のどが痛くて扁桃が腫れていると、「抗生物質を飲まないと治らないのでは」と心配になる方は少なくありません。けれども、のどの痛みや扁桃炎の多くはウイルスによるもので、抗生物質は必要ありません。抗生物質が必要になる代表的な病気が、溶連菌(ようれんきん)という細菌による咽頭炎・扁桃炎で、検査で確かめてから使います。のどの痛みに咳や鼻水などの風邪の症状もある場合は、ウイルスによる可能性が高くなります。
このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(日本内科学会 総合内科専門医・日本呼吸器学会 呼吸器専門医)が、のどの痛みで抗生物質が要るとき・要らないときの見分け方、溶連菌の特徴と検査、溶連菌と分かったときの治療、すぐに受診してほしいのどの痛みをご説明します。のどの痛みや発熱は、専用エリアの感染対策外来で診療しています。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。
のどの痛み・扁桃炎に抗生物質は必要ですか?
多くの場合、必要ありません。のどの痛みを中心とする急な感染症(急性咽頭炎〈いんとうえん〉)の大部分はウイルスが原因です。扁桃(へんとう:のどの奥の左右にあるリンパの組織)が赤く腫れる急性扁桃炎も、これに含まれます。抗生物質が効く細菌のなかで、のどの炎症の原因として代表的なのが溶連菌(A群β溶血性レンサ球菌)です。
大人ののどの痛みのうち、溶連菌によるものは1割程度です。扁桃炎で受診した20〜59歳の方を調べた日本の研究でも、溶連菌が見つかったのは約3割で、7割ほどは溶連菌以外が原因でした。厚生労働省は、検査で溶連菌が見つかっていないのどの炎症には、抗生物質を使わないことを推奨しています。
抗生物質を使わなくても、のどの痛みは多くの場合、自然に治まります。のどの痛みの方を対象にした研究をまとめると、抗生物質を飲まなかった人でも、1週間後には82%の人で症状が消えていました。
のどの痛みに、鼻水や咳もあるときはどう考えますか?
のどの痛みに加えて、咳や鼻水・鼻づまりなどの風邪の症状が目立つ場合は、ウイルスによる風邪(感冒)の可能性が高くなります。風邪には抗生物質は効かず、使っても早く治ることはありません。詳しくは風邪に抗生物質は効きませんでご説明しています。
反対に、溶連菌によるのどの炎症では、咳や鼻水はあまり出ません。溶連菌を疑う目安の一つに「咳がないこと」が入っているのはこのためです。のどの痛みと一緒に咳や鼻水が出ていれば、それだけで溶連菌の見込みは下がります。
ただし、いったん良くなりかけたあとに熱やのどの痛みが再び強くなった場合や、のどの痛みだけが飛び抜けて強く、唾を飲み込むのもつらい場合は、別に考える必要があります。このようなときは受診してください。
溶連菌によるのどの炎症には、どんな特徴がありますか?
溶連菌によるのどの炎症を疑う目安として、次の4つがよく使われます。当てはまる数が多いほど、溶連菌の見込みが高くなります。
- 38℃以上の熱がある
- 咳がない
- 首の前側のリンパ節が腫れていて、押すと痛む
- 扁桃が腫れて、白いもの(白苔〈はくたい〉)がついている
このほか、学校に通う年代の子どもに多いことや、身近に溶連菌と診断された人がいることも手がかりになります。当てはまる数が2つ以下の場合は溶連菌の見込みが低いため、検査をしなくてよいとする指針もあります。
一方で、扁桃に白いものがついているからといって、溶連菌とは限りません。EBウイルスなどによる伝染性単核球症(でんせんせいたんかくきゅうしょう)は、高い熱と扁桃の白いもの、首のリンパ節の腫れが出て、溶連菌の目安にも多く当てはまりますが、ウイルスによる病気なので抗生物質は効きません。首の後ろ側のリンパ節も腫れやすく、強いだるさを伴うことがあり、血液検査が診断の手がかりになります。
溶連菌かどうかは、どうやって調べますか?
のどの奥を綿棒でこすって調べる迅速抗原検査で、溶連菌がいるかどうかを確かめます。この検査は、溶連菌がいないのに陽性と出ることが少なく(特異度〈とくいど〉95%)、症状や診察の所見が合っていて陽性であれば、溶連菌によるのどの炎症として治療します。一方で、溶連菌がいても陰性と出ることがあり、溶連菌がいる人を正しく陽性と判定できる割合(感度)は70〜90%です。陰性のときに同じ迅速検査をすぐにもう一度行っても、診断の確かさはほとんど上がりません。迅速検査が陰性でも、症状や診察から溶連菌の可能性が高い場合、とくに子どもでは、培養検査を追加して確かめることがあります。
ただ、のどが痛い方の全員に検査をするわけではありません。溶連菌は、流行している時期には症状のない子どもの2割ほどがのどに持っていることがあり、のどの痛みの原因がウイルスでも、たまたま検査で見つかることがあるためです。検査は、溶連菌の特徴がそろっていて、結果によって抗生物質を使うかどうかが変わる方に行います。
溶連菌と分かったら、どんな治療をしますか?
