風邪のあとに黄色い鼻水や鼻づまりが続き、頬や額が重く痛むと、「副鼻腔炎になったから抗生物質が必要では」と考える方は少なくありません。けれども、風邪では鼻だけでなく副鼻腔にも炎症が広がることがよくあり、その大部分はウイルスによるもので、抗生物質を使わなくても、1週間で約半数、2週間で約3分の2の方が治ります。抗生物質を使うかどうかは症状の強さと経過で判断し、症状が軽い場合は、まず使わずに様子を見ます。
このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(日本内科学会 総合内科専門医・日本呼吸器学会 呼吸器専門医)が、急性副鼻腔炎で抗生物質が要るとき・要らないときの目安、黄色い鼻水の考え方、抗生物質を使わない間の過ごし方、慢性副鼻腔炎との違い、すぐに受診してほしい症状をご説明します。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。
急性副鼻腔炎に抗生物質は必要ですか?
多くの場合、必要ありません。風邪などのウイルスによる上気道の感染症から、細菌による副鼻腔炎を合併するのは2%未満とされています。
急性副鼻腔炎の大人を対象にした研究をまとめると、抗生物質を使わなかった人でも、1週間後には46%、2週間後には64%の人が治っていました。抗生物質を飲んだ場合、早く治る人は100人のうち5〜11人多くなるだけで、その一方で、下痢や吐き気、腹痛などの副作用が出る人は13人多くなります。一般的な外来の大人を対象にしたこれらの研究では、重い合併症はきわめてまれで、3,000人あまりのうち1人でした。
こうした結果をふまえ、厚生労働省の手引きでは、大人の症状が軽い急性副鼻腔炎は、抗生物質を使わずに5日間様子を見ることを推奨しています。
急性副鼻腔炎とは、どんな病気ですか?
副鼻腔(ふくびくう)は、鼻のまわりの骨の中にある空洞で、頬の奥、目と目の間、額などにあり、細い通り道で鼻の中とつながっています。風邪で鼻の粘膜に炎症が起きると、その炎症が副鼻腔にも広がります。鼻の炎症とひと続きで起こるため、医学的には「急性鼻副鼻腔炎」とも呼ばれます。
主な症状は、鼻づまり、鼻水、鼻水がのどに流れ落ちる後鼻漏(こうびろう)、頬や額・上の歯のあたりの痛みや重さ、においが分かりにくくなることです。後鼻漏があると、のどがイガイガしたり、咳が出たりすることもあります。
黄色や緑色の鼻水が出たら、細菌の感染ですか?
鼻水の色だけでは、ウイルスと細菌のどちらによる感染かは区別できません。風邪の経過の中で、鼻水が透明から黄色や緑色に変わるのはよくあることで、それだけで抗生物質が必要になるわけではありません。
判断の手がかりになるのは、色よりも経過です。10日を超えてよくならない、いったん良くなりかけてから悪化した、高い熱と顔の強い痛みが続いている、といった経過があるかどうかを確かめます。
抗生物質を考えるのは、どんなときですか?
抗生物質が必要かどうかは、症状の強さとこれまでの経過を合わせて判断します。症状の強さは、鼻水の多さ、顔や額の痛み、鼻の中に膿のような鼻水がどのくらいあるかで判断し、大人の軽症では、まず抗生物質を使わずに様子を見ることが推奨されています。鼻水や顔の痛みが強い中等症・重症では、抗生物質を検討します。
また、次のような経過は、細菌による副鼻腔炎を疑う手がかりになります。
- 鼻水・鼻づまりなどの症状が、10日を超えてよくならない
- 39℃以上の熱があり、膿のような鼻水や顔の痛みが3日以上続いている
- 風邪の症状が5日ほど続いて良くなりかけたあとに、再び悪化した
ただし、これらのどれか一つに当てはまれば必ず抗生物質が必要、という意味ではありません。症状の程度や診察の所見を含めて判断します。
このほか、顔の片側だけが強く痛む、とくに上の歯やあごのあたりが痛む場合も、細菌による副鼻腔炎を疑う手がかりになります。ただし、歯の病気が原因で同じような痛みが出ることもあり、その場合は歯科での治療が必要です。
抗生物質を使う場合は、ペニシリン系のアモキシシリンが第一選択です。セフェム系やマクロライド系の抗生物質が、アモキシシリンより効くことを示した研究はありません。飲む期間は5〜7日が基本で、5日間と10日間を比べた研究では、効果は同じで、副作用は5日間のほうが少なくなっていました。
なお、2012年から2015年の全国の診療データを調べた研究では、副鼻腔炎で受診した方の約半数に抗生物質が出されていましたが、第一選択とされる薬が使われたのは、そのうち約1割でした。日本の処方の実情は風邪に抗生物質は効きませんでもご説明しています。
抗生物質を使わない間は、どう過ごせばよいですか?
