「健診で血糖値や HbA1c(ヘモグロビン エーワンシー:過去1〜2か月の血糖の平均を反映する検査値)が高いと言われた」「家族に糖尿病の人がいて自分も心配」──そう感じて受診をためらっている方は少なくありません。糖尿病は気づかないうちに進み、神経・目・腎臓や血管にじわじわと負担をかけていく病気です。だからこそ、早めに正しい数値を知り、できる範囲の対策を始めていくことが大切です。
このページでは、なみきばしクリニックの内科外来担当医・斎藤史武医師(総合内科専門医・呼吸器専門医・アレルギー専門医)が、日本糖尿病学会のガイドラインを踏まえ、糖尿病の診断基準・原因・合併症・治療の進め方・HbA1c の目標値・よくあるご質問までを、できるだけかみ砕いてご説明します。健診で「要観察」「要医療」と言われた方、ご家族の血糖が気になる方の判断材料になれば幸いです。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。
糖尿病とはどんな病気ですか?
糖尿病とは、血液中のブドウ糖(血糖)が慢性的に高い状態が続く病気です。インスリン(膵臓から分泌される、血糖を下げるホルモン)の働きが弱まる、もしくは分泌量が減ることで起こります。次のいずれかに当てはまると「糖尿病型」と判定され、これらを組み合わせて診断します(診断の流れは後述します)。
- 空腹時血糖 126 mg/dL 以上
- 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT:糖の溶けた飲み物を飲んで血糖の上がり方を調べる検査)の2時間値 200 mg/dL 以上
- 随時血糖 200 mg/dL 以上
- HbA1c 6.5% 以上
糖尿病には大きく 1型 と 2型 があります。1型は自己免疫などによりインスリンを作る細胞が壊れる病気で、小児・若年での発症が多い一方、成人になってから発症する方もいます。原則としてインスリン療法が必要です。一方、日本人の糖尿病の約9割を占める 2型 は、遺伝的体質に生活習慣(過食・運動不足・肥満・ストレスなど)が重なって発症するタイプで、健診で見つかる多くがこちらです。生活習慣だけで決まる病気ではなく体質の影響も大きいため、「自分の努力が足りなかった」と考えすぎる必要はありません。
もうひとつ重要なのが 「境界型」(耐糖能異常:糖を処理する力が低下している段階)です。血糖値が正常型にも糖尿病型にも当てはまらない中間の段階で、空腹時 110-125 mg/dL や OGTT 2時間値 140-199 mg/dL がこれにあたります。まだ糖尿病ではありませんが、放置すると将来的に糖尿病へ進行しやすい段階です。なお、境界型かどうかは血糖値(空腹時血糖・OGTT)で判定します。HbA1c 5.6% 以上は将来の糖尿病リスクを考えるうえで注意したい値ですが、HbA1c だけで「境界型」と診断することはできず、必要に応じて OGTT などで詳しく評価します。複数項目を指摘された方は、生活習慣病全体の見取り図として生活習慣病のよくあるご質問もあわせてご覧ください。
糖尿病の原因は何ですか?
日本人で多い 2型糖尿病は、ひとつの原因ではなく、遺伝的体質と生活習慣がいくつも重なって発症します。具体的には次のような要素が関係します。
- 過食・偏った食事(清涼飲料水・菓子類・脂質の摂りすぎ)
- 運動不足・座位時間の長さ
- 肥満、特に内臓脂肪の蓄積
- 加齢
- 睡眠不足、強いストレス
- 妊娠歴(妊娠糖尿病の既往)
- 家族歴
とくに肥満は インスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなる状態)を引き起こす中心的な要素で、減量による改善効果が期待できます。あわせて肥満症のページもご参照ください。
1型糖尿病は、自己免疫的な機序によってインスリンを作る β細胞(ベータさいぼう:膵臓のなかでインスリンを分泌する細胞)が壊れて発症します。生活習慣とは関係なく、小児・若年に多いものの成人でも起こります。原則としてインスリン療法が必要です(ゆっくり進行するタイプでは、診断直後には必要としない場合もあります)。
また、特定の薬剤(ステロイドなど)、膵疾患、内分泌疾患(クッシング症候群など)、遺伝子異常などが背景にある 二次性糖尿病 もあります。急に血糖が悪化した、極端なやせを伴う、といった場合には背景の精査をお勧めします。
なぜ糖尿病を治療する必要があるのですか?
