「健診で血圧を指摘されて血圧計を買ったものの、測るたびに数値が違って、どれが本当の値なのか分からない」「朝と夜のどちらで測ればよいのか、何回測ればよいのかが分からない」──外来でよくうかがうお話です。血圧はもともと一日の中で刻々と変わる数値ですから、1回の値だけで判断はできません。反対に、条件をそろえて何日か測った記録は、診察室で測る値よりも確かな判断材料になります。
このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(総合内科専門医・呼吸器専門医・アレルギー専門医)が、なぜ家庭で測った血圧が診療で重視されるのか、いつ・何回・どんな姿勢で測るのか、記録をどう付けて受診に持っていくのかを整理してご説明します。高血圧という病気そのものの解説と、薬を含む治療の進め方は高血圧のページにまとめてありますので、この記事は「測って記録する」ところに絞ってお読みいただければ幸いです。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。
なぜ診察室ではなく、家庭で測った血圧が重視されるのですか?
結論から申し上げると、家庭で測った血圧のほうが、将来の脳卒中や心筋梗塞の起こりやすさをよく言い当てるからです。
理由は3つあります。① 診察室での測定は多くても月に1回程度ですが、家庭では毎日同じ条件で測れるため、普段の血圧像に近づきます。② 診察室では緊張で上がってしまう方がいますが、自宅では診察室特有の緊張による影響を受けにくくなります。③ 回数が多いぶん、日ごとのばらつきや季節による変化まで見えてきます。
そのため、診察室と家庭の値で高血圧かどうかの判断が食い違うときは、家庭で測った値を優先して診断します。降圧薬による治療も、診察室の値ではなく家庭の値を目安に進めることが強く推奨されています。14件の比較試験をまとめた解析では、家庭血圧を目安に治療したほうが、24時間の平均血圧が収縮期で 2.73 mmHg、拡張期で 1.61 mmHg 余分に下がりました。ただし、この進め方で脳卒中や心筋梗塞そのものが減るかを直接調べた試験は、まだありません。
健診で測る血圧も、条件としては診察室での測定と同じです。詳しく調べる価値のある方を見つけるための入口であって、それだけで高血圧と決まるわけではありません。健診の判定の読み方は健康診断で「要精密検査」と言われたらにまとめています。
家庭血圧は何mmHgから高いのですか?
家庭で測った血圧は、135/85 mmHg 以上で高血圧と判断します。診察室で測る場合の 140/90 mmHg より低い線が引かれているのは、家庭のほうが落ち着いた条件で測るぶん、同じ方でも低めに出るためです。数値は左が収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ:心臓が縮んで血液を送り出すときの上の血圧)、右が拡張期血圧(かくちょうきけつあつ:心臓がふくらむときの下の血圧)です。
家庭血圧は6段階に分かれます。
| 区分 | 上の血圧/下の血圧(mmHg) |
|---|---|
| 正常血圧 | 115未満 かつ 75未満 |
| 正常高値血圧 | 115〜124 かつ 75未満 |
| 高値血圧 | 125〜134 または 75〜84 |
| I度高血圧 | 135〜144 または 85〜89 |
| II度高血圧 | 145〜159 または 90〜99 |
| III度高血圧 | 160以上 または 100以上 |
混同しやすいのが、診断の線と治療中の目標値は別物だという点です。135/85 は「高血圧かどうか」を分ける線で、高血圧の治療で目指す原則的な家庭血圧は 125/75 mmHg 未満とさらに低くなります。目標値は年齢や体の状態によって個別に調整しますので、実際の数値は診察でご確認ください。
健診の結果表ではまた別の物差しが使われます。収縮期130 mmHg または拡張期85 mmHg 以上で生活習慣の見直しを、140 mmHg または90 mmHg 以上で受診を勧められますが、いずれも家庭血圧の基準とはそのまま比べられません。
家庭血圧はいつ・何回測ればよいですか?