痛みや熱は、解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンやイブプロフェン)でやわらげられます。持病のある方や、ほかにお薬を飲んでいる方は、市販薬を使う前に医師か薬剤師にご相談ください。
生理食塩水での鼻洗浄や、鼻づまりをとる点鼻薬を試す方もいますが、鼻づまりをやわらげる効果を示す根拠は十分ではありません。鼻づまりをとる点鼻薬(血管収縮薬)は、長く使うとかえって鼻づまりがひどくなることがあるため、使うのは数日にとどめてください。急性副鼻腔炎そのものを早く治す目的では、飲み薬の鼻づまりの薬、抗ヒスタミン薬、痰や鼻水を出しやすくする薬、蒸気の吸入、顔を温めることについて、効果を示す根拠は見つかっていません。
10日ほどたってもよくならない場合は、ステロイドの点鼻薬を使うことがあります。症状をやわらげる効果は期待できますが、治るまでの期間は短くならないとされています。
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)とは、どう違いますか?
症状が12週間以上続く場合は、慢性副鼻腔炎といいます。「蓄膿症(ちくのうしょう)」は、副鼻腔に膿がたまる状態を指す昔からの呼び名で、主に慢性副鼻腔炎のことを言います。急性副鼻腔炎とは原因も治療の考え方も異なり、鼻の中にポリープ(鼻茸〈はなたけ〉)ができるタイプや、喘息と関係の深いタイプ(好酸球性副鼻腔炎)もあります。
慢性副鼻腔炎では、少量のマクロライド系の抗生物質を長い期間使う治療が行われることがあります。これは菌に働く作用に加えて、マクロライド系の薬が持つ炎症を抑える働きを期待した治療で、急性副鼻腔炎に抗生物質を使うのとは別の考え方です。
慢性副鼻腔炎が疑われる場合は、鼻の内視鏡やCTなどによる詳しい評価が必要になることがあるため、耳鼻咽喉科など専門の医療機関へご紹介します。喘息のある方は、鼻と気管支の炎症が関係し合うことがあるため、喘息の治療とあわせてご相談ください。
すぐに受診したほうがよいのは、どんなときですか?
まれに、副鼻腔の炎症が目のまわりや頭の中に広がることがあります。次のような症状があるときは、通常の外来を待たず、すぐに救急医療機関を受診してください。とくに、意識がもうろうとしている、けいれんがある、手足が動かしにくい、見え方が急に悪くなったといったときは、119番へ連絡してください。判断に迷う場合は、救急相談センター(東京都は#7119)にご相談いただけます。
- まぶたや目のまわりが腫れる、赤くなる
- ものが二重に見える、目が動かしにくい、見え方が急に悪くなった
- 目が前に押し出されたように見える
- 額が腫れる、これまでにない激しい頭痛がある
- 首の後ろが硬くて前に曲げにくい、意識がもうろうとしている、手足が動かしにくい
救急ではない場合も、次のようなときは受診してください。
- 鼻水・鼻づまりなどが10日を超えてよくならない
- 39℃以上の熱があり、膿のような鼻水や顔の痛みが続いている
- いったん良くなりかけてから、再び悪化した
- 顔の片側や上の歯のあたりが強く痛む
鼻の症状で受診したとき、当院ではどのように診察しますか?
