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CPAP治療はいつまで続ける?やめられる条件はある?

執筆:斎藤史武 公開日:2026-09-09

「CPAPを始めてから朝の目覚めが変わった。それでも、この装置を一生使い続けるのだろうか」──睡眠時無呼吸症候群の治療を続けている方から、よくいただくご質問です。毎晩マスクを着ける負担や、旅行・出張のたびに機械を持ち運ぶ手間を思えば、「いつまで」という疑問が浮かぶのは自然なことです。一方で、調子が良くなったからと自己判断で中断してしまい、しばらくして眠気が戻って再受診される方もいらっしゃいます。

このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(総合内科専門医・呼吸器専門医・アレルギー専門医)が、CPAP(シーパップ:鼻に当てたマスクから空気を送り込み、狭くなった空気の通り道を広げ続ける治療)を続ける必要がある理由、中止や別の治療への切り替えを考えられる場面、続けている間の通院と検査の流れ、そして無理なく続けるための工夫をご説明します。この記事では主に閉塞性睡眠時無呼吸(気道が物理的に塞がるタイプ)を扱います。治療中の方にも、これから始める方にも、判断の材料になれば幸いです。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。

CPAP治療はいつまで続けるのですか?

結論から申し上げると、眠っている間に気道(きどう:空気の通り道)が塞がる体の状態が残っている限り、CPAPは続ける治療です。期間を区切って終わる治療ではありません。

理由は、CPAPが原因そのものを取り除く治療ではないからです。CPAPは送り込む空気の圧力で気道を内側から支える装置で、働くのは装置を使っている夜だけです。血圧の薬が飲んでいる間だけ血圧を下げるのと同じ関係と考えると分かりやすいでしょう。装置を外せば、気道は元どおり塞がりやすい状態に戻ります。

成人の閉塞性睡眠時無呼吸では、1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数(AHI:無呼吸低呼吸指数)が5回以上15回未満の場合は、日中の眠気やいびき、睡眠中の無呼吸、高血圧などの症状・関連所見とあわせて診断します。15回以上の場合は、症状が明確でなくても診断されます。重症度は5回以上15回未満が軽症、15回以上30回未満が中等症、30回以上が重症です。CPAPを勧めるかどうかは、AHIだけでなく、日中の眠気、生活への支障、高血圧などの合併症を含めて判断し、一般に中等症以上ではCPAPが主要な治療になります。日本で保険診療としてCPAPを導入する際の主な数値の要件は、2026年6月の改定後、精密検査で1時間あたり15回以上、簡易検査で30回以上と、受けた検査の種類によって異なりますが、症状などほかの条件も含めて判断します。病気そのものの成り立ちは睡眠時無呼吸症候群のページにまとめています。

CPAPをやめると、体はどうなりますか?

無呼吸は、中止したその晩から戻り始めます。CPAPを使っている方を2週間だけ中止した群と継続した群に分けて比べた研究では、中止した群で日中の眠気が再び強まり、朝の血圧も上がっています(収縮期で約8.5 mmHg、拡張期で約6.9 mmHg)。同様の無作為化試験3件をまとめた解析では、治療中は1時間あたり平均2.8回に抑えられていた無呼吸・低呼吸が、中止後には33.2回まで戻りました。

ここから分かるのは、いびきが消えた、眠気がなくなったという変化は、病気が治ったしるしではなく、CPAPが効いているしるしだということです。効いているからこそ症状が消えているので、症状の軽さを中止の根拠にはできません。血圧の薬を飲んでいる方が、数値が下がったからと薬をやめれば血圧が戻るのと同じ構図です。

とくに高血圧で通院中の方は、CPAPの中断が血圧の管理そのものに影響します。この関係は睡眠時無呼吸と高血圧の関係で詳しくご説明します。

CPAPをやめる、または別の治療に切り替えられるのはどんなときですか?

