健診の結果表に「LDLコレステロール 高値」「要再検査」と印字されていても、体調はどこも悪くない──そのギャップに戸惑って、封筒に入れたまま数か月が過ぎてしまう方は少なくありません。LDLコレステロールは、高くなっても痛みや自覚症状が出ない数値です。だからこそ、結果表が手元にある今が、その数字の意味を確かめる良い機会になります。
このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(総合内科専門医・呼吸器専門医・アレルギー専門医)が、健診でLDLコレステロールを指摘された方に向けて、その数値が何を見ているのか、どのくらいの値なら何をすることになるのか、そして次に何をすればよいのかを整理してご説明します。脂質異常症という病気そのものの解説と治療の進め方は脂質異常症のページにまとめてありますので、この記事は結果表を受け取った直後の「最初の一歩」としてお読みいただければ幸いです。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。
健診の「LDLコレステロール」は何を見ている数値ですか?
LDLは、肝臓などからコレステロールを全身へ運ぶ粒子です。LDLコレステロール(LDL-C)は、そのLDLに含まれているコレステロールの量を示す検査値です。体に必要なはたらきですが、血液中に多い状態が続くと、LDLの粒子が血管の壁に少しずつ入り込み、動脈硬化(どうみゃくこうか:血管の壁が厚く硬くなり、内側が狭くなること)の土台になります。健診でこの数値を測るのは、症状が出る何年も前の段階で、その進み具合の手がかりをつかむためです。
健診の結果表では、LDLコレステロールに二段階の目安が置かれています。国の健診プログラムでは、120 mg/dL 以上が保健指導判定値、140 mg/dL 以上が受診勧奨判定値とされています。前者は生活習慣を見直す段階、後者は医療機関で確かめる段階、という区切りです。
| 健診結果のLDLコレステロール | 健診での位置づけ |
|---|---|
| 120 mg/dL 未満 | 健診の保健指導判定値未満※ |
| 120〜139 mg/dL | 保健指導判定値を超えるレベル(境界域高LDLコレステロール血症) |
| 140 mg/dL 以上 | 受診勧奨判定値を超えるレベル(高LDLコレステロール血症) |
※心筋梗塞・狭心症の既往、糖尿病、慢性腎臓病などがある方では、120 mg/dL 未満でも個別の管理目標を上回ることがあります。
結果表には中性脂肪やHDLコレステロールも並びますが、この記事ではLDLに絞ってご説明します。なお、LDLコレステロールの欄がなく、non-HDLコレステロール(総コレステロールからHDLコレステロールを引いた値)だけが載っていることがあります。中性脂肪が 400 mg/dL 以上のときや食後に採血したときは、LDLの計算値が不正確になるため、代わりにnon-HDLコレステロールで評価してよいことになっているためです。
コレステロールの指摘は珍しいものではありません。令和5年の国の調査では、血清総コレステロール値が 240 mg/dL 以上の方が男性で 10.1%、女性で 23.1% を占め、女性はこの10年で有意に増えています。
LDLが高いと言われたら、すぐに薬を飲むことになりますか?
多くの方は、指摘されてすぐに薬を始めることにはなりません。心筋梗塞や脳梗塞をまだ起こしておらず(一次予防といいます)、家族性高コレステロール血症(FH:生まれつきLDLが高くなる体質)や特に高いリスクがない方では、原則としてまず3〜6か月間、食事・運動・体重・喫煙などの生活習慣の改善に取り組み、その効果を確かめてから薬物療法を検討する、というのがガイドラインの基本方針だからです。国の健診プログラムにも同じ考え方が書かれています。一方、FH、著しいLDL高値、糖尿病・慢性腎臓病などがある方では、生活改善と並行して、より早い段階から薬物療法を検討することがあります。
健診の結果通知でも、LDLの値によって案内される行動が段階的に分かれています。
- LDL 180 mg/dL 以上(または中性脂肪 500 mg/dL 以上)… 早期に医療機関を受診
- LDL 140〜179 mg/dL … 生活習慣を改善する努力をしたうえで、医療機関を受診
- LDL 120〜139 mg/dL … 生活習慣の見直しを(肥満のある方は特定保健指導の活用も)
- LDL 120 mg/dL 未満で中性脂肪・HDLも基準範囲内 … 今後も健診を継続
つまり、140 mg/dL を超えていても、その場ですぐ服薬という流れにはなりません。一方で、LDLが 180 mg/dL 以上の状態が続く場合は、生活習慣の改善と並行して薬物療法を考えることがガイドラインでも示されています。生まれつきLDLが高くなる体質が背景にあると、生活の見直しだけでは目標に届きにくいためです。
健診の判定値は、医療機関で確かめる価値があるかどうかの目安であって、薬を始める基準ではありません。この2つを分けて読むと、結果表の受け止め方が落ち着きます。
同じLDLの数値でも、人によって対応が変わるのはなぜですか?
