「家族からいびきがうるさいと言われたけれど、いびきくらいよくあることだと思っていた」「一度『息が止まっていた』と言われたものの、自分では何も覚えていない」──そう感じて、受診を先延ばしにしている方は少なくありません。いびきは身近な症状で、お酒を飲んだ日やかぜをひいたときだけであれば一時的ないびきであることが多いものの、呼吸の停止や日中の症状を伴う場合は検査が必要です。一方で、そのいびきの陰で睡眠中の呼吸が繰り返し止まっていることがあり、両者は音を聞いただけでは見分けがつきません。
このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(総合内科専門医・呼吸器専門医・アレルギー専門医)が、いびきと睡眠時無呼吸症候群はどこが違うのか、どのようなサインがあれば検査に進んだほうがよいのか、受診の目安と検査の進め方までをご説明します。ご自身のいびきが気になっている方や、ご家族の呼吸が止まっている場面を見て心配になった方の判断材料になればと願っています。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。
いびきと睡眠時無呼吸症候群は何が違うのですか?
違いは、いびきの音だけなのか、それとも睡眠中に気道の狭まりによる無呼吸や低呼吸が繰り返され、睡眠や体に影響しているのか、という点です。
いびきは、狭くなった咽頭(いんとう:のどの奥の空気の通り道)を空気が通るときに、粘膜が振動して出る音です。眠るとのどの筋肉がゆるむため、咽頭はふだんより狭くなります。この狭まりが「音が出る」ところで止まっていれば、いびきの音だけがある状態で、これを単純いびき症と呼びます。
一方、狭まりがさらに強くなると、空気の流れが完全に止まる「無呼吸」(10秒以上)や、著しく少なくなる「低呼吸」が起こります。これが睡眠中に繰り返し起こるのが閉塞性睡眠時無呼吸(へいそくせいすいみんじむこきゅう)です。精密検査(PSG)では、睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数であるAHI(無呼吸低呼吸指数)を用います。簡易検査では、記録時間をもとにしたREI(呼吸イベント指数)などの指標が用いられます。成人では、AHIが5以上で、日中の眠気や目撃された無呼吸などの症状、または高血圧などの関連する病気を伴う場合に、閉塞性睡眠時無呼吸症候群と診断します。AHIが15以上であれば、症状がはっきりしない場合でも診断の対象になります。重症度は一般に、5以上15未満を軽症、15以上30未満を中等症、30以上を重症と分類します。
頻度は定義や年齢によって異なりますが、日中の強い眠気を伴う睡眠時無呼吸症候群は男性の約5%、女性の約2〜3%とされます。検査上、中等症以上の睡眠関連呼吸障害がみられる方はこれより多く、決してまれな病気ではありません。病気そのものの全体像は睡眠時無呼吸症候群のページにまとめています。
単純いびきと睡眠時無呼吸を見分けるサインはありますか?
ご自身と周囲の方が気づける手がかりは、大きく4つあります。
- 睡眠中に呼吸が止まっている、息が詰まるようだと指摘される
- 睡眠時間は足りているはずなのに、日中に強い眠気がある
- 起床時に頭痛や頭の重さがある
- 夜中にトイレで何度も目が覚める(夜間頻尿)
このほか、朝すっきり目覚められない、日中の倦怠感が続く、といった訴えも重なります。
なかでも重みが違うのが1つ目です。眠っている間の自分の呼吸は本人には分かりようがないため、同居する方の目撃が、もっとも実用的な手がかりになります。いびきが急に止まり、しばらくして大きな音とともに呼吸が再開する──この波があるかどうかを見てもらうと、判断の助けになります。
日中の眠気については、エプワース眠気尺度という質問票が広く使われており、合計11点以上が日中の過度の眠気の目安とされています。ただし眠気の原因は睡眠時無呼吸に限りません。睡眠時間そのものの不足、服用中のお薬、体内時計のずれなども関係します。眠気が主なお悩みの方は日中の強い眠気のページもあわせてご覧ください。
いびきの音が小さければ、無呼吸の心配はないのですか?
音の大きさから重症度を推し量ることはできません。ここは誤解の多いところです。
呼吸が完全に止まっている間、いびきの音はむしろ消えます。「静かになったから落ち着いた」と見えて、実際には空気が通っていない、ということが起こります。逆に、大きないびきが一晩中続いていても、検査をすると無呼吸はほとんどないという方もいらっしゃいます。
同じ理由から、いびきの音を小さくすることだけを目的とした処置には注意が必要です。音が減っても背後の無呼吸が残っていれば、問題が見えにくくなるだけになります。いびきの治療を受けたあとは、検査で呼吸の状態を確かめておくことが勧められています。
また、症状がはっきりしないまま経過することもあります。眠気を自覚していない方が、検査で中等症以上と分かる場合もあり、自覚症状が軽いことは睡眠時無呼吸を否定する根拠にはなりません。
どのようなときに受診したほうがよいですか。何科が適していますか?
次のいずれかに当てはまる場合は、一度検査を受けておくことをお勧めします。
- 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された
- 日中の眠気が強く、会議中や運転中に眠気を感じる
- 起床時の頭痛、夜間の頻尿、熟睡感のなさが続いている
- 血圧が高い、または血圧のお薬を飲んでも下がりにくい
- 体重が増えてから、いびきが大きくなった
受診先は症状によって変わります。いびきの音だけがお悩みで、鼻づまりや扁桃(へんとう)の腫れが気になる場合は、耳鼻咽喉科が適しています。呼吸が止まる、日中の眠気がある、高血圧などの持病があるといった場合は、呼吸器内科での検査が向いています。
睡眠時無呼吸、とくに治療していない中等症から重症の場合は、高血圧・脳卒中・心筋梗塞などの心血管の病気と関連することが分かっています。リスクの大きさは重症度や年齢、併存する病気によって異なります。怖がるためではなく、調べて重症度が分かれば手の打ちようがある、という意味で受け止めてください。放置した場合に何が起こるかは家族にいびきを指摘されたらで詳しく取り上げています。
検査を受ければ、どちらなのかはっきりしますか?
