健診の結果表に「尿酸 高値」と印字されていても、足が痛むわけでも体調が変わるわけでもありません。痛風は「ある日突然、足の親指が痛くなる病気」という印象が強いぶん、痛みが来るまでは何も起きていないように感じられます。けれども尿酸値は、症状のない今だからこそ確かめておく価値のある数値です。
このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(総合内科専門医・呼吸器専門医・アレルギー専門医)が、尿酸値が高いまま時間が過ぎるとき体の中では何が進むのか、痛風以外のどこへ影響するのか、数値をどう読み分け、次に何をすればよいのかを整理してご説明します。高尿酸血症という病気そのものの原因・検査・治療の進め方は高尿酸血症のページにまとめてありますので、この記事は結果表を受け取った直後の入口としてお読みいただければ幸いです。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。
痛風の発作がなくても、体の中では何が進んでいますか?
尿酸は、血液に溶けにくい物質です。結晶になるかどうかの分かれ目は溶けやすさで決まり、体温にあたる37℃では6.8mg/dL程度、体の中では通常7.0mg/dLあたりまでしか溶けません。高尿酸血症を「性別・年齢を問わず血清尿酸値が7.0mg/dLを超える状態」と定義しているのは、この溶ける限界を線に置いているからです。病気かどうかの境目というより、溶けきらなくなる境目だと考えると分かりやすいでしょう。
7.0mg/dLを超える状態が続くと、尿酸塩の結晶が関節や組織に沈着しやすくなります。ただし、高尿酸血症のすべての方に結晶の沈着や痛風発作が起こるわけではありません。近年は関節エコーやデュアルエナジーCT(尿酸の結晶を映し分けられるCT)といった検査が進み、痛風発作を一度も起こしたことのない方の関節内にも、結晶の沈着が見つかることがあると示されてきました。痛みが出ていないことと、体の中で何も起きていないことは同じではありません。
痛風発作は、たまった結晶が炎症の引き金を引いたときに起こります。典型的には足の親指の付け根が夜間から早朝に痛みだし、24時間以内に痛みのピークを迎え、10日ほどで自然に軽くなります。治まったあとは、また何ごともなかったように痛みのない期間が続きます。発作を繰り返す方では、一部が発作の間隔の短縮、慢性の関節炎、結晶のかたまり(痛風結節)へ進むことがあります。
一方で、発作がないからといって、結晶の量が少ないとも限りません。痛風を発症した方では、尿酸を下げる治療が発作の再発予防に有効であることが分かっています。発作のない方については、尿酸値が高い状態が続いているかや合併症の有無を確かめ、治療の必要性を個別に判断します。健診で指摘された今は、その確認を始めるのに適したタイミングです。
尿酸値が高いままだと、痛風以外にはどこへ影響しますか?
はじめに腎臓と尿の通り道です。尿酸の大半は腎臓から尿へ出ていくため、尿路は尿酸の濃度が高くなりやすい場所です。尿酸結石ができやすくなる条件は3つあり、①尿の量が少ない(水分の不足) ②尿が酸性に傾いた状態が続く ③尿に出る尿酸の量が多い、が挙げられます。高尿酸血症や痛風の方は尿が酸性に傾きやすく、この条件がそろいやすいと考えられています。できやすくなるのは尿酸の結石にとどまりません。尿路結石で最も多いシュウ酸カルシウムの結石も作られやすくなります。
結石も、痛みが出るまで気づかれないことがあります。国内の単施設で痛風の患者さん463人をCTで調べた報告では、結石が見つかった157人のうち68%は、それまで尿路結石を指摘されたことがありませんでした。
腎臓の働きそのものとの関連も指摘されています。主に中年層を対象とした15の追跡調査(およそ9万9千人分)をまとめた解析では、血清尿酸値が1mg/dL高いことが、慢性腎臓病を発症する割合の1.22倍の上昇と関連していました。ただし、これは「関連がみられる」という段階の話です。尿酸を薬で下げれば腎臓が守れるのかどうかは、現時点の研究では結論が出ていません。尿酸値は腎臓や血管の状態を映すサインのひとつと受け止め、腎機能や尿の検査もあわせて確認していくのが現実的な向き合い方です。
もうひとつ知っておいていただきたいのが、重なりやすさです。高尿酸血症や痛風の方では、高血圧・肥満・耐糖能異常・脂質異常症などが重なりやすく、1人に複数が重なることも少なくありません。ほかの項目も指摘されている方は生活習慣病のページを、血糖や脂質の数値が気になる方はHbA1cが高いと言われたら・LDLコレステロールが高いと言われたらもあわせてご覧ください。
尿酸値がいくつなら、どう考えればよいですか?
