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中性脂肪が高いとどうなる?コレステロールとの違い

執筆:斎藤史武 公開日:2026-09-09

健診の結果表で、コレステロールは問題ないのに中性脂肪だけが赤字になっている。あるいは去年は正常だったのに、今年だけ大きく跳ね上がっている。「これは深刻な数字なのか、前日の食事のせいなのか」と迷ったまま判断を先延ばしにしている方は少なくありません。中性脂肪は、血液の脂質の中でも生活の影響がとりわけ表に出やすい数値です。読み方を知っておくと、結果表の受け止め方が変わります。

このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(総合内科専門医・呼吸器専門医・アレルギー専門医)が、中性脂肪とコレステロールが体の中で果たす役割の違い、健診の数値の区切り、採血の条件で数値が動く理由、そして次に何をすればよいのかを整理してご説明します。脂質異常症という病気そのものの解説と治療の進め方は脂質異常症のページにまとめてありますので、この記事は結果表を受け取った直後の手がかりとしてお読みいただければ幸いです。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。

中性脂肪とコレステロールは何が違うのですか?

どちらも血液中の脂質ですが、体の中での役目が異なります。

コレステロールは、細胞を構成する材料であり、ホルモンや胆汁酸(たんじゅうさん:脂肪の消化を助ける液の成分)のもとにもなります。いわば体をつくる部品です。

一方の中性脂肪(トリグリセライド)は、体内の脂質のおよそ9割を占めるエネルギー源です。必要に応じて分解されて活動の燃料として使われ、使い切れなかった分は体脂肪として蓄えられます。食べた量と動いた量の差が、そのまま数値に出やすい脂質です。

運ばれ方も違います。血液中の脂質はリポ蛋白(りぽたんぱく)という粒子に載って移動し、コレステロールを多く含む粒子がLDLやHDL、中性脂肪を多く含む粒子がカイロミクロンやVLDLです。

実感しやすい違いは、数値の動きやすさです。中性脂肪は食事の影響を受けやすく、食後には上がります。これに対して総コレステロールやLDLコレステロール、HDLコレステロールは採血の時間による差が小さく、早朝の空腹時と比べた低下率は平均5%前後にとどまります。この違いから、中性脂肪だけが空腹時と食後で別の基準値を持ちます。LDLコレステロールの読み方についてはLDLコレステロールが高いと言われたらをご覧ください。

健診の中性脂肪は、どこからが「高い」ことになりますか?

診断の基準は、空腹時の採血なら150 mg/dL以上、食事の条件がそろっていない随時の採血なら175 mg/dL以上です。ここでいう空腹時とは、基本的に10時間以上絶食した状態です。水やお茶などカロリーのない水分は飲んでいただいてかまいません。絶食の条件が確認できないときは随時採血として扱います。

健診の結果表では、これに医療機関へつなぐための区切りが加わります。次の表は、国の特定健診プログラムでの位置づけです。

健診の中性脂肪国の特定健診プログラムでの位置づけ
空腹時 150 mg/dL 未満(随時 175 mg/dL 未満)基準範囲内
空腹時 150〜299 mg/dL(随時 175〜299 mg/dL)保健指導判定値を超えるレベル
300 mg/dL 以上受診勧奨判定値を超えるレベル

健診機関によって判定記号は異なります。日本人間ドック・予防医療学会の2026年版判定では、空腹時の中性脂肪150〜299 mg/dLがB(軽度異常)、300〜499 mg/dLがC(要再検査・生活改善)、500 mg/dL以上がD(要精密検査・治療)です。

前者は生活習慣を見直す段階、後者は医療機関で確かめる段階、という区切りです。300 mg/dLを超えていても、その日から薬が始まるわけではありません。心筋梗塞や脳梗塞をまだ起こしていない方で、300〜499 mg/dLかつ急性膵炎の懸念や糖尿病・慢性腎臓病などの高リスクの病態がない場合は、まず3〜6か月かけて生活習慣の改善に取り組み、その効果を見てから薬物療法を検討することが多くあります。一方、500 mg/dL以上では急性膵炎の予防も考える必要があるため、早めに原因を調べ、生活改善と並行して薬物療法の必要性を判断します。

なお、中性脂肪が400 mg/dL以上のときや食後に採血したときは、計算で求めるLDLコレステロール(Friedewald式)は用いません。LDLの直接測定またはnon-HDLコレステロール(総コレステロールからHDLコレステロールを引いた値)で評価するため、結果表にLDLの欄がなくnon-HDLコレステロールだけが載っていることがあり、記載は健診機関によって異なります。

中性脂肪が高いと、体に何が起きますか?