測るのは朝と晩の1日2回です。
- 朝:起床後1時間以内、トイレを済ませたあと、朝の薬を飲む前、朝食の前。椅子に座って1〜2分静かにしてから測ります
- 晩:就寝前。同じく座って1〜2分してから測ります
1回の機会に2回続けて測り、2回の値を記録したうえで、その平均をその機会の代表値として用います。1回しか測れなかったときは、その値を使って差し支えありません。3回測ったときは3回の平均でも構いませんが、1回の機会に4回以上は勧められていません。回数を増やすほど測定が負担になり、続かなくなるためです。
最も大事なのが期間です。高血圧かどうかの判断も、薬が効いているかどうかの判断も、朝と晩それぞれ7日間(少なくとも5日間)の平均で行います。このとき、朝の平均と晩の平均は別々に出します。どちらか一方でも 135/85 mmHg 以上であれば家庭血圧としては高血圧と判断し、反対に治療中の目標に届いたと言えるのは、朝と晩の両方の平均が目標を下回ったときです。
朝だけ高い、晩だけ高いという形は珍しくありません。この差自体が手がかりになりますので、まとめて平均せず、朝と晩を分けて記録してください。このほか、入浴前や飲酒の前、体調に変化があるときの値を測っていただくこともあります。
血圧計はどれを選び、どんな姿勢で測ればよいですか?
血圧計は上腕(二の腕)にカフ(腕帯:腕に巻いて締めつける帯)を巻くタイプをお選びください。日本で市販されている上腕カフ式の電子血圧計で十分です。手首や指で測るタイプは手軽ですが、家庭血圧の基準は上腕で測ることを前提につくられています。腕帯を使わずに測る機器(カフレス血圧計)は、現時点では診断や治療の判断に用いることが勧められていません。駅や薬局に置かれている据置き型の自動血圧計も、機器と測定環境の条件がそろわないため、診断や治療の判断には使いません。
姿勢と条件は次のとおりです。
- 静かで、寒すぎない部屋で測る(冷えた部屋では高めに出ます)
- 背もたれのある椅子に座り、脚は組まない
- 測る前も測っている間も会話しない
- 直前の喫煙、飲酒、カフェインは避ける
- 腕の太さに合ったカフを選び、前腕を机などに置いて力を抜き、カフの位置を心臓と同じ高さに保つ
- 原則として利き手ではないほうの腕で測る
左右の腕で毎回同じように差が出る場合は、一度ご相談ください。飲酒や入浴の前後は血圧が変動しやすいため、いつもの血圧を評価するための測定はその時間帯を避けてください。
測った値はどう記録し、受診のときどう使えばよいですか?
記録は測った値をすべて残すのが原則です。高かった日を飛ばすと、平均が実際からずれてしまいます。自動で記録する血圧計でも、測定値を削除せず残してください。書き留めるのは日付、朝か晩か、上と下の血圧の両方、そして脈拍です。血圧手帳でも、スマートフォンのアプリでも、測定値を自動で残せる血圧計でも構いません。
大切なのは、1回ごとの数値に一喜一憂しないことです。ある日だけ高い値が出ても、それ自体が異常を意味するわけではありません。見るべきは1週間、1か月という単位の推移です。ただし、極端に高い値が繰り返される場合や、胸痛、強い息苦しさ、片側の手足の動かしにくさ、ろれつが回らない、意識の変化、突然の激しい頭痛などを伴う場合は、平均を待たずに速やかに医療機関へご相談ください。測ることが不安や負担につながる場合は、自己判断で中止せず、測定の回数や期間を診察でご相談ください。診断や薬の調整を行う期間には、原則として朝晩5〜7日間の記録が必要です。
記録を見てご自身の判断で薬をやめたり、量を変えたりすることは避けてください。数値が下がっているのは薬が効いているためで、中断すると元に戻ります。
受診の際は、7日分(少なくとも5日分)の朝晩の記録をお持ちください。当院の内科では、血圧の評価に必要な採血・尿検査・心電図・胸部X線検査を院内で行っています。血管の硬さと詰まり具合をみる動脈硬化検査(ABI/PWV)は個人健診のオプションで、渋谷区の特定健診も実施しています。健診の内容は健康診断のご案内をご覧ください。血糖や脂質も同時に指摘された方はHbA1cの読み方やLDLコレステロールが高いと言われたらを、複数の項目が重なっている方は生活習慣病のページもあわせてご覧ください。
診察室でだけ高い場合・家でだけ高い場合は、何を意味しますか?