発熱や鼻・のどの症状がある方は、通常の外来とは入口が異なる専用エリアの感染対策外来で診療しています。迷ったときは感染対策外来でご予約ください。問診のうえ、通常の外来へご案内することもあります。対象は基本的に小学生以上の方ですが、小児科を受診できないなど、お困りのときはご相談ください。
診察では、症状がいつから、どのように変わってきたかを詳しく伺い、鼻やのど、顔の押して痛む場所などを診察して、症状の強さと経過から、抗生物質が必要かどうかを判断します。急性副鼻腔炎の多くは、問診と診察で判断できます。
抗生物質が要らないと判断した場合は、症状をやわらげる方法をご相談し、どうなったら再受診してほしいかをお伝えします。抗生物質が必要と判断した場合は、原則としてアモキシシリンを第一選択とし、通常5〜7日間使います。症状が長引く・くり返す場合や、合併症が疑われる場合は、耳鼻咽喉科など専門の医療機関へご紹介します。
よくあるご質問
Q1. 以前「蓄膿症」と言われたことがあります。今回も抗生物質が必要ですか? 今回の症状が風邪に続いて出てきたものであれば、急性副鼻腔炎として考えます。以前に蓄膿症と言われたことがあっても、抗生物質が必要かどうかは、今回の症状の経過(10日を超えて続いているか、良くなりかけてから悪化していないかなど)で判断します。症状が12週間以上続いている場合は、慢性副鼻腔炎として、耳鼻咽喉科での検査をおすすめします。
Q2. 鼻水がのどに流れて、咳が続いています。 鼻水がのどに流れ落ちる後鼻漏で、咳が出ることがあります。風邪に続くものであれば、鼻の症状が落ち着くにつれて咳も軽くなっていくことが多いものの、咳が3週間を超えて続く場合は、喘息などほかの原因も考えます。長引く咳の考え方は咳の原因で一番多いのは?自然経過と受診の目安をご覧ください。
Q3. 頬や歯が痛みます。歯科と内科のどちらに行けばよいですか? 上の奥歯のあたりの痛みは、副鼻腔炎でも歯の病気でも起こります。鼻づまりや鼻水があり、風邪に続いて痛みが出てきた場合は、内科か耳鼻咽喉科でご相談ください。当院でも、初めの診察と判断を行います。鼻の症状がなく、特定の歯だけが痛む場合は、歯科の受診をおすすめします。
Q4. 鼻うがい(鼻洗浄)はしたほうがよいですか? 試していただいてかまいませんが、鼻づまりをやわらげる効果を示す根拠は十分ではありません。行う場合は、市販の鼻洗浄用の製品の説明に従ってください。
参考文献
- 厚生労働省 健康・生活衛生局 感染症対策部 感染症対策課. 抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 医科・外来編. 2026年1月16日
- Lemiengre MB, van Driel ML, Merenstein D, Liira H, Mäkelä M, De Sutter AI. Antibiotics for acute rhinosinusitis in adults. Cochrane Database Syst Rev 2018;9:CD006089
- Harris AM, et al. Appropriate Antibiotic Use for Acute Respiratory Tract Infection in Adults: Advice for High-Value Care From the American College of Physicians and the Centers for Disease Control and Prevention. Ann Intern Med 2016;164:425-434
- National Institute for Health and Care Excellence. Sinusitis (acute): antimicrobial prescribing (NG79). 2017
- 日本鼻科学会. 急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン 2010年版(追補版). 日本鼻科学会会誌 2014;53:27-84
- Hashimoto H, Saito M, Sato J, et al. Indications and classes of outpatient antibiotic prescriptions in Japan: A descriptive study using the national database of electronic health insurance claims, 2012-2015. Int J Infect Dis 2020;91:1-8