「一度始めたら一生変えられない」わけではありません。次の4つの場面では、治療内容の見直しを検討します。ただし、いずれも自己判断で中止するのではなく、現在の無呼吸の程度を検査で確かめてから判断します。

① 十分な減量ができたとき 体重は無呼吸の程度に直接影響します。体重が10%減ると無呼吸・低呼吸の回数はおよそ26%減り、逆に10%増えるとおよそ32%増えると報告されています。肥満が主な原因だった方が減量に成功すると、重症度が下がり、CPAPを終了できる場合があります。ただし、2型糖尿病を伴う肥満の方を4年間追跡した研究では、生活習慣への強化的な介入を受けた群でも無呼吸が消失した方は20.7%(比較群は3.6%)でした。減量は取り組む価値のある治療ですが、卒業できる方は一部にとどまり、効果には個人差があります。

② 主に軽症〜中等症の場合や、CPAPを続けられないとき 口腔内装置(こうくうないそうち:下あごを前に出した位置で保つマウスピース型の装置)は主に軽症〜中等症で検討されますが、CPAPを十分に調整しても続けられない方や、別の治療を希望する方では、重症度を含めて適応を個別に判断します。中等症・重症では、一般にCPAPのほうが無呼吸を抑える効果は高いため、切り替えた後には検査で効果を確認します。当院では口腔内装置の作製は行っていないため、診断した医師から診療情報提供を行い、歯科で作製していただく形になります。

③ のどや鼻の形に、はっきりした原因があるとき 扁桃(へんとう:のどの奥にあるリンパ組織)の肥大や鼻づまりなど、空気の通り道が狭くなる原因がはっきりしている場合には、耳鼻咽喉科で閉塞している部位を評価してもらう選択肢があります。ただし、そうした所見がある場合でも、まずCPAPを試すことが国際的な診療指針では勧められています。また手術を受けた後も、無呼吸が残っていないかを検査で確認することが大切です。いびきの音だけが小さくなり、無呼吸が隠れてしまう場合があるためです。

④ 診断時にあった悪化要因が変わったとき 毎晩の飲酒、鎮静作用のある薬の使用、慢性的な鼻づまり、仰向けでしか眠れない寝具など、診断時にあった要因が改善すると、無呼吸の程度が変わることがあります。これだけで終了に至ることは多くありませんが、見直しを考えるきっかけにはなります。

再検査の方法は、見直す理由によって異なります。減量後にCPAPを終了できるか確かめる場合は、医師が安全性を確認したうえでCPAPを一時的に休止して検査し、無呼吸がどこまで戻るかを確かめてから方針を決めます。口腔内装置や手術の効果を調べる場合は、その治療を行った状態で検査します。CPAPを休む期間は自己判断で決めず、医師の指示に従ってください。検査そのものの流れは睡眠時無呼吸の自宅検査をご覧ください。

治療を続けている間、通院や検査はどうなりますか?

CPAPは保険診療の枠組みの中で、定期的に受診しながら続ける治療です。装置には毎晩の使用状況が記録されているため、受診のたびに次の点を確認します。

使用時間が短い、空気もれが多い、無呼吸が残っている、といったデータが出たときは、マスクの種類やサイズ、送り込む圧の設定を見直します。「合わないからやめる」と決める前に、調整で解決する場面は少なくありません。

中止や切り替えを検討する段階になったら、あらためて検査を行います。当院では簡易検査も精密検査(PSG:終夜睡眠ポリグラフ検査)も、入院せずご自宅で受けていただけます。入院での検査が必要と判断した場合には、対応している医療機関へご紹介します。

CPAPを無理なく続けるにはどうすればよいですか?

