きがあり、学び続けていることの確認が繰り返されます。
診療科の看板と専門医資格は、何が違うのですか?
意外に知られていない事実ですが、日本では、医師免許があれば、法令で定められた診療科名の範囲で、診療科の看板(標榜科:ひょうぼうか)を原則として自由に選べます。これを自由標榜制と呼びます。外科出身の医師が内科を標榜することも、制度の上では可能です(例外は麻酔科のみで、標榜に厚生労働大臣の許可が必要です)。
つまり、看板の診療科名と、その領域の研修を積んだ証明とは、別のものです。一方で「専門医」という表示には規制があり、広告に使えるのは厚生労働省に届け出た学会などが認定する資格に限られ、「日本内科学会 総合内科専門医」「日本皮膚科学会 皮膚科専門医」のように、認定した団体名を含む正式名称で表示するルールになっています。
だからこそ、受診先を選ぶときは、看板の診療科名だけで判断せず、その先の「医師紹介」まで見る価値があります。
医師紹介ページは、どう読めばよいですか?
受診先について、受診前に一番多くの情報が得られるのが医師紹介のページです。次の3点に注目すると、読み取れる情報が増えます。
① 医師の氏名・経歴・資格が公開されているか
どの医師が、どんな経歴を経て診療しているのか——これは患者にとって最も基本的な情報です。氏名・経歴・資格が公開されていれば、受診前に多くの判断材料が得られます。見当たらない場合は、公開ページから経歴や資格を確認する方法はありません。気になるときは、受診時や電話で直接たずねてみてください。
② 「専門医」の資格が、認定した学会名つきで書かれているか
前のセクションでご説明したとおり、専門医は研修・症例経験・試験・更新に裏付けられた認定資格です。「日本〇〇学会 〇〇専門医」という正式表記があるかどうかを確認してみてください。資格欄に専門医資格の記載が見当たらない場合、その領域の認定研修を修了しているかどうかは、少なくともそのページからは読み取れません。
③ 「所属学会」と「専門医」を区別して読む
医師紹介には「所属学会:日本〇〇学会」「日本〇〇学会 会員」という記載もよく見られます。ここは読み分けが必要なところです。学会への入会手続きは学会ごとに異なりますが、専門医資格のように研修・症例経験・試験による審査を経るものではありません。所属学会の記載はその医師の関心領域を知る手がかりにはなりますが、それ自体は能力の認定と別のものです。所属学会の記載だけでは、その領域の認定研修を修了しているかどうかは分かりません。
同じ学会の名前でも、「会員」と「専門医」では意味がまったく異なります。医師紹介を読むときは、学会名そのものより、「専門医」「認定」という言葉が資格として書かれているかに注目してみてください。
医師も、専門外のことは専門医に相談しています
あまり表に出ない話ですが、医師自身も、自分の専門から外れる問題に出会ったときは、その領域の専門医に相談します。院内の別の科に意見を求める、紹介状を書いてその領域の専門医につなぐ——これは医療の世界のごく日常的な光景です。医学は領域ごとに深く、ひとりの医師がすべてを最新の水準で診ることはできないと、医師自身がいちばんよく知っているからです。
私自身も、専門外の判断に迷う場面では皮膚科をはじめ各領域の専門医に相談しますし、逆に呼吸器やアレルギーについて他院の先生からご相談をいただくこともあります。
患者さんが受診先を考えるときも、この「専門医へつながる」という発想が役に立ちます。最初からその領域の専門医を受診する方法もあれば、かかりつけ医に相談して紹介してもらう方法もあります。どちらの道筋でも構いません。「困ったときに専門医へつながる」ことを、受診の選択肢に入れてみてください。
専門医を受診したほうが良い理由
専門医資格が示しているのは、「その領域について、決められた研修と症例経験を積み、試験に合格し、更新を続けている」という事実です。言いかえると、その領域の研修歴と知識の更新について、第三者の審査を通っているということです。
これは診療の場面では、次のような形につながります。
- 資格ごとに定められた研修・試験・更新の要件を満たしていることが確認されており、学会が示す標準的な診断・治療を土台にした診療が期待できます。
- 専門研修では多数の症例を経験することが認定の要件になっています。たとえば長引く咳のように原因の幅が広い症状では、その経験が原因の見分け(鑑別:かんべつ)の手がかりになります。
- 大きな病院での検査・治療が必要かどうかの相談がしやすくなります。必要なら連携する医療機関へ紹介し、クリニックで診られる状態であれば、大病院の長い待ち時間を避けられる場合があります。
ひとつ添えておきたいのは、専門医資格が医師のすべてを表すわけではない、ということです。専門医だから良い医師、と単純に言えるものではありませんし、長年にわたり地域を支えてきたかかりつけ医の経験や、相談しやすさも、受診先選びの大切な要素です。資格は「客観的に確認できる目印のひとつ」として、判断材料に加えてみてください。
どんなときに専門医への受診を考えるとよいですか?
