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脂肪肝

執筆:斎藤史武 公開日:2026-08-12

「健診で脂肪肝と言われたけれど、お酒はほとんど飲まないのになぜ?」「肝臓の数値が少し高いだけだから、様子を見ればいいと思っていた」──そんなふうに感じて、受診を後回しにしている方は少なくありません。脂肪肝は自覚症状がほとんどないまま進むことがあり、健康診断の肝機能の数値や腹部エコーで初めて気づくことの多い病気です。だからこそ、指摘された段階で「今どのくらいの状態なのか」を知り、できるところから手を打っていくことが大切です。

このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(総合内科専門医・呼吸器専門医・アレルギー専門医)が、脂肪肝の原因・放置したときのリスク・検査の進め方・生活改善のコツ・よくあるご質問までを、できるだけかみ砕いてご説明します。健診で「脂肪肝」「要観察」「肝機能異常」と言われた方や、ご家族の結果が気になる方の判断材料になればと願っています。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。

脂肪肝とはどんな病気ですか?

脂肪肝とは、肝臓の細胞に中性脂肪が過剰にたまった状態のことです。医学的には、肝臓の細胞の5%以上に脂肪がたまっている場合を指します。健康な肝臓にもわずかな脂肪はありますが、それが増えすぎると、肝臓の働きにじわじわと負担がかかっていきます。

かつては、お酒が原因でない脂肪肝を「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と呼んでいました。しかし近年、この病気の本質が「肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧といった代謝の異常」と深く結びついていることが分かってきたため、2023年に国際的に名称が整理され、こうしたタイプは MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患) と呼ばれるようになりました。つまり脂肪肝は、肝臓だけの問題ではなく、生活習慣病全体の一部としてとらえる病気だと考えられています。

MASLDは、単に「お酒が原因ではない脂肪肝」という意味ではありません。肝臓に脂肪がたまっていることに加えて、肥満・血糖の異常・高血圧・中性脂肪高値・HDLコレステロール低値という5つの要因のうち、少なくとも1つを併せもつ場合に診断されます。一定量以上の飲酒がある場合は、MetALD(代謝機能障害アルコール関連肝疾患)やアルコール関連肝疾患に分類されます。また、脂肪肝や肝機能の異常がみられたときは、飲酒量だけでなく、肝炎ウイルス、薬やサプリメント、自己免疫性の肝疾患などが関係していないかも確認します。

脂肪肝は決して珍しいものではなく、世界の成人の約30%前後が該当すると推計されていますが、地域や診断方法によって幅があります。健診を受けた多くの方が指摘される、とても身近な状態です。

お酒を飲まないのに脂肪肝と言われるのはなぜですか?

「脂肪肝=お酒の飲みすぎ」というイメージが根強いため、飲酒習慣のない方が指摘されると戸惑われることがよくあります。しかし実際には、お酒以外の要因で起こる脂肪肝がとても多いのです。背景にあるのは、次のような代謝の要因です。

とくに2型糖尿病のある方では約65%、肥満のある方では約70〜80%に脂肪肝が見られると報告されています。逆に、脂肪肝があること自体が、将来の糖尿病や心臓・血管の病気のサインになることもあります。

なお、やせている方でも脂肪肝になることがあります(いわゆる「やせ型」の脂肪肝)。体重が標準でも、内臓脂肪や体質が関係している場合があるため、「太っていないから大丈夫」とは言い切れません。飲酒量が多い方の場合は、お酒による肝障害が加わっていることもあり、区別と評価が必要です。

脂肪肝を放置するとどうなりますか?

多くの脂肪肝は、すぐに命に関わるものではありません。しかし「脂肪がたまっているだけ」の段階から、一部は肝臓に炎症が起こる状態(脂肪肝炎:MASH)へ進み、そこから肝臓が硬くなる線維化(せんいか)が進行することがあります。線維化はF0(なし)からF4(肝硬変)まで段階があり、進むほど元に戻りにくくなります。

放置して線維化が進んだ場合に問題となるのは、主に次の点です。

  1. 肝硬変(かんこうへん:線維化が進んで肝臓の構造が大きく変わり、働きが落ちる状態)
  2. 肝がん(肝硬変やその手前の段階から起こることがあります)
  3. 心筋梗塞・狭心症・脳卒中などの心臓・血管の病気

見落とされやすいのは、脂肪肝が肝臓以外のリスクとも結びついている点です。脂肪肝のある方は、高血圧脂質異常症・糖尿病を併せ持つことが多く、心臓や血管の病気で亡くなるリスクも高まると考えられています。「肝臓の数値」だけの問題ではなく、全身の生活習慣を見直すサインととらえることが大切です。

ここで一つ知っておいていただきたいのは、肝臓の数値(ALT・ASTなど)が正常でも、線維化が進んでいることがあるという点です。数値が正常だから安心、とは限らないため、後述の線維化の評価が重要になります。

脂肪肝はどうやって診断しますか?