ペニシリン系の抗生物質(アモキシシリンなど)を10日間飲むのが基本です。ペニシリン系は溶連菌によく効き、効く細菌の範囲が狭い抗生物質で、国内外の指針で第一選択とされています。症状は数日で軽くなることが多いものの、治療期間を短くしてよいとする根拠は乏しく、10日間飲むことが勧められています。ペニシリンでアレルギーが出たことがある方には、別の種類の抗生物質を使いますので、診察のときにお知らせください。
溶連菌によるのどの炎症に抗生物質を使うと、のどの痛みが早く軽くなるうえ、中耳炎や、扁桃のまわりに膿がたまる扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)といった合併症が減ります。溶連菌のあとに心臓や関節に炎症が起きるリウマチ熱も減らしますが、この病気はいまではまれになっています。
なお、2012年から2015年の全国の診療データを調べた研究では、のどの炎症(咽頭炎)で受診した方の約6割に抗生物質が出されていましたが、第一選択とされる薬が使われたのは、そのうち1割未満でした。日本で抗生物質がどのように出されてきたかは、風邪に抗生物質は効きませんでもご説明しています。
抗生物質の要らないのどの痛みは、どう過ごせばよいですか?
ウイルスによるのどの痛みは、時間がたてば治まります。治るまでのつらさは、解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)でやわらげられます。飲み込むのがつらいときも水分はこまめにとり、休養をとってください。持病のある方や、ほかにお薬を飲んでいる方は、市販薬を使う前に医師か薬剤師にご相談ください。
のどの痛みが1週間たってもよくならないときや、いったん良くなってから再び悪化したときは、受診してください。
すぐに受診したほうがよいのどの痛みはありますか?
次のような場合は、のどの奥の空気の通り道がふさがりかけていることがあります。すぐに119番へ連絡してください。
- 息が苦しい
- 前かがみの姿勢でないと息がしにくい
- 息を吸うときに、のどから高い音がする
- 唾が飲み込めず、よだれが出てしまう
- 症状や全身の具合が急に悪くなっている
次のような場合は、のどの奥や首の深いところに膿がたまっていることがあります。様子を見ずに、その日のうちに受診してください。判断に迷う場合は、救急相談センター(東京都は#7119)にご相談いただけます。
- これまでに経験したことがないほど強いのどの痛み
- 口が開けにくい
- のどの痛みが片側だけ強い
- 声がこもる
- 首が大きく腫れている
また、飲み込むときの痛みがなく、のどの赤みや腫れもないのに「のどが痛い」と感じる場合は、心臓や首・頭の血管など、のど以外の病気の痛みが響いていることがあります。胸の痛みや圧迫感、冷や汗、突然の激しい頭痛を伴うときは、すぐに119番へ連絡してください。
救急ではない場合も、次のようなときは受診してください。
- 38℃以上の熱があり、咳や鼻水がなく、のどの痛みが強い
- 身近に溶連菌と診断された人がいて、のどの痛みや熱が出た
- 水分がとれない
- のどの痛みが1週間たってもよくならない、いったん良くなってから再び悪化した
のどの痛みで受診したとき、当院ではどのように診察しますか?
発熱やのどの痛みのある方は、通常の外来とは入口が異なる専用エリアの感染対策外来で診療しています。対象は基本的に小学生以上の方ですが、小児科を受診できないなど、お困りのときはご相談ください。
診察では、熱の経過や咳・鼻水の有無を伺い、のどと扁桃、首の前と後ろのリンパ節を診察して、溶連菌の特徴がどのくらいそろっているかを確かめます。溶連菌が疑われる場合は、院内で迅速抗原検査を行います。インフルエンザや新型コロナの検査とまとめて行っても、結果は15分程度で出ます。伝染性単核球症などが疑われるときは、血液検査も行います。症状がある場合の検査は保険診療です。
溶連菌が見つかった場合は、原則としてペニシリン系の抗生物質を10日分処方します。溶連菌が見つからず、ウイルスによるのどの炎症と考えられる場合は、抗生物質は処方せず、痛みや熱をやわらげる薬をご相談します。あわせて、この先の経過の見通しと、どうなったら再受診してほしいかをお伝えします。
よくあるご質問
Q1. 扁桃に白いものがついています。細菌の感染ですか? 白いもの(白苔)は、溶連菌でもウイルスでも出るため、それだけでは細菌かウイルスかは決められません。熱や咳の有無、首のリンパ節の腫れと合わせて考え、溶連菌が疑われる場合は検査で確かめます。
Q2. 溶連菌の薬は、良くなったら途中でやめてもよいですか? 自己判断でやめずに、処方された日数を飲んでください。症状は数日で軽くなることが多いものの、治療期間を短くしてよいとする根拠は乏しく、国内外の指針は10日間を勧めています。副作用が出たときは、我慢して飲み続けずに、処方した医師か薬剤師にご相談ください。
Q3. 家族が溶連菌と診断されました。症状がなくても検査を受けたほうがよいですか? 症状がなければ、検査は必要ありません。溶連菌は症状のない人ののどにいることもあり、検査で見つかっても、それが病気の原因とは限らないためです。のどの痛みや熱が出たら、溶連菌と診断された家族がいることをお伝えのうえ、ご相談ください。
Q4. のどの痛みが強いので、抗生物質を飲めば早く楽になりませんか? 溶連菌が確かめられた場合は、抗生物質でのどの痛みが早く軽くなります。ウイルスによるのどの痛みでは、抗生物質は効かず、下痢や発疹などの副作用の心配が増えるだけです。痛みそのものは解熱鎮痛薬でやわらげられますので、ご相談ください。
参考文献
- 厚生労働省 健康・生活衛生局 感染症対策部 感染症対策課. 抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 医科・外来編. 2026年1月16日
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