次のような場面は、その領域の専門医がいる医療機関への相談を検討する目安になります。かかりつけ医がいる方は、まずそちらで相談し、紹介してもらう形でも構いません。
- 症状が長引いている・繰り返している(例:2〜3週間以上続く咳、繰り返す湿疹やじんましん)
- 治療を受けているのに良くならない
- 診断がはっきりしないまま経過している
- 健診で異常を指摘され、詳しい評価が必要になった
- アレルギーのように、複数の臓器にまたがる病気を総合的に診てほしい
「この程度で専門医にかかっていいのだろうか」とためらう必要はありません。原因を調べて「心配のない状態だと確認する」ことも、外来診療の大切な役割のひとつです。なお、強い息苦しさ・高熱・激しい痛みなど急を要する症状のときは、専門医かどうかにこだわらず、すぐに受診できる医療機関を優先してください。
当院の専門医体制について
なみきばしクリニックは、渋谷・並木橋交差点そばで、内科と皮膚科それぞれに専門医が在籍するダブル専門医体制をとっています。
- 内科:日本内科学会 総合内科専門医・日本呼吸器学会 呼吸器専門医・日本アレルギー学会 アレルギー専門医の資格を持つ医師が、幅広い内科診療と、咳・喘息・アレルギーの専門診療を行います。
- 皮膚科:日本皮膚科学会 皮膚科専門医が、湿疹・アトピー・ニキビなどの一般皮膚科から小児皮膚科まで担当します(診療日は火曜・木曜・第1/第3土曜)。
喘息とアトピーのように、呼吸器・アレルギー・皮膚の病気は互いに関連することが多く、ひとつのクリニックの中で両方の専門医が連携して診られることが当院の特長です。各医師の経歴・資格の詳細は医師紹介で公開しています。
よくあるご質問
受診先の医師が専門医かどうかは、どうすれば分かりますか?
医療機関のサイトの「医師紹介」ページで、資格の欄を確認する方法が手軽です。「日本〇〇学会 〇〇専門医」のように、認定した学会名つきで書かれているのが正式な表記です。各学会のサイトには専門医の検索ページが用意されていることも多く、氏名から確認もできます。
「所属学会」がたくさん書いてあれば、安心してよいですか?
所属学会の数と診療能力は、直接には結びつきません。入会の手続きは学会ごとに異なりますが、専門医資格のような研修・試験による審査を経るものではないためです。確認したいのは学会名の数より、「専門医」の資格が認定学会名つきで書かれているかです。
専門医のいる医療機関では、診察料が高くなりますか?
保険診療の費用は全国共通の診療報酬制度で決まっており、医師が専門医であることだけを理由に診察料が高くなることはありません。なお、実際のお支払い額は、行った検査や処置の内容によって変わります。
専門医でない医師にかかるのは良くないのですか?
そうではありません。専門医資格は判断材料のひとつであり、資格の有無だけで医師の良し悪しが決まるわけではありません。大切なのは、困ったときにその領域の専門医へつながる道筋があることです。かかりつけ医から必要に応じて専門医へ紹介してもらう形も、医療のうまい使い方のひとつです。
紹介状がなくても専門医を受診できますか?
当院は紹介状なしで受診いただけます。ほかの医療機関の受診条件は、それぞれの窓口やサイトでご確認ください。なお、大学病院などの大きな病院は、紹介状なしの受診に追加の費用がかかる場合があります。身近なクリニックでまず相談し、必要に応じて紹介状を書いてもらう方法もあります。
参考文献
- 日本専門医機構「専門医制度について(一般の方へ)」(2026年8月閲覧) https://jmsb.or.jp/ippan/ ——専門医制度の仕組み・19基本領域・研修と更新
- 厚生労働省「広告が可能な医師等の専門性に関する資格名等について」(2002年告示にもとづく運用・2026年8月閲覧) https://www.mhlw.go.jp/topics/2002/07/tp0717-1.html ——広告できる専門性資格の範囲
- 厚生労働省「麻酔科標榜に係る手続案内」(2026年8月閲覧) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10587.html ——麻酔科標榜の許可制
- 日本医師会「診療科名の標榜方法」(2026年8月閲覧) https://www.med.or.jp/doctor/sien/s_sien/000316.html ——標榜できる診療科名の範囲
- 日本内科学会・日本呼吸器学会・日本アレルギー学会・日本皮膚科学会 各専門医制度規則・入会案内(2026年8月閲覧)——専門医の認定・更新要件、学会入会の手続き
