「健診で血圧が高いと言われたけれど、調子は悪くない」「家で測ると数値がバラバラで、本当に治療が必要なのか分からない」──そう感じて受診をためらっている方は少なくありません。高血圧は自覚症状が出にくいため、気づかないうちに進行し、後年になってから脳卒中や心筋梗塞として現れることがあります。だからこそ、早めに正しい数値を知り、必要な対策を少しずつ始めていくことが大切です。
このページでは、なみきばしクリニックの内科外来担当医・斎藤史武医師(総合内科専門医・呼吸器専門医・アレルギー専門医)が、日本高血圧学会のガイドラインを踏まえ、高血圧の診断基準・原因・治療の進め方・家庭血圧の正しい測り方・よくあるご質問までを、できるだけかみ砕いてご説明します。健診で「要観察」「要医療」と言われた方や、ご家族の血圧が気になる方の判断材料になればと願っています。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。
高血圧とはどんな病気ですか?
高血圧とは、血管の中を血液が流れるときに、血管の壁を押す圧力が慢性的に高い状態を指します。日本高血圧学会の『高血圧管理・治療ガイドライン2025』では、診察室で測った血圧が 140/90 mmHg 以上、家庭で測った血圧が 135/85 mmHg 以上 の場合を高血圧と診断します。また、130-139 / 80-89 mmHg は「高値血圧」と呼ばれ、高血圧にはまだ該当しないものの、将来の心血管病リスクを考えて生活習慣の改善が勧められる血圧域です。
もうひとつ重要なのが、「家庭血圧を主軸に判断する」原則です。診察室で緊張して上がってしまう方、逆に診察室では正常で家庭で高い方──いずれも珍しくありません。複数日の家庭血圧の平均が、実際の血圧像をいちばん良く反映すると考えられています。
日本人の高血圧有病者は約4,300万人と推計され、決して特別な病気ではありません。健診で指摘された段階で対処を始めることが、将来の脳卒中や心筋梗塞のリスク低減につながると考えられています。複数の項目を指摘された方は、生活習慣病全体の見取り図として生活習慣病のよくあるご質問もあわせてご覧ください。
高血圧の原因は何ですか?
高血圧の約9割は、はっきりとした単一の原因がない「本態性高血圧」(ほんたいせいこうけつあつ:特定の病気が背景になく、生活習慣や体質の積み重ねで起こるタイプ)です。塩分の摂りすぎ、肥満、運動不足、過度な飲酒、喫煙、ストレス、睡眠不足、加齢、遺伝的体質などが少しずつ重なって発症すると考えられています。「これさえ直せば治る」というよりも、いくつかの要素を同時に整えていく取り組みが大切です。
一方、少なくとも約1割は、別の病気が背景にある「二次性高血圧」です。次のようなサインがあるときは、原因疾患を調べる検査をお勧めします。
- 若い年代で発症した
- 利尿薬を含む3剤以上の降圧薬でもコントロールがつかない(治療抵抗性)
- 採血で血清カリウムが低い(→ 原発性アルドステロン症の可能性)
- 腎機能の低下や腎血管雑音を指摘されている(→ 腎血管性高血圧の可能性)
- 大きないびきや日中の強い眠気がある(→ 睡眠時無呼吸症候群 の可能性)
- ステロイド薬・一部の鎮痛薬・甘草を含む漢方を内服している
とくに睡眠時無呼吸症候群は、高血圧の隠れた原因として近年注目されています。当院では呼吸器内科の専門医が在籍しており、必要な検査と治療方針のご相談に対応しています。
なぜ高血圧を治療する必要があるのですか?