続けられるかどうかは、我慢の量ではなく、装置と体の相性をどこまで合わせられるかで決まる部分が大きいです。よくある困りごとと、診察でご提案している対処は次のとおりです。

生活面では、就寝前の飲酒を控えることをお勧めします。アルコールは気道を支える筋肉をゆるめ、無呼吸を悪化させるためです。また、睡眠時間そのものが足りていない場合は、CPAPを使っていても眠気は残ります。眠気が改善しないときは、装置の問題なのか、睡眠時間や別の原因なのかを診察で切り分けます。

CPAP治療はどこで続けられますか?

なみきばしクリニックでは、いびきや日中の眠気のご相談から、ご自宅での簡易検査・精密検査、診断、CPAPの導入と継続まで、一貫して対応しています。日本呼吸器学会 呼吸器専門医が担当し、高血圧などの生活習慣病、鼻づまりや喘息といった気道の状態も含めて一緒に診ていきます。呼吸器内科で行っている診療の範囲は呼吸器内科のご案内にまとめています。

当院は並木橋交差点からすぐの場所にあり、渋谷駅・恵比寿駅・代官山駅からも通える立地です。CPAPを続けることに迷いが出てきたとき、やめたいと感じたときは、中断してしまう前にご相談ください。

診察室でよくあるご相談

複数の診療経験をもとに再構成した典型的な例です。CPAPを3年ほど使っている40代の方が、「体重を1割ほど減らせたので、そろそろやめたい」とご相談にみえました。装置の記録では使用時間は十分で、残っている無呼吸も少なく、日中の眠気も改善していました。体重の変化は無呼吸の程度に影響するため、自己判断で中止せず、医師の指示のもとでCPAPを一時的に休止してご自宅での検査を行う方針をご提案しました。結果として無呼吸の回数は減っていたものの中等症の範囲に残っており、ご本人と相談してCPAPの継続を選ばれました。同じように減量された方でも軽症まで下がる方はいらっしゃいますが、分かれ目には体重の減り方に加えて、のどや鼻の形、年齢、飲酒習慣なども関わります。数字を見てから決める、という順番を大切にしています。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 眠気がなくなったので、CPAPをやめてもよいですか? 症状の改善は治療が効いているしるしで、無呼吸そのものが治ったことを意味しません。中止すると数日から2週間で元の状態に戻ることが分かっています。やめたいとお考えのときは、自己判断で中断せず、まず診察でご相談ください。

Q. 減量すればCPAPを卒業できますか? 体重が10%減ると無呼吸・低呼吸の回数はおよそ26%減ります。ただし無呼吸が消失するところまで到達する方は一部で、4年間の強化的な生活習慣改善に取り組んだ研究でも、消失していたのは20.7%でした。減量は無呼吸を軽くする確かな手段ですが、それだけでCPAPを終えられると決まるわけではありません。結果には個人差があります。

Q. 旅行や出張のときは休んでもかまいませんか? 1晩使えなかったからといって、それまでの治療が無駄になるわけではありません。ただし無呼吸はその晩から戻るため、眠気が強い方や長距離を運転される方はとくに、持参して使う方法をご検討ください。使えなかった翌日に眠気が戻った場合は、運転を避けてください。電源や持ち運びについて分からない点は、受診時にご相談ください。

Q. マウスピースに切り替えられますか? 主に軽症〜中等症の方や、調整してもCPAPを続けられない方の選択肢になります。重症度を含めて適応は個別に判断します。当院では口腔内装置の作製を行っていないため、診断した医師から診療情報提供を行い、歯科で作製していただきます。切り替えた後も、無呼吸が抑えられているかを確認する検査が必要です。

Q. CPAPが合わないと感じたとき、どうすればよいですか? 使うのをやめる前に受診してご相談ください。マスクの種類、圧の設定、鼻づまりの治療など、調整できる要素がいくつもあります。それでも続けられない場合には、口腔内装置や耳鼻咽喉科での評価も含めて、別の方針を一緒に考えます。

参考文献

※本ページは一般的な情報提供を目的としています。診断・治療方針は個々の状態により異なります。最終的な判断は診察のうえで行いますので、気になる症状のある方は医療機関にご相談ください。

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