糖尿病そのものは、初期にはほとんど症状がありません。しかし高血糖の状態が長く続くと、全身の血管が少しずつ傷み、次のような合併症の土台になります。
細小血管合併症(三大合併症)
- 神経障害(しびれ・痛み・立ちくらみや便通異常などの自律神経症状。最も頻度の高い合併症のひとつで、比較的早期からみられることがあります)
- 網膜症(無症状から進行すれば視力低下、年1回の眼科受診が必要)
- 腎症(蛋白尿:尿にタンパクが漏れ出る状態 → 腎機能低下、日本の透析導入の最多原因)
大血管合併症
- 心筋梗塞・狭心症(発症リスクが高くなります)
- 脳梗塞
- 末梢動脈疾患(PAD:足の動脈が狭くなる病気、進行で足壊疽のリスク)
その他
- 認知症(血管性・アルツハイマー型の双方)
- 感染症(肺炎・尿路感染・歯周病)
- 足病変(潰瘍・壊疽 → 切断リスク)
高血圧や脂質異常症が併存すると合併症リスクはさらに高まります。あわせて高血圧のページ、脂質異常症のページ もご確認いただくと、ご自身の状態を立体的に理解しやすくなります。診察のご予約はWeb予約からどうぞ。
どのように診断するのですか?
診断の流れは大きく次のステップです。
- 血液検査で空腹時血糖・HbA1c などを測定
- 必要に応じて 75g OGTT(経口ブドウ糖負荷試験)で食後高血糖を確認
- 血糖値と HbA1c が同じ検査でともに「糖尿病型」であれば、その時点で糖尿病と診断できます。どちらか一方だけが糖尿病型の場合は、原則として別の日に再検査を行います。また、血糖値が糖尿病型で、口渇・多飲・多尿・体重減少などの典型症状、または確実な糖尿病網膜症がある場合も、1回の検査で診断できます
- 合併症評価のための尿検査・心電図・必要に応じて眼科紹介
健診で「血糖値が高い」「HbA1c が境界型〜糖尿病型」と指摘された方は、結果用紙を持参して受診いただくと、その日のうちに必要な追加検査の方針が立てやすくなります。健診の動線については個人健診のご案内、渋谷区健診のご案内もご参照ください。
HbA1c の目標はどのくらいですか?
HbA1c の目標値は、お一人おひとりの年齢・併存疾患・低血糖リスクに応じて層別化されます。日本糖尿病学会のガイドラインでは、目安として次の3段階が示されています。
| 目標カテゴリ | HbA1c | 主な対象 |
|---|---|---|
| 血糖正常化を目指す | <6.0% | 食事・運動のみで達成可、もしくは薬物治療中も低血糖の心配が少ない方 |
| 合併症予防(標準目標) | <7.0% | 多くの2型糖尿病の方の標準的な目標 |
| 治療強化が困難 | <8.0% | 副作用や併存疾患などで強化が難しい場合 |
目標値は、年齢・罹病期間(糖尿病になってからの長さ)・低血糖リスク・合併症・併存疾患・サポート体制などを考慮してお一人おひとりに合わせて設定します。とくに高齢の方では、認知機能・日常生活動作(ADL:日常の身の回り動作)・予後・重症低血糖の既往を踏まえます。インスリンや SU薬など重症低血糖を起こしうる薬を使っている場合は、目標値に下限も設定して、血糖を下げすぎない配慮が大切です(下限の値は年齢や心身の状態によって異なります)。
数字だけを追うのではなく、「低血糖を起こさず、合併症の進行を抑える」ことが治療の本質的なねらいです。具体的な目標値はご相談のうえで設定します。診察のご予約はWeb予約からお取りください。
どのように治療するのですか?
