9月の後半から10月にかけて、くしゃみや鼻水・鼻詰まりといった鼻炎症状や、眼のかゆみなどの症状でお悩みの患者さんが増えて来ます。多くの方が「秋の花粉かなと思うんですけど・・・」とおっしゃいますが、この時期の症状は、実はそうとは限りません。
秋はダニアレルギーが多い
確かにこの時期は「ブタクサ」「ヨモギ」「カナムグラ」のような秋の雑草の花粉が、夏の終わりから飛んでいる季節で、それによって症状が出る人もいらっしゃいます。
しかし、日本において秋のアレルギー症状の多くは「ダニ」が原因であることがわかっています。
秋にダニアレルギーが多くなる理由
ダニは1年中いるはずだけど?と思う方も多いでしょう。
確かにダニは1年を通して人間の暮らす環境、特に寝る場所(布団やベッド)、じゅうたん・カーペット、布製のソファなどにいて、いなくなることはありません。そのため、「通年性アレルギー性鼻炎」の原因となり、1年中症状を出現させています。
しかし、ダニは高温多湿な環境を好み、夏から秋にかけて繁殖します。特に10月頃にはダニの死骸やフンが増加し、これらがアレルゲンとして空気中に浮遊しやすくなります。これが原因で、秋にアレルギー症状が出る方が増えるのです。
ダニアレルギーの症状は?
ダニアレルギーによる症状は、花粉症と同じです。
ふわふわと飛散しているアレルゲンが鼻から吸い込まれたり眼にくっついたりすることで、鼻炎症状(鼻水、くしゃみ、鼻詰まり)や結膜炎症状(眼のかゆみ、充血)が起こります。
症状だけではダニアレルギーによる症状なのか、秋花粉による症状なのかは、区別がつきません。
秋の花粉症とダニ、見分け方はありますか
症状そのものでは区別できません。手がかりになるのは、アレルゲンがどこにあって、いつ増えるかです。
| 秋の花粉(ブタクサ・ヨモギ・カナムグラ) | ダニ | |
|---|---|---|
| アレルゲンのある場所 | 屋外。河川敷、手入れのされていない広場や野原 | 家の中。布団・ベッド、じゅうたん、布製のソファ |
| 増える時期 | 夏の終わりから秋にかけて飛ぶ | 1年中いるが、夏に繁殖し、10月ごろに死骸やフンが増える |
| 吸い込みやすい場面 | 草の茂った場所に近づいたとき、風の強い日 | 就寝中や朝起きたとき、掃除や布団を動かしたとき |
秋の雑草の花粉は、スギ花粉のように広い範囲へ飛ぶわけではありません。スギは全国に450万haの人工林があり、樹高30〜40mの高さから花粉を飛ばしますが、秋の雑草は生えている場所の周りに花粉が濃く集まります。実際、市街地の観測ではブタクサの花粉はそれほど多くないのに、河川敷や手入れのされていない広場・野原ではかなり多く観測されます。散歩やジョギングのコースに草の茂った場所があるなら、そこが原因かもしれません。ただし風の強い日は、離れていても飛んできます。
ただし、症状の出方から原因を決めつけることはできません。外来でよく聞く思い込みが2つあります。
- 秋だけ症状が出ても、花粉とは限りません。 症状が出るかどうかは、吸い込んだアレルゲンの量が、その人の症状が出るラインを超えるかどうかで決まります。ダニは1年中いますが、ダニが増える秋にだけそのラインを越え、ほかの季節は症状が出ない、という方がいらっしゃいます。
- 外にいるときだけつらくても、花粉とは限りません。 アレルギーの反応は、吸い込んだ直後だけでなく、しばらく経ってから強く出ること(遅発型反応)があります。夜のあいだに寝具でダニを吸い込み、日中の外出中につらくなることも起こります。症状が出た場所が、アレルゲンを吸い込んだ場所とは限りません。
ダニと秋の花粉の両方に反応する方も珍しくありませんし、どちらでもなく風邪だった、ということもあります。はっきりさせるには検査が必要です。
ダニアレルギーの診断
診断のためには、詳細な問診を行った上で検査を行います。
血液検査でダニに対する特異的IgE抗体を測定することが一般的です。その時には「非」特異的IgE抗体も同時に測定して、それぞれの結果を合わせて、ダニアレルギーについて判断します。特異的IgE抗体はアレルギーのひとつの側面を見ているに過ぎないため、この検査の数字が低いからアレルギーが「ない」ということはできません。アレルギー検査の結果の読み方はやみくもなアレルギー検査はしないほうが良いにまとめています。
血液検査ではっきりとわからない場合には、皮膚テスト(プリックテスト)を行うこともあります。皮膚テストは血液検査よりも精度が高く診断に有用ですが、当院のようにクリニックで行っているところは多くはありません。
ハウスダストアレルギー?