高血圧そのものは、かなり高い場合でも通常ほとんど自覚症状がありません。しかし、放置した血管は静かに傷んでいき、次のような病気の土台になります。
- 脳卒中(脳梗塞・脳出血)
- 心筋梗塞・狭心症
- 心不全
- 慢性腎臓病(CKD:腎臓のはたらきが少しずつ低下する状態)から腎不全・透析へ
- 認知症(血管性・アルツハイマー型)
- 大動脈解離
大規模な研究のまとめでは、収縮期血圧を 10 mmHg 下げると、脳卒中や心筋梗塞などの心血管病の発症リスクがおよそ2割減少する ことが報告されています。これは薬や生活改善で十分に到達できる範囲です。糖尿病や脂質異常症が併存する場合はリスクがさらに高くなるため、糖尿病のページ、脂質異常症のページ もあわせてご確認いただくと、ご自身の状態を立体的に理解しやすくなります。
どのように診断するのですか?
診断のステップは大きく3つです。
- 診察室血圧の測定:別の日に測った複数回の平均で評価します。1回だけ高くても、それだけで高血圧と決めつけません。
- 家庭血圧の記録(1〜2週間):日常の数値を確認します。詳しい測り方は次のセクションをご覧ください。
- 採血・採尿・心電図など:腎機能、電解質、血糖、脂質、心臓への負担を確認し、二次性の可能性や合併症の有無を評価します。
ここで重要になるのが、白衣高血圧と仮面高血圧の区別です。
- 白衣高血圧:診察室では140/90以上だが、家庭では135/85未満。直ちに薬物療法を行わないことが多いですが、将来の高血圧化リスクがあるため定期的に経過をみます。
- 仮面高血圧:診察室では正常だが、家庭では135/85以上。未治療のまま心血管リスクが進む可能性がある型で、もっとも警戒すべき状態のひとつです。
健診で指摘された方は、まず家庭血圧を1〜2週間記録してから受診していただくと、初診から方針までがスムーズに進みます。健診の動線については個人健診のご案内もあわせてご覧ください。受診のご予約はこちらからどうぞ。
家庭血圧の正しい測り方
家庭血圧は、ご自身の本当の血圧像をつかむうえで、診察室の測定よりも参考になることが多いです。次のポイントを意識すると、ぶれの少ない記録が取れます。
測るタイミング
- 朝:起床後1時間以内、排尿を済ませた後、朝食前、降圧薬を飲む前
- 夜:就寝前
- 1機会に2回測定し、その平均を記録(原則7日間・少なくとも5日間、できるだけ連続で)
姿勢と条件
- 椅子に座って1〜2分静かに過ごしてから測定
- 背もたれに背中をあずけ、足底を床につけ、脚は組まない
- カフ(腕帯)は上腕に巻くタイプを推奨。心臓と同じ高さにする
- 直前の会話、喫煙、カフェイン摂取は避ける
記録の仕方
- 日時、収縮期/拡張期の両方、脈拍を記録
- スマートフォンのアプリ・血圧手帳のどちらでも構いません
- 受診の際にお持ちいただくと、診療の精度が高まります
正しく測れた家庭血圧は、薬を始めるかどうか、薬の種類や用量を調整するかどうかの、もっとも大切な判断材料になります。
どのように治療するのですか?
治療の柱は 生活改善と薬物療法 の2つです。生活改善は、すべての方に共通する治療の土台です。そのうえで高血圧と診断された場合は、血圧の程度と心血管病のリスクを評価し、必要に応じて早期に薬物療法を開始します。II度以上(160/100 以上)の高血圧の方や、糖尿病・腎臓病・心血管病などがあり心血管リスクが高い方では、生活改善と同時に薬物療法を開始します。それ以外の方も、生活改善を始めたあとの血圧をおおむね1か月以内に再評価し、薬物療法が必要かどうかを判断します。高値血圧(130-139/80-89)の段階では、生活改善のみで十分な改善が見込めることもあります。
生活改善(すべての方の基本)
| 項目 | 目標 | 期待される降圧効果 |
|---|---|---|
| 減塩 | 6g/日未満 | およそ -2〜-8 mmHg |
| 野菜・果物・低脂肪乳を多めに | DASH食(高血圧予防のための食事スタイル) | およそ -8〜-14 mmHg |