治療の柱は 食事療法・運動療法・薬物療法 の3つです。多くの2型糖尿病では、まず食事と運動を整え、必要に応じて薬物療法を追加します。
食事療法
- 摂取エネルギー量は 目標体重と身体活動量をもとに設定し、年齢・肥満の程度・栄養状態に応じて個別に調整します
- 主食・主菜・副菜のバランス、食物繊維 20g/日 以上
- 「野菜から先に食べる」「ゆっくり噛む」「清涼飲料水・菓子の頻度を減らす」など、続けられる工夫から
- 極端な制限よりも継続性を重視
運動療法
- 有酸素運動(ウォーキング・水泳など)を 中等度の強さで週150分以上 が目安(届かなくても、できる範囲で体を動かすこと自体に意味があります)
- レジスタンス運動(軽い筋トレ)を週2〜3回
- 食後1〜2時間の運動が血糖上昇を抑えやすい
- 増殖性網膜症(眼の奥に新しい血管が異常に伸びる進行した網膜症)や重症神経障害がある場合など、運動を制限する条件もあるため初回は受診時にご相談ください
薬物療法(分類のみ)
日本糖尿病学会の薬物療法アルゴリズムでは、全員に共通の「第一選択薬」を決めるのではなく、インスリンの分泌低下が主体か・効きにくさ(抵抗性)が主体か、安全性、併存疾患、患者さんの背景を順に考えて薬を選びます。
| 分類 | 主な働き | 選択を考慮する主な病態・特徴 |
|---|---|---|
| ビグアナイド薬 | 肝臓で新しく作られる糖(糖新生)を抑え、低血糖を起こしにくい | 肥満・インスリン抵抗性が主体の方を中心に、幅広く使われます |
| SGLT2阻害薬(SGLT2:腎臓での糖の再吸収を担う輸送体) | 尿への糖排泄、減量・心血管・腎保護 | 心不全・慢性腎臓病(CKD)合併、減量希望 |
| GLP-1受容体作動薬(GLP-1:食事に反応して分泌される消化管ホルモン。インクレチンの一種) | 満腹感の促進、減量・心血管・腎保護 | 肥満や心血管リスクが高い方 |
| DPP-4阻害薬(DPP-4:GLP-1 を分解する酵素) | インクレチン(食事に反応して血糖を整えるホルモン)の分解を抑え、低血糖を起こしにくい | インスリン分泌不全が主体の方に使いやすい |
| SU薬・グリニド薬(SU:スルホニル尿素) | インスリン分泌を促進 | インスリン分泌不全が主体の方(低血糖・体重増加に注意) |
| α-グルコシダーゼ阻害薬 | 食後の糖吸収を遅らせる | 食後高血糖が主体の方 |
| チアゾリジン薬 | インスリンの効きを改善 | インスリン抵抗性が主体の方(むくみ・体重増加などに注意) |
| インスリン製剤 | インスリンを直接補充 | 1型糖尿病、著明な高血糖や代謝の大きな乱れ(ケトアシドーシスなど)、重症感染症、周術期(手術前後)など |
薬物療法は、体型・併存疾患・年齢・低血糖リスクを総合的に判断して組み合わせます。具体的な薬剤は、診察のうえで体質・他に飲んでいるお薬・腎機能などを踏まえてご提案します。
血糖だけでなく、血圧 <130/80 mmHg、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の管理(多くの方で <120 mg/dL。末梢動脈疾患・細小血管症(網膜症・腎症・神経障害)・喫煙のいずれかがある方は <100 mg/dL、冠動脈疾患やアテローム血栓性脳梗塞(動脈硬化が原因のタイプの脳梗塞)の既往がある方は <70 mg/dL と、リスクに応じてより厳しくなります。詳しくは脂質異常症のページへ)、体重・腹囲、禁煙、定期的な眼科・腎機能フォローも合わせて行うことが、合併症の予防につながります。あわせて高血圧のページもご覧ください。
当院の診療方針
なみきばしクリニックは、渋谷駅 C1 出口から徒歩7分、並木橋交差点から徒歩1分の立地です。恵比寿・代官山方面からも徒歩圏で、お仕事帰りや健診のあとに立ち寄りやすい場所にあります。診療は 総合内科専門医・呼吸器専門医・アレルギー専門医 である斎藤史武医師(医学博士・認定産業医)が担当します。
糖尿病は、高血圧・脂質異常症・肥満・睡眠時無呼吸症候群と併存することが多く、ひとつの数値だけを見ていても全体像を見誤ることがあります。当院では、健診結果や既往歴を踏まえて、お一人おひとりの状態に合わせた検査と治療方針をご相談していきます。逆に、すぐに薬を始めるよりも生活改善を先に試すべき方には、その旨を率直にお伝えします。「不要な処置を避け、状態に応じた治療をご提案する」ことが当院の基本姿勢です。睡眠時無呼吸症候群が疑われる方は睡眠時無呼吸症候群のページ もご参照ください。