「同僚は LDL 150 で経過観察と言われたのに、自分は 145 で受診を勧められた」といったご相談をよくいただきます。これは、脂質の管理方針が LDL の数字だけでは決まらず、今後10年間に動脈硬化が原因の病気を起こす確率を見積もったうえで決める仕組みになっているためです。
日本では、日本人の追跡調査から作られた久山町スコアという方法が使われます。40〜79歳の方が対象で、次の6項目から点数を計算します。
- 性別
- 収縮期血圧(血圧の上の値)
- 糖代謝異常の有無
- LDLコレステロール
- HDLコレステロール
- 喫煙の有無
配点を見ると、LDLコレステロールは 120 未満・120〜139・140〜159・160以上の4段階で 0〜3点です。これに対し、男性であるというだけで 7点が加わります。LDLは点数を左右する6つの要素のひとつであって、そこだけで結論が出る数値ではないことが分かります。合計点と年齢から10年間のリスクを推計し、2%未満なら低リスク、2%以上10%未満なら中リスク、10%以上なら高リスクに分類します。
ただし、このスコアをすべての方に使うわけではありません。心筋梗塞・狭心症などの冠動脈疾患や、動脈硬化が原因の脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞)を起こしたことのある方は「二次予防」として別に管理します。これらの既往がなくても、糖尿病・慢性腎臓病・末梢動脈疾患(足の動脈が狭くなる病気)のある方は、高リスクの一次予防として扱います。また、家族性高コレステロール血症、40歳未満、80歳以上の方には、このスコアを適用しません。治療を始める前には、喫煙・高血圧・糖尿病・脂質異常症・慢性腎臓病・肥満・年齢と性別(男性または閉経後の女性)・家族歴という8つの危険因子も確認します。
リスクの区分によって、目指すLDLの目標値は段階的に変わります。血圧や血糖も同時に指摘された方は、高血圧のページやHbA1cの読み方もあわせてご覧いただくと、ご自身の位置がつかみやすくなります。
健診でLDLを指摘されたら、次に何をすればよいですか?
やることは大きく3つです。
1. 結果表を持って受診する
LDLの値だけを覚えて来院されるより、結果表そのものをお持ちいただくほうが判断が早く進みます。血圧・血糖・HbA1c・肝機能・体重といった他の項目も、リスクの見積もりに要るためです。過去の健診結果が残っていれば一緒にお持ちください。去年から急に上がったのか、数年かけて上がったのかで、考える原因が変わります。
2. 条件をそろえて測り直す
健診の採血は、食事の時間や体調にばらつきが出やすいものです。中性脂肪を含めて条件をそろえて比較するため、可能であれば10時間以上の絶食後に採血します。水や無糖のお茶などカロリーのない水分は飲んでいただいてかまいません。食後に採血した場合や中性脂肪が 400 mg/dL 以上の場合は、計算で求めるLDLの値が不正確になるため、non-HDLコレステロールまたはLDLの直接測定を用いて評価します。あわせて、甲状腺や腎臓・肝臓の病気、服用中の薬など、他の原因でコレステロールが上がっていないかも確認します。
診察では、アキレス腱の厚み、皮膚や腱にできる黄色いふくらみ(黄色腫)、黒目のふちの白い輪(角膜輪)といった所見も確かめます。生まれつきの体質が関係している方で見つかることがあり、触診と視診で分かります。
3. 生活の見直しを始める
3〜6か月の生活習慣の改善が方針を決める材料になるため、受診を待たずに始めていただいてかまいません。食事の内容、体を動かす習慣、体重、喫煙、飲酒のうち、いま最も動かせそうなものを1つ選ぶところからで十分です。
当院では、脂質・肝機能・血糖・HbA1cを含む血液検査、尿検査、心電図、胸部X線検査を院内で行っています。血管の硬さと詰まりの程度をみる動脈硬化検査(ABI/PWV)は、個人健診のオプションです。渋谷区の特定健診(40〜74歳)の実施医療機関でもありますので、健診の受診から結果の相談までを続けてお引き受けできます。健診の内容は健康診断のご案内をご覧ください。心臓や首の血管を画像で詳しく調べる必要があると判断した場合は、連携する医療機関へご紹介します。
コレステロール以外の項目も同時に指摘された方は健康診断で要精密検査と言われたらを、複数の生活習慣病を並行して指摘された方は生活習慣病のページもあわせてご覧ください。