| 減量 | BMI 25未満(体重kg ÷ 身長m ÷ 身長m)/内臓脂肪を減らす | 体重1kgあたり約 -1 mmHg |
| 有酸素運動 | 30分以上を週ほぼ毎日 | およそ -4〜-9 mmHg |
| 節酒 | 男性 純アルコール 20-30mL/日以下、女性 10-20mL/日以下 | およそ -2〜-4 mmHg |
| 禁煙 | 完全禁煙 | 直接の降圧効果は小さいが、心血管リスクが大きく減少 |
※表の降圧効果はあくまで目安で、個人差があります。また、腎機能が低下している方では野菜・果物(カリウム)の摂り方に注意が必要な場合があるため、主治医にご相談ください。
減量については肥満症のページもあわせてご覧いただくと、無理のない取り組み方が分かりやすくなります。
薬物療法(主要な降圧薬)
『高血圧管理・治療ガイドライン2025』では、Ca拮抗薬・ARB・ACE阻害薬・サイアザイド系利尿薬・β遮断薬の5系統が主要な降圧薬と位置づけられています。
| 分類 | 選択されやすい場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| Ca拮抗薬(カルシウム拮抗薬:血管を広げて血圧を下げる薬) | 高齢の方、収縮期血圧が高めの方、脳血管障害の既往 | むくみ、歯肉肥厚、一部薬剤との相互作用 |
| ARB/ACE阻害薬(血圧を上げるホルモンの働きを抑える薬) | 蛋白尿(尿にタンパクが漏れる状態)を伴う慢性腎臓病、心不全などの合併 | 高カリウム血症、腎機能の確認、ACE阻害薬は空咳 |
| 利尿薬(尿として塩分・水分を排出して血圧を下げる薬) | 食塩感受性が強い方、心不全、高齢 | 低カリウム、高尿酸、耐糖能の悪化に注意 |
| β遮断薬(ベータしゃだんやく:心臓の働きを穏やかにする薬) | 虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)、心不全、頻脈の合併 | 喘息や徐脈のある方は慎重に |
これらの主要降圧薬の中から、年齢・併存疾患・腎機能・脈拍などを考慮して選択し、1剤で十分に下がらない場合は作用の異なる薬を組み合わせます。II度以上(160/100 mmHg 以上)の高血圧や心血管リスクが高い場合には、最初から2剤併用を考慮することもあります。具体的な薬剤は、診察のうえで体質・他に飲んでいるお薬・生活背景を総合的に考えてご提案します。
治療目標
『高血圧管理・治療ガイドライン2025』では、降圧目標が大きく整理され、年齢を問わず原則として診察室血圧 <130/80 mmHg、家庭血圧 <125/75 mmHg を目指すことになりました。前のガイドラインでは75歳以上で <140/90 とされていましたが、最新版では75歳以上の方も含めて統一された目標値が示されています。
ただし、ご高齢でフレイル(心身の虚弱)がある方、立ちくらみや転倒などの有害事象が心配な方、重い併存疾患がある方などでは、降圧のスピードや目標を個別に調整します。数値だけを無理に下げるのではなく、安全性を確認しながら治療を進めます。実際の目標値は、年齢・併存疾患・服薬状況・ふらつきの出やすさを総合的にみて、お一人おひとりに合わせて設定します。
当院の診療方針
なみきばしクリニックは、渋谷駅 C1 出口から徒歩7分、並木橋交差点から徒歩1分の立地です。恵比寿・代官山方面からも徒歩圏で、お仕事帰りや健診のあとに立ち寄りやすい場所にあります。診療は総合内科専門医・呼吸器専門医・アレルギー専門医である斎藤史武医師(医学博士・認定産業医)が担当します。
高血圧は、糖尿病・脂質異常症・睡眠時無呼吸症候群などと併存することが多く、ひとつの数値だけを見ていても全体像を見誤ることがあります。当院では、健診結果や既往歴を踏まえて、お一人おひとりの状態に合わせた検査と治療方針をご相談していきます。逆に、すぐに薬を始めるよりも生活改善を先に試すべき方には、その旨を率直にお伝えします。「不要な処置を避け、状態に応じた治療をご提案する」ことが当院の基本姿勢です。
