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骨粗鬆症

執筆:斎藤史武 公開日:2026-08-12

当院では、骨粗鬆症をはじめとした生活習慣病の診療に力を入れています。「健診で骨密度が低いと言われた」「背中が丸くなってきた・身長が縮んだ気がする」「家族が大腿骨を骨折したので自分も心配」など、不安を感じた際にはお気軽にご相談ください。

骨粗鬆症とはどんな病気ですか?

骨粗鬆症は、骨の量(骨密度)が減り、骨の質も低下することで、骨がもろくなり折れやすくなる病気です。国内では、40歳以上の患者さんが約1,590万人(女性約1,180万人、男性約410万人)と推計されており、特に閉経後の女性と高齢の方に多くみられます。

骨粗鬆症そのものには痛みなどの自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに進行するのが特徴です。多くの方は、健診で骨密度の低下を指摘されたり、転倒などの軽い衝撃で骨折(脆弱性骨折:軽い外力で起こる骨折)をして初めて診断されます。

特に、背骨(椎体)、手首、肩の付け根、足の付け根(大腿骨近位部)の骨折が起こりやすく、中でも大腿骨近位部の骨折は歩行が困難となり、寝たきりや生活の質の低下につながりやすい骨折です。日本では1年以内の死亡率が約10%と報告されており(年齢や併存疾患によって異なります)、決して軽く見てはいけない病気です。

なぜ骨粗鬆症になるのですか?

骨は一度できたら終わりではなく、古い骨を壊す働き(骨吸収)と新しい骨を作る働き(骨形成)を繰り返しながら、常に生まれ変わっています。このバランスが崩れて骨吸収が骨形成を上回ると、骨の量が徐々に減っていきます。

最も大きな要因は加齢と閉経です。女性は閉経によって骨を守る働きのある女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少するため、50歳前後から骨量が急速に減っていきます。男性も加齢とともに徐々に骨量が低下します。

このほか、運動不足、カルシウムやビタミンDの不足、やせすぎ、喫煙、過度の飲酒なども骨粗鬆症の原因となります。また、ステロイドの長期使用、関節リウマチ、糖尿病、慢性腎臓病、甲状腺・副甲状腺の病気、胃切除後など、他の病気や薬の影響で起こる骨粗鬆症(続発性骨粗鬆症)もあります。

なぜ骨粗鬆症を治療しなくてはならないのですか?

骨粗鬆症を治療する最大の目的は、骨折を防ぐことです。特に背骨や足の付け根の骨折は、痛みだけでなく、歩けなくなる、寝たきりになる、介護が必要になるといった形で生活を大きく変えてしまいます。

一度骨折を起こすと、次の骨折が起こりやすくなる「骨折の連鎖」も知られています。早い段階で骨粗鬆症に気づき、食事・運動・薬物療法を組み合わせて骨を守っていくことが、将来の寝たきりや介護を防ぐうえでとても大切です。

骨粗鬆症は自覚症状の乏しい病気ですが、適切な治療によって骨折リスクを下げられることがわかっています。「症状がないから大丈夫」ではなく、「症状が出る前から備える」という意識が重要です。

骨粗鬆症はどのように診断するのですか?

診断では、骨密度の測定と、これまでの骨折の有無、レントゲンでの背骨の評価などを組み合わせて総合的に判断します。骨密度は、腰椎と大腿骨で測定するDXA(デキサ)法が最も信頼性が高く、当院でもこの方法で評価します。健診などで行われる、かかとの超音波や手のX線による測定は、簡便に受けられる一方で診断の基準が定められていません。治療の効果を判定できる測定法もDXAだけであるため、これらで低い値を指摘された場合は、あらためてDXAで詳しく調べます。

原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版)では、低骨量をきたす他の病気や続発性骨粗鬆症を除外したうえで、以下のいずれかに当てはまる場合に骨粗鬆症と診断します。