この2つには名前が付いていて、意味も対応も異なります。
白衣高血圧(はくいこうけつあつ:診察室で測ると高く、家庭では正常に収まる状態)では、臓器への負担は比較的軽く、常に血圧が高い方に比べれば経過は良好とされています。ただ、血圧が高くない方と比べると将来の脳卒中や心筋梗塞のリスクは高いため、経過をみていく必要があります。降圧薬をまだ使っていない方の白衣高血圧では薬を始めないのが原則で、家庭血圧の測定と生活習慣の見直しを続けながら定期的に確認します。ただし、臓器への負担や全体の心血管リスクによっては個別に判断します。
仮面高血圧(かめんこうけつあつ:診察室では高くないのに、家庭や職場では高い状態)は逆の形です。臓器への負担も脳心血管の病気のリスクも、常に血圧が高い方と同じ程度に高く、診察室の測定では見つからないまま、家庭血圧を測って初めて表面化します。高くなる時間帯によって、朝に高い早朝高血圧、日中に高い職場高血圧、睡眠中に高い夜間高血圧に分かれます。
家庭血圧が 135/85 mmHg の前後で行き来する場合は、まず測定の条件を確認して5〜7日間測り直します。診察室血圧と家庭血圧が食い違う、夜間高血圧が疑われる、変動が著しいなど、通常の家庭血圧だけでは判断しにくい場合には、24時間血圧計(ABPM:睡眠中も含めて自動で測り続ける携帯型の検査)を検討します。通常の朝晩の測定だけでは、睡眠中の血圧は評価できません。必要と判断したときは、連携する医療機関へご紹介します。
診察室でよくあるご相談
以下は、複数の診療経験をもとに再構成した典型的な例です。
50代の男性が、健診で収縮期血圧148 mmHg と指摘され、結果表を持って来院されました。診察室で測ると152/94 mmHg でしたが、ご本人は「家では130台のはずだ」とおっしゃいます。血圧計は上腕式をお持ちでしたが、測るのは夜だけで、高い値が出た日は書き留めていないとのことでした。そこで、朝は起床後1時間以内・排尿後・朝食前、晩は就寝前と条件をそろえ、1機会2回の平均をすべて残す形で記録していただきました。持参された記録では、晩の平均が128/79 mmHg だったのに対し、朝の平均は142/88 mmHg で、朝に高くなる型であることが分かりました。診察室の数値だけで決めず、朝の値が高い背景を睡眠や生活の面から確認したうえで方針をご相談する流れとしました。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 測るたびに数値が違います。どれが本当の血圧ですか?
どれも本当の血圧です。血圧は呼吸や姿勢、時間帯によって刻々と変わりますから、1回の値がその方の血圧を代表することはありません。だからこそ、条件をそろえて何日も測り、朝と晩それぞれ7日間(少なくとも5日間)の平均で判断します。ばらつきの大きさ自体も材料になりますので、記録は書き直さずそのままお持ちください。
Q. 朝だけ血圧が高いのですが、問題でしょうか?
朝の平均が 135/85 mmHg 以上であれば、晩が低くても家庭血圧としては高血圧と判断します。朝に高くなる型は、日中に測る診察室の血圧だけでは見つけられません。背景は睡眠の状態や薬の効き方など複数考えられますので、朝と晩を分けた記録をお持ちのうえ、診察でご相談ください。
Q. 手首式の血圧計を持っています。使ってはいけませんか?
家庭血圧の基準は上腕で測ることを前提につくられていますので、診断や薬の調整に用いる値としては上腕式をおすすめします。手首式で測った記録にも意味はありますが、どちらで測ったかを診察時にお伝えください。
Q. 血圧が気になって何度も測ってしまいます。
1回の機会に4回以上測ることは勧められていません。血圧の記録は判断を助けるためのもので、回数や期間は状態に合わせて調整できますので、負担になっているようでしたら診察でお申し出ください。当院の内科は総合内科専門医が担当しており、渋谷駅C1出口から徒歩7分、並木橋交差点から徒歩1分です。健診の結果表と血圧の記録をお持ちのうえ、お立ち寄りください。
参考文献
- 日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025』第2章「表2-1 家庭血圧測定の方法と条件」/第5章「表5-1 診察室血圧の測定」「表5-3 家庭血圧の評価法」「表5-4 ABPMの適応」「表5-5 成人の血圧分類」「表5-6 測定法別の高血圧基準」および「白衣高血圧・仮面高血圧」の項/第6章「表6-3 降圧目標」/CQ2「家庭血圧に基づく降圧治療」
- 厚生労働省『標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)』別紙5「健診検査項目の保健指導判定値及び受診勧奨判定値」
- 家庭血圧に基づく降圧治療の無作為化比較試験14件のメタ解析(Hypertens Res. 2025)
※本ページは一般的な情報提供を目的としています。診断・治療方針は個々の状態により異なります。最終的な判断は診察のうえで行いますので、気になる数値のある方は医療機関にご相談ください。