とくに渋谷区健診や個人健診で血圧の指摘を受けた方は、結果用紙と家庭血圧の記録をお持ちのうえご相談ください。検査・治療方針の決定がスムーズになります。ご予約はWeb予約から24時間受け付けています。
よくあるご質問
Q1. 白衣高血圧と仮面高血圧の違いは何ですか? 白衣高血圧は、診察室で緊張して上がってしまうタイプで、家庭では正常範囲に収まります。直ちに薬物療法を行わないことが多いですが、将来の高血圧化リスクがあるため定期的な経過観察をお勧めします。仮面高血圧は逆に、診察室では正常だが家庭で高いタイプで、自覚されないまま心血管リスクが進む可能性があるため、もっとも警戒すべき型のひとつです。家庭血圧の記録があると、この2つを正確に区別できます。
Q2. 家庭血圧と診察室血圧、どちらを信じればいいですか? 近年のガイドラインでは、原則として家庭血圧を優先する考え方が主流です。複数日の平均で評価できるため、日常生活での血圧像をよく反映するからです。診察室と家庭の値が大きく異なるときも、家庭の数値を中心に判断します。判断に迷う場合は、家庭血圧の記録をお持ちのうえ内科外来へご相談ください。
Q3. 降圧薬は一度始めたら一生やめられないのですか? 多くの場合は長期の内服が必要です。しかし、減量や減塩など生活改善が大きく進めば、薬を減量・中止できる方もいらっしゃいます。一方で、自己判断で中止すると血圧が再び上昇することがあり、一部の薬剤では急にやめること自体が問題になる場合もあるため、必ず主治医とご相談のうえ調整してください。減薬を希望される場合も、まずは内科外来でご相談ください。
Q4. 塩分は1日何グラムまでが目安ですか? 日本高血圧学会の推奨は 6g/日未満です。日本人の平均摂取量は約10g/日と言われているので、半分近く減らす意識が必要になります。麺類の汁を残す、加工食品やインスタント食品を控える、しょうゆをかけるのではなく小皿でつける、といった具体策から始めると無理なく続けられます。減塩を続けても血圧が下がりにくい場合は、内科外来でご相談ください。
Q5. 血圧が高くても症状がありません。本当に治療が必要ですか? 高血圧は症状が出にくい病気で、進んでから脳卒中や心筋梗塞といった大きな病気として現れることが多くあります。「症状がない=大丈夫」とは限りません。健診で指摘された方は、自覚症状の有無にかかわらず、まず家庭血圧の記録から始めていただくのが安全です。記録をご持参のうえ、お早めに内科外来へご相談ください。
Q6. 渋谷区の健診で血圧を指摘されました。どうすればよいですか? まず1〜2週間ほど家庭で血圧を測って記録してください。そのうえで結果用紙と記録をお持ちいただくと、初診の時点で診断と方針の見通しが立てやすくなります。当院は渋谷駅 C1 徒歩7分/並木橋徒歩1分で、渋谷区健診の事後フォローのご相談にも対応しています。受診の流れは渋谷区健診のご案内もご参照ください。
血圧が気になる方はお気軽にご相談ください
次のような方は、一度ご相談いただくことをお勧めします。
- 健診で「血圧が高い」「要医療」と言われた
- 家庭血圧で 135/85 mmHg を超える日が続いている
- 診察室で測ると毎回 140/90 mmHg 以上と言われる
- 糖尿病・脂質異常症・肥満も同時に指摘されている
- 大きないびき・日中の眠気があり、睡眠時無呼吸症候群が気になる
- 親や兄弟に脳卒中・心筋梗塞・若年発症の高血圧の方がいる
血圧の問題は、早めに正しい数値を知ることから始まります。生活改善で十分な方には薬を急ぎませんし、薬が必要な方にはご本人の生活に無理のない処方をご提案します。渋谷駅 C1 徒歩7分/並木橋徒歩1分のなみきばしクリニックで、総合内科専門医がご相談をお受けします。ご予約はWeb予約からどうぞ。
参考文献
- 日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025』
- 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査」
- 日本循環器学会 関連治療ガイドライン
- WHO Global report on hypertension 2023