はい。検査によって、単純いびき症なのか、睡眠時無呼吸があるのかを判断できます。ただし、簡易検査では無呼吸・低呼吸を少なく見積もることがあり、結果が正常または軽症でも、目撃された無呼吸などから疑いが強い場合は精密検査(PSG)で詳しく調べます。
検査は2種類あります。ひとつは携帯型の装置を使う簡易検査で、指と鼻にセンサーを付けて眠るだけの検査です。もうひとつは睡眠ポリグラフ検査(PSG:ポリソムノグラフィー)で、脳波を含めて睡眠の質まで詳しく調べます。以前、PSGは入院して行うのが一般的でしたが、近年は自宅で受けられるようになりました。当院では簡易検査も精密検査も自宅で行っており、必要に応じて入院で検査を行う医療機関へのご紹介もしています。検査の流れは睡眠時無呼吸の自宅検査のページでご案内しています。
診断がついたあとの治療は、重症度によって変わります。中等症から重症では、CPAP(シーパップ:睡眠中に鼻マスクから空気を送り、気道がふさがるのを防ぐ装置)が中心になります。CPAPを保険診療で導入する目安は、2026年6月以降、一般に精密検査ではAHI 15以上、簡易検査ではREIまたはAHI 30以上です。ただし、数値だけでなく、日中の眠気や起床時の頭痛などが強く、日常生活に支障があることなどの要件も含めて判断します。当院では診断からCPAPの導入・継続まで一貫して対応しています。口腔内装置(マウスピース)は歯科での取り扱いとなるため、診断した医師から診療情報提供を行う形でご案内します。呼吸器の診療全体については呼吸器内科のご案内をご覧ください。
診察室でよくあるご相談
以下は、複数の診療経験をもとに再構成した典型的な例です。
40代の男性が、配偶者から「いびきの途中で息が止まっている」と言われて来院されました。問診では、日中の眠気は自覚しておらず、気になるのは朝の頭の重さと、夜中に2回ほどトイレに起きることでした。健診では血圧が高めと指摘されていました。ご本人は「眠気がないので違うと思う」とおっしゃいましたが、目撃された無呼吸に加えて朝の症状と夜間頻尿がそろっていたため、自宅での検査をご提案しました。自宅での精密検査の結果は中等症の閉塞性睡眠時無呼吸でした。朝の頭の重さや夜間頻尿が生活に影響していることと精密検査の所見を踏まえ、CPAPや口腔内装置などの治療の選択肢をご説明し、相談のうえCPAPを導入して、血圧の経過も併せて診ています。眠気の自覚がないまま検査で見つかる方は珍しくなく、症状の有無だけで判断しないほうがよい理由がここにあります。
よくあるご質問(FAQ)
Q. いびきをかいていれば、睡眠時無呼吸症候群ということですか? そうとは限りません。検査をしても無呼吸や低呼吸がほとんどみられない、単純いびき症の方もいらっしゃいます。逆に、いびきが目立たなくても無呼吸がある場合があり、音だけでは区別がつきません。
Q. 家族に無呼吸を指摘されましたが、自分では眠気を感じません。検査は必要ですか? 眠気の自覚がなくても検査をお勧めします。睡眠時無呼吸では症状がはっきりしないことがあり、眠気の有無で否定はできません。目撃された無呼吸は、それだけで検査に進む理由になります。
Q. 検査は入院が必要ですか? 当院では簡易検査も精密検査(PSG)も自宅で受けていただけます。ご自宅でセンサーを装着し、いつもどおりに眠っていただく形です。入院での検査が望ましいと判断した場合は、実施している医療機関にご紹介します。
Q. 一人暮らしで、呼吸が止まっているかを見てもらえません。どうすればよいですか? 就寝中の音を録音する、いびきを記録するアプリを使う、といった方法が手がかりになります。ただし、これらは目安であり、診断の代わりにはなりません。朝の頭痛・日中の眠気・夜間頻尿のいずれかが続いているようであれば、検査でお確かめください。
Q. お酒を飲んだ日だけ、いびきが大きくなります。受診は必要ですか? 飲酒したときやかぜをひいたときだけのいびきは、一時的ないびきであることが多いとされています。飲まない日でもいびきが続く、呼吸が止まっていると言われた、朝の頭痛や日中の眠気があるという場合は、検査でお確かめください。
参考文献
- 日本呼吸器学会『睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020』南江堂
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定」関連資料(在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料の見直し)
- Kapur VK, et al. Clinical practice guideline for diagnostic testing for adult obstructive sleep apnea: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. J Clin Sleep Med. 2017;13(3):479-504.
- 日本呼吸器学会「呼吸器の病気 I-05 睡眠時無呼吸症候群」
- 日本呼吸器学会 呼吸器Q&A「Q14. 夜、いびきをかく、と言われました。」
- 日本呼吸器学会 呼吸器Q&A「Q15. 夜、呼吸、いびきが止まると言われました。」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠時無呼吸症候群 / SAS」
- 竹上未紗、笽島茂、山崎新、中山健夫、福原俊一「The Epworth Sleepiness Scale の性・年齢階級別得点分布と日中の過度の眠気の有症割合の推定──地域住民を対象とした調査」日本公衆衛生雑誌 2005;52(2):137-145
※本ページは一般的な情報提供を目的としています。診断・治療方針は個々の状態により異なります。最終的な判断は診察のうえで行いますので、気になる症状のある方は医療機関にご相談ください。