中性脂肪が高いこと自体では、痛みも息苦しさも出ません。困るのは、症状のないまま血管の変化が進むことです。中性脂肪そのものがLDLコレステロールと同じ形で血管の壁にたまるわけではありませんが、中性脂肪が高い状態では、動脈硬化に関わるレムナント粒子(中性脂肪を運ぶ粒子が分解される途中でできる粒子)や糖代謝の異常を伴うことが多く、将来の心筋梗塞や脳梗塞のリスクと関連します。ガイドラインでは、空腹時か随時かにかかわらず、中性脂肪の値が将来の冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症)や脳梗塞の発症を予測すると示されています。健診の結果通知でも、300〜499 mg/dLの方には「150 mg/dL未満の方と比べて約2倍、心筋梗塞や狭心症になりやすい」と伝えることになっています。

500 mg/dL以上の高い値が続く場合は、動脈硬化とは別に急性膵炎(きゅうせいすいえん:膵臓に急激な炎症が起きる病気)の危険が加わります。まれではありますが重い経過をたどることがあるため、この水準では空腹時か随時かを問わず、早めの受診をお勧めしています。なお、強い上腹部の痛みや背中に抜ける痛み、繰り返す嘔吐がある場合は、急性膵炎などの可能性があるため、健診の数値の高さにかかわらず当日中に医療機関へご相談ください。

一方で、中性脂肪には心強い性質もあります。生活の影響を受けやすい数値は、生活を変えたときに動きやすい数値でもあります。減量や節酒、有酸素運動で中性脂肪が下がることは、複数の研究をまとめた解析でも確かめられています。肝臓に脂肪がたまる脂肪肝と重なっている方は、そちらの改善と同じ取り組みが中性脂肪にも働きます。

採血の条件で中性脂肪の数値が変わるのはなぜですか?

食事をとると、腸で吸収された脂肪がカイロミクロンという粒子になって血液中に増えます。その結果、中性脂肪の値は食後に上がります。前の日の夜の飲酒も、翌朝まで中性脂肪の高い状態を長引かせることがあります。前日の食事会や、健診の朝に口にした飲み物が、そのまま数値に乗ってくるわけです。

国の健診の手順書でも、この点は具体的に定められています。前日の飲酒と激しい運動は控えること、午前の健診なら10時間以上は水以外をとらないこと、午後の健診なら朝食を軽めにしてそれ以降は水だけにすること、やむを得ず空腹時以外に採血する場合は食事開始から3.5時間以降に行うこと、といった内容です。当院の個人健診でも、前日の飲酒と激しい運動を控えていただくようご案内しています。採血の直前は、5分ほど座って休んでから臨むほうが値が安定します。

つまり、一度の数値だけで結論を出す必要はありません。条件をそろえて測り直すと、判定の位置が変わることがあります。まずは「その値が何時間の絶食で測られたものか」を確かめるところから始めてください。ただし、食後に測った中性脂肪の高値それ自体も動脈硬化のリスクを示す情報であり、「食後だったから気にしなくてよい」という意味ではありません。

中性脂肪の数値を下げるために、まず何から始めればよいですか?

取り組みは大きく3つです。

1. 食べ方と飲み方を見直す

中性脂肪が高い方の食事では、まず総エネルギー量を体格に見合う範囲に整えます。そのうえで、ごはんやパン、麺類などの炭水化物の比率をやや低めにし、アルコールの飲みすぎを抑えます。アルコールの目安はエタノール換算で1日25g以下、およそ日本酒1合、ビール中瓶1本、ワイン2杯に相当する量までとされています。あわせて休肝日を設けてください。見落とされやすいのが果物と果糖を含む加工食品で、これらのとりすぎは中性脂肪を押し上げることがあります。反対に、青魚に多く含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸は増やしたい脂質です。喫煙も中性脂肪を上げる要因ですので、禁煙は数値の面からも意味を持ちます。

2. 体重と運動を動かす

体重またはウエスト周囲径を3%以上減らすことを、3〜6か月の目標に置きます。3%は70kgの方で約2kg、無理のない範囲で始められる幅です。歩行や速歩などの有酸素運動を組み合わせると、中性脂肪はさらに下がりやすくなります。