加えて、年齢・体重・骨折歴・家族歴などから10年以内の骨折確率を推定するツール(FRAX)があります。FRAXは骨粗鬆症かどうかを診断するものではなく、将来の骨折の起こりやすさを見積もって、治療を始めるかどうかの判断を補助するものです。採血では、骨代謝マーカーや、カルシウム・ビタミンDの状態、続発性骨粗鬆症の原因となる病気がないかも確認します。

渋谷区の骨粗しょう症検診について

渋谷区では、2026年度から骨粗しょう症検診が始まりました。渋谷区にお住まいの方は、無料で受けられます。対象は、年度末の年齢が40・45・50・55・60・65・70歳の女性の区民の方です。5月中旬ごろに受診券と問診票が対象の方へ届き、受診期限は令和9年2月28日です。受診券が届いていない場合は、区へ申請できます。

当院は渋谷区の骨粗しょう症検診の実施医療機関です。骨密度の測定にはいくつかの方法があり、区の検診でもMD法とDXA法から選べます。当院ではDXA法で腰椎と大腿骨を測定します。この2か所の測定が診断の基準になるため、別の方法の検査で低い値を指摘された場合も、あらためてDXA法で評価します。

検診の対象年齢に当てはまらない方でも、骨折が心配な事情があればご相談ください。対象や実施期間の最新の情報は、渋谷区の公式ページでご確認ください。

骨粗鬆症はどのように治療するのですか?

治療の基本は、食事・運動・薬物療法の3本柱です。まずは毎日の生活習慣を整え、必要に応じてお薬を組み合わせていきます。

食事では、カルシウム(1日700〜800mg)を食事から確保することを基本とし、乳製品、小魚、大豆製品、緑黄色野菜などをバランスよくとります。ビタミンD(1日9.0μg程度)は食事と適度な日光浴で補い、たんぱく質やビタミンKも不足しないよう心がけます。サプリメントでの過剰摂取はかえって体に負担となることがあるため、慎重に判断します。

運動は、ウォーキングなど骨に適度な刺激が加わる運動と、下肢の筋力やバランスを保つ運動が有効です。あわせて、段差や滑りやすい床の見直しなど住環境の工夫も、転倒と骨折を防ぐうえで大切です。

お薬は大きく3つに分けられます。骨を壊す働きを抑える骨吸収抑制薬(ビスホスホネート製剤、抗RANKL抗体、SERMなど)、骨を作る働きを高める骨形成促進薬(テリパラチド、アバロパラチド、および骨吸収を抑える作用もあわせもつロモソズマブ)、骨の材料となるカルシウムの吸収を助ける活性型ビタミンD₃製剤です。患者さんの年齢、骨密度、骨折の有無、飲み合わせなどを考えて、最も適したお薬を選びます。

治療中は定期的に骨密度や骨代謝マーカーを確認し、副作用にも注意しながら継続します。抗RANKL抗体(デノスマブ)は、自己判断で中止したり注射の間隔が大きく空いたりすると、骨密度が急速に低下し、背骨の骨折が相次いで起こることがあります。中止する場合は、別の骨吸収抑制薬に切り替えるかどうかを含めて、必ず主治医と計画を立てます。また、まれに顎の骨のトラブル(顎骨壊死)が起こることがあるため、治療開始前には歯科を受診してください。治療中に抜歯などの処置が必要になった場合も自己判断で薬を止めず、処方医と歯科医師が骨折のリスクとお口の状態を確認して方針を決めます。

骨密度が気になったら、骨折してしまう前に

骨粗鬆症は、早く気づいて治療を始めるほど、将来の骨折や寝たきりを防ぐ効果が期待しやすい病気です。「健診で骨密度が低いと言われた」「身長が縮んだ気がする」「家族が骨折した」といった気がかりがある方は、どうぞお気軽にご相談ください。また、急に背中や腰が痛くなった、軽く転んだあとに足の付け根が痛む、といった場合は骨折している可能性があります。とくに痛みで立てない・歩けないときは、早めに医療機関を受診してください。

当院では、DXA法による骨密度測定と2025年版ガイドラインに沿った治療で、患者さん一人ひとりに合わせた骨の健康づくりをサポートいたします。

参考文献

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