診察室でよくあるご相談
以下は、複数の診療経験をもとに再構成した典型的な例です。
40代後半の男性が、会社の健診でLDLコレステロール 168 mg/dL と指摘され、結果表を持って来院されました。自覚症状はなく、数年前の健診では140台だったとのことでした。問診では、父親が50代で心筋梗塞を起こしていること、喫煙を続けていること、血圧が130台であることが分かりました。空腹時の条件をそろえて採血を組み直したところ、LDLは165 mg/dLで、中性脂肪とHDLは基準範囲内、アキレス腱の触診と皮膚の所見に目立った異常はありませんでした。リスクの見積もりでは中リスクにあたりましたが、家族歴と喫煙が重なる点を踏まえ、まず禁煙と食事内容の見直しに3か月取り組み、その間の家庭血圧も記録していただいたうえで、再評価して判断する方針としました。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 健診の結果に「要再検査」とありました。すぐに受診したほうがよいですか?
LDLが 180 mg/dL 以上の場合は、早めの受診をお勧めします。140〜179 mg/dL であれば、生活習慣の改善に取り組みながら、あまり間を置かずに一度ご相談いただくのが現実的です。120〜139 mg/dL で、心血管疾患の既往や糖尿病・慢性腎臓病などがなく、ほかの危険因子も少ない場合は、まず生活を見直し、結果表に示された時期または次回の健診で確認する方法もあります。一方、血圧・血糖・喫煙・慢性腎臓病・家族歴などが重なっている方は、この範囲でも早めに評価しておく価値があります。
Q. LDLが高いのに、まったく症状がありません。放置するとどうなりますか?
LDLコレステロールが高いこと自体では、痛みも息苦しさも出ません。症状がないまま血管の変化が進み、心筋梗塞や脳梗塞という形で初めて表面化することがあるため、健診で測る意味があります。逆に言えば、症状のない今の段階で分かったということは、対処できる時間が残っているということです。
Q. 前回の健診より急にLDLが上がりました。何が考えられますか?
体重の増加、食事内容や飲酒量の変化、運動量の減少といった生活の変化がまず考えられます。女性では閉経の前後で上がりやすく、ガイドラインでも閉経後の女性は危険因子のひとつとして扱われています。このほか、甲状腺の機能が低下している、腎臓や肝臓の病気がある、服用中の薬が影響しているといった、別の原因が隠れていることもあります。採血の条件が前回と違っただけ、ということもあるため、条件をそろえて測り直したうえで原因を考えます。
Q. LDLが高いと言われたら、何科を受診すればよいですか?
内科が窓口になります。脂質の管理は、血圧・血糖・体重・喫煙とまとめて見ていく必要があるため、これらを横断して診られる医師にご相談ください。当院の内科は総合内科専門医が担当し、健診で指摘された数値の読み解きから、再検査、治療方針のご相談までを一続きでお引き受けしています。渋谷駅C1出口から徒歩7分、並木橋交差点から徒歩1分ですので、健診の結果表をお持ちのうえお立ち寄りください。
参考文献
- 日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』第2章「表2-1 脂質異常症診断基準」/第3章「表3-2 リスク区分別脂質管理目標値」「図3-2 久山町スコアによる動脈硬化性疾患発症予測モデル」「表3-15 治療開始前に確認すべき危険因子」
- 日本動脈硬化学会『成人家族性高コレステロール血症診療ガイドライン フォーカスアップデート2025』
- 厚生労働省『標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)』別紙5「健診検査項目の保健指導判定値及び受診勧奨判定値」/「脂質異常に関するフィードバック文例集」/第2編 健診
- 厚生労働省『令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要』「血中コレステロールに関する状況」
※本ページは一般的な情報提供を目的としています。診断・治療方針は個々の状態により異なります。最終的な判断は診察のうえで行いますので、気になる症状のある方は医療機関にご相談ください。