診断は、いくつかの検査を組み合わせて進めます。「脂肪がたまっているか」だけでなく、「線維化がどのくらい進んでいるか」を評価するのが現代的な考え方です。

  1. 血液検査肝機能(AST・ALT・γ-GTPなど)、血糖・HbA1c、脂質、血小板などを確認します。日本肝臓学会は、ALTが30 U/Lを超えた場合を、原因を調べるために医療機関を受診する目安としています(奈良宣言2023)。ただし数値が正常でも脂肪肝や線維化を否定はできません。
  2. 腹部超音波(エコー):肝臓に脂肪がたまっているかを、体に負担なく調べられる基本の検査です。中等度以上の脂肪肝に対しては、感度およそ85%・特異度およそ94%と報告されています。脂肪の蓄積が軽い場合には、エコーで分からないことがあります。
  3. FIB-4(フィブフォー)インデックス:年齢・肝酵素・血小板から計算するスコアで、線維化のリスクをふるい分けます。1.3未満なら進行した線維化の可能性は低く、1.3以上ならさらに詳しい評価を検討します。ただし65歳を超える方では2.0を目安とするなど年齢による調整が必要で、35歳未満では精度が下がるため、数値だけでは判断できません。
  4. FibroScan(フィブロスキャン:肝臓の硬さを測る専門的な検査):主に線維化のリスクを評価する検査です。肝硬度が8 kPa未満なら進行した線維化は考えにくく、8〜12 kPaは判定が中間的な範囲、12 kPaを超えると進行した線維化の可能性が高まります。ただし数値だけで線維化の段階や脂肪肝炎(MASH)を確定することはできず、ほかの検査と組み合わせて判断します。この検査は主に専門医療機関で行われます。

当院ではまず血液検査とFIB-4で一次評価を行い、進行が疑われる場合には、FibroScanなどのより詳しい検査ができる消化器・肝臓の専門医療機関と連携してご紹介します。健診で肝機能を指摘された方は、結果表をお持ちいただくと、初診から評価がスムーズに進みます。健診の動線については個人健診のご案内もあわせてご覧ください。

脂肪肝は治りますか?どう治療しますか?

脂肪肝は、早い段階であれば生活の見直しで改善が期待できる病気です。治療の主役は今も生活改善で、背景にある肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧を一緒に整えていくことが基本になります。

体重を減らす

食事を整える

体を動かす

お酒について

お薬について

脂肪肝の全体に共通して使える万能薬はありません。ただし2026年6月、日本で初めて、肝硬変を伴わない脂肪肝炎(MASH)のうち中等度以上の線維化がある方を対象に、セマグルチドという注射薬が承認されました。対象となるのは線維化が進んだ限られた方で、専門的な診断と、定められた医師・施設の要件が必要です。なお、肝臓の病気そのものの経過を改善する効果は、まだ確かめられていません。当院で該当する可能性があると判断した場合は、肝臓の専門医療機関へご紹介します。あわせて、糖尿病・肥満・脂質異常症・高血圧といった背景の病気を、それぞれの適応に沿って治療していくことが基本です。たとえばコレステロールを下げるスタチンは、脂肪肝がある方でも心臓・血管の病気を防ぐ目的で一般に使用可能とされていますが、肝機能や併用薬を確認しながら判断します。どの治療が向いているかは、検査結果と併せて一人ひとりご相談します。

脂肪肝で受診するのは何科ですか?当院でできること

脂肪肝は、まずは内科(とくに生活習慣病を診る内科)にご相談いただくのが適しています。脂肪肝は糖尿病・脂質異常症・高血圧・肥満と重なって現れることが多く、これらをまとめて診られることが大切だからです。

なみきばしクリニックは総合内科として、健診で指摘された肝機能異常や脂肪肝について、血液検査で全身の状態を確認し、生活改善の具体的な進め方を一緒に組み立てます。線維化が疑われる場合や、より専門的な検査・治療が必要と判断した場合には、消化器・肝臓の専門医療機関と連携してご紹介します。渋谷駅・恵比寿・代官山からも通いやすい立地ですので、健診結果を持って気軽にご相談ください。受診のご予約はこちらからどうぞ。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 脂肪肝は治りますか? 早い段階であれば、生活改善で改善が期待できます。体重を5%減らすと肝臓の脂肪が減り、10%減らすと炎症や線維化の改善も期待できると報告されています。ただし進行して線維化が進むと元に戻りにくくなるため、早めの対策が大切です。

Q. お酒を飲まないのに脂肪肝と言われました。なぜですか? お酒以外に、肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧・食生活・運動不足などが原因になります。こうした代謝の要因による脂肪肝は近年MASLDと呼ばれ、飲酒習慣のない方にも多く見られます。

Q. 肝臓の数値(ALT・AST)が正常なら安心ですか? 必ずしもそうとは言えません。数値が正常でも線維化が進んでいることがあるため、必要に応じてFIB-4やFibroScanなどで線維化の程度を評価します。

Q. どれくらい痩せればよいですか? まずは体重の5%減が一つの目安です。さらに10%減らせると、脂肪肝炎や線維化の改善も期待できます。無理な急減量は避け、続けられる範囲で取り組みましょう。

Q. 脂肪肝は何科を受診すればよいですか? まずは内科(生活習慣病を診る内科)が適しています。背景にある糖尿病・脂質異常症・高血圧なども一緒に確認できるためです。進行が疑われる場合は肝臓の専門医療機関と連携します。

参考文献

※本ページは一般的な情報提供を目的としています。診断・治療方針は個々の状態により異なります。最終的な判断は診察のうえで行いますので、気になる症状のある方は医療機関にご相談ください。

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