とくに渋谷区健診や個人健診で血糖の指摘を受けた方は、結果用紙をお持ちのうえご相談ください。検査・治療方針の決定がスムーズになります。ご予約はWeb予約から24時間受け付けています。
よくあるご質問
Q1. HbA1c と空腹時血糖、どちらを見ればいいですか? HbA1c は過去1〜2か月の血糖の 平均 を反映する検査値で、その日の食事の影響を受けません。一方、空腹時血糖はその時点の血糖値を示し、診断や血糖管理の指標として用います。両方を組み合わせて、長期と短期の両面から治療効果を判断します(日々の血糖の変動や低血糖の確認には、自己血糖測定や持続血糖測定が適しています)。判断に迷う場合は、健診結果と一緒に内科外来へご相談ください。
Q2. インスリンを始めると一生やめられないのですか? 1型糖尿病では生涯のインスリン補充が必要です。一方、2型糖尿病では 一時的にインスリンを使った後に内服薬へ戻せる方も少なくありません(特に診断初期や周術期)。自己判断で中止するとケトアシドーシス(インスリン不足による重い代謝異常)など重大な事態を招くことがあるため、減量・中止は必ず主治医にご相談ください。当院でも内服移行の判断を一緒に検討します。
Q3. 「境界型」と言われたら何をすればいいですか? 境界型は、まだ糖尿病ではないものの、放置すると将来の発症リスクが高い段階です。体重5〜7%の減量・週150分の運動・食事の見直しで発症リスクの低下が期待できることが、複数の介入研究で示されています。境界型のうちに対策を始めることをお勧めしますので、まずは内科外来でご相談ください。
Q4. 糖尿病でも食べていいものはありますか? 基本的に、特定の食品を厳しく避けなければいけないということはありません。重要なのは 総量・質・食べ方 の3点です。野菜から先に食べる、ゆっくり噛む、清涼飲料水や菓子の頻度を減らす、といった続けられる工夫から始めるのが現実的です。細かい栄養指導は、お一人おひとりの生活に合わせて外来でご案内します。
Q5. 低血糖の症状と対処を教えてください。 初期症状は、冷や汗・動悸・手指のふるえ・強い空腹感・集中力低下などです。進行すると意識障害やけいれんに至ることがあります。対処は、ブドウ糖10g(または砂糖20g)をすぐに摂り、15分後に血糖を再測定してください。改善しなければもう一度同量を摂ります。α-グルコシダーゼ阻害薬を服用中の方は、砂糖では効果が出るのが遅いため必ずブドウ糖を使ってください。意識が低下している場合は、誤嚥の危険があるため口から摂らせず、すぐに救急要請してください。インスリンや SU薬を使用中の方は、ご家族にも対処法を共有しておくと安心です。低血糖を繰り返す場合は早めに内科外来へご相談ください。
Q6. 渋谷区の健診で血糖値や HbA1c を指摘されました。どうすればよいですか? まず健診結果用紙をお持ちのうえご相談ください。必要に応じて再採血や OGTT を行い、糖尿病型か境界型かを確認します。当院は渋谷駅 C1 徒歩7分/並木橋徒歩1分で、渋谷区健診の事後フォローのご相談にも対応しています。受診の流れは渋谷区健診のご案内もご参照ください。
血糖値・HbA1c が気になる方はお気軽にご相談ください
次のような方は、一度ご相談いただくことをお勧めします。
・健診で「血糖値が高い」「HbA1c が高い」「要医療」と言われた ・空腹時血糖 110 mg/dL 以上、HbA1c 5.6% 以上が続いている ・口渇・多飲・多尿・体重減少などの症状がある ・家族に糖尿病の方がいて自分も気になる ・妊娠糖尿病を経験したことがある ・肥満・高血圧・脂質異常症を併せて指摘されている
糖尿病の問題は、早めに正しい数値を知ることから始まります。境界型のうちに介入できれば、生活改善だけで発症を遠ざけられる可能性が高まります。渋谷駅 C1 徒歩7分/並木橋徒歩1分のなみきばしクリニックで、総合内科専門医がご相談をお受けします。ご予約はWeb予約からどうぞ。
参考文献
- 日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2024』
- 日本糖尿病学会『糖尿病治療ガイド2024』
- 日本糖尿病学会・日本老年医学会『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』
- 日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』
- 日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025』
- 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査」