3. 期間を決めて測り直す

生活の見直しは、期限を決めて評価します。300〜499 mg/dLの方は3〜6か月以内の再検査が目安です。再検査では、糖尿病や甲状腺・腎臓・肝臓の病気、飲酒、服用中の薬など、中性脂肪が上がる別の原因がないかも確認します。500 mg/dL以上の方、あるいは糖尿病や高血圧、慢性腎臓病などをすでに指摘されている方は、生活の見直しと並行して早めにご相談ください。血糖の指摘が重なっている方はHbA1cの読み方、肝機能の数値も一緒に指摘された方は肝機能の数値の読み方もあわせてご覧いただくと、結果表全体の見取り図がつかめます。

当院では、脂質・肝機能・血糖・HbA1cを含む血液検査、尿検査、心電図、胸部X線検査を院内で行っています。血管の硬さをみる動脈硬化検査(ABI/PWV)は個人健診のオプションです。渋谷区の特定健診(40〜74歳)の実施医療機関でもあり、健診の受診から結果のご相談までを続けてお引き受けできます。健診の内容は健康診断のご案内をご覧ください。空腹時の中性脂肪が500 mg/dL以上の状態が続くなど、より詳しい評価が必要と判断した場合は、連携する医療機関へご紹介します。複数の項目を同時に指摘された方は健康診断で要精密検査と言われたらを、生活習慣病を並行して指摘された方は生活習慣病のページもご参照ください。

診察室でよくあるご相談

以下は、複数の診療経験をもとに再構成した典型的な例です。

30代後半の男性が、会社の健診で中性脂肪 320 mg/dL と指摘され、結果表を持って来院されました。自覚症状はなく、コレステロールの項目はいずれも基準範囲内でした。問診では、健診が午後の枠で昼食後の採血だったこと、前日の夜に会食があり飲酒量が普段より多かったこと、この1年で体重が2kg増えていることが分かりました。条件をそろえて空腹時に採り直したところ、中性脂肪は 210 mg/dL でした。前回より下がったとはいえ基準は外れているため、飲酒の頻度を週あたりで数え直していただき、夕食の主食量と締めの一杯の見直し、通勤での速歩を3か月続けて再評価する方針としました。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 健診の前日にお酒を飲みました。中性脂肪の数値に影響しますか?

影響する場合があります。前日夜の飲酒は、翌朝まで中性脂肪の高い状態を長引かせることがあります。健診の案内で前日の飲酒を控えるよう書かれているのはこのためです。心当たりのある方は受診時にお伝えください。条件をそろえて測り直したうえで判断します。ただし、飲酒が続いている状態そのものが中性脂肪を上げる要因ですので、「前日のせいだから問題ない」と結論づけるのは早すぎます。

Q. 中性脂肪だけが高く、コレステロールは正常でした。そのままにしてよいですか?

中性脂肪の高値は、それ単独でも将来の心筋梗塞や脳梗塞の発症と関連します。コレステロールが基準範囲内でも、経過を見ておく価値はあります。300 mg/dL未満で他に指摘がない場合は、まず生活の見直しから始めて次の健診で確認する形でも差し支えありません。血圧や血糖、喫煙、体重増加が重なる方は、同じ数値でも早めの評価をお勧めします。

Q. 中性脂肪が高いと言われたら、すぐに薬を飲むことになりますか?

多くの方は、指摘されてすぐ服薬にはなりません。心筋梗塞などをまだ起こしておらず、500 mg/dL未満で糖尿病・慢性腎臓病などの高リスクの病態がない方では、まず3〜6か月間の生活習慣の改善に取り組み、その効果を確かめてから薬を検討します。500 mg/dL以上の方は、急性膵炎の予防の観点から、生活改善と並行して早めに薬物療法の必要性を判断します。中性脂肪は生活の影響が出やすい数値のため、この期間で目標に届く方もいらっしゃいます。どの薬を使うかは、体質や他の病気、腎機能や肝機能を確認したうえで診察でご説明します。

Q. 中性脂肪が高いと言われたら、何科を受診すればよいですか?

内科が窓口になります。中性脂肪は、体重・飲酒・血糖・肝機能と互いに影響し合う数値ですので、これらをまとめて診られる医師にご相談ください。当院の内科は総合内科専門医が担当し、数値の読み解きから再検査、治療方針のご相談までをお引き受けしています。渋谷駅C1出口から徒歩7分、並木橋交差点から徒歩1分ですので、健診の結果表をお持ちのうえお立ち寄りください。

参考文献

※本ページは一般的な情報提供を目的としています。診断・治療方針は個々の状態により異なります。最終的な判断は診察のうえで行いますので、気になる症状のある方は医療機関にご相談ください。

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