過去にはよく「ハウスダスト」に対する特異的IgE抗体が測定されていましたが、現在はハウスダスト中のダニがアレルギーを起こすことがわかっています。
治療①「環境整備」
ダニアレルギーに対する治療の基本は「環境整備」です。
日本で暮らす限りは家の中のダニをゼロにすることは不可能ですが、ダニ対策は有用です。
出来るだけじゅうたんや布製のソファなどは使わないようにすること、フローリングであってもホコリの掃除や寝具の掃除をこまめにする、シーツの交換・洗濯も頻回に行うようにすること、でダニを少なくすることが可能です。
一方、空気清浄機の効果については医学的な明らかな効果は、まだはっきりしません。基本は「掃除」です。
治療②「薬物療法」
薬物療法は基本的に花粉症と大きな違いはありません。
抗アレルギー薬の内服、点眼薬、点鼻薬、を必要に応じて併用します。
重症のスギ花粉症のときに使用する注射薬のゾレアは、ダニアレルギーには保険適用がありません。
参考 花粉症の注射
治療③「舌下免疫療法」
ダニアレルギーによるアレルギー性鼻炎には、スギ花粉症と同じく舌下免疫療法による治療が可能です。
舌下免疫療法は、安全性も高くガイドラインでも推奨される治療法です。当院でも多くの方が治療を続けていらっしゃいます。
参考 舌下免疫療法
喘息の悪化とダニアレルギー
気管支喘息はダニアレルギーと非常に関係が深い病気です。
多くの気管支喘息の患者さんは、ダニアレルギーがあり、それが原因・悪化のきっかけとなっています。
喘息で通院中でダニアレルギーのある方は、9月中から調子が悪くなって咳が増えて受診され、治療を強化することも珍しくありません。
秋になると咳がでて長く続く、という場合は、実は診断されていないだけで気管支喘息の可能性があります。
ダニに対する舌下免疫療法は、ダニアレルギーによる喘息の悪化も減少させるという効果もあります。
まとめ
秋に現れる鼻炎や結膜炎の症状は、花粉症だけでなくダニアレルギーが原因であることが多いというお話でした。ダニアレルギーは適切な治療と生活環境の改善で、十分にコントロール可能です。
また、秋の咳はダニによって悪化した気管支喘息かもしれません。
舌下免疫療法は、長期的な効果が期待できる画期的な治療法です。「毎年秋になると症状に悩まされる」「薬を飲んでも十分な効果が感じられない」という方は、ぜひ当院にご相談ください。
参考文献
花粉症環境保健マニュアル2022(2022年3月改訂版) 環境省
王青躍ほか 携帯型エアサンプラーを用いた秋季における草本類花粉飛散量調査手法の検討 日本花粉学会会誌 61(2):49−55、2016
アレルギー専門医監修 花粉症の相談室(花粉症のFAQ) 「薬はいつから飲む?」「舌下免疫療法って?」——花粉症のギモンにお答えします。随時更新中。 FAQをチェックする → ← トピックス一覧へ戻る