尿酸値には、性格の違う線が並んでいます。混同すると、必要以上に不安になったり、逆に見過ごしたりします。
| 数値 | どういう線か |
|---|---|
| 7.0mg/dL 超 | 高尿酸血症という状態にあたる線(尿酸が溶けきる限界) |
| 7.1〜7.9mg/dL | 健診で「軽度異常」(B)に区分される目安 |
| 8.0〜8.9mg/dL | 健診で「要再検査・生活改善」(C)に区分される目安 |
| 9.0mg/dL 以上 | 健診で「要精密検査・治療」(D)に区分される目安 |
※健診の判定は高値側のみを示しています(2.0mg/dL以下も要再検査の区分です)。
そのうえで、薬を使うかどうかの考え方は別にあります。ガイドラインでは、痛風発作や痛風結節のない方について、腎障害・尿路結石・高血圧・虚血性心疾患・糖尿病・メタボリックシンドロームなどの合併症があれば8.0mg/dL以上、合併症がなければ9.0mg/dL以上を、薬物療法を「考慮する」目安としています。これは薬を飲む基準ではなく、話し合いを始める目安です。ガイドライン自身も、適応は慎重に判断し、内容を説明して納得いただいたうえで始めることが望ましいとしています。数値にかかわらず勧められるのは、生活習慣の見直しのほうです。
女性についても、定義の7.0mg/dLは男女共通です。ただし女性では、7.0mg/dL以下であっても数値が上がるにつれて生活習慣病のリスクが高くなります。この場合、尿酸を下げる薬の対象にはなりませんが、背景に隠れた病気がないかを調べ、生活を見直す意味はあります。
なお、国が定める特定健診(40〜74歳)の標準項目に尿酸は含まれていませんが、保険者や自治体が独自に追加することがあります。渋谷区の健康診査では尿酸を測定します。会社の健診や人間ドックでも測られることの多い項目ですが、健診の種類によって異なりますので、結果表に尿酸の欄が見当たらない場合は、そもそも測っていないと考えられます。
尿酸値を指摘されたら、次に何をすればよいですか?
1. もう一度測る
尿酸値は動く数値です。測定そのものに±0.1〜0.2mg/dLのばらつきがあり、1日のなかでも0.5mg/dL程度は変動します(明け方が高く、夕方に下がります)。加えて、飲酒や短時間の激しい運動、プリン体の多い食事のあとには0.5〜2.0mg/dLほど上がることがあります。ガイドラインも、7.0mg/dL前後の数値では何回か検査すること、高い状態が続いているかは複数回の測定で判断することを勧めています。スクリーニングで測るだけなら空腹である必要はありませんので、健診の前夜に飲む機会があった方は、条件を変えて測り直す価値があります。
2. 結果表を持って受診する
数値だけを覚えて来院されるより、結果表そのものをお持ちいただくほうが判断が早く進みます。腎機能(クレアチニン・eGFR)、尿検査、血圧、血糖、脂質、体重が同じ紙に並んでいるためです。過去の結果があれば一緒にお持ちください。今年だけ上がったのか、数年続けて7台なのかで、考えることが変わります。
3. 動かせるところから生活を変える
- プリン体は1日400mg程度を目安にします。プリン体は水に溶けるため、煮汁を飲まないだけでも摂取量は減らせます
- お酒は、飲まない日を設け、できるだけ減らします。種類を問わず量を決め、尿酸の管理上の上限の目安は1日に日本酒1合、ビール350〜500mL、ウイスキー60mL程度です(「飲んでよい量」ではありません)。アルコールのなかではビールが最も痛風のリスクを上げます
- 果糖の多い甘い飲み物を減らします。ジュースやスポーツドリンクを水やお茶に置き換えるだけでも変わります
- 水分をとります。尿路結石を防ぐ観点では1日の尿量2,000mL以上が目標とされます。ただし腎臓や心臓に持病のある方は量を個別に決める必要がありますので、自己判断で増やさずご相談ください
- 体重が増えている方は、緩やかな減量から取りかかります(肥満症)
受診をお考えいただきたいのは、7.0mg/dLを超えていると指摘された方、8.0mg/dL以上が続いている方や9.0mg/dL以上と言われた方、過去に痛風発作や尿路結石を起こしたことのある方、高血圧・脂質異常症・糖尿病などを一緒に指摘されている方です。ただし、関節が急に赤く腫れて強く痛み、発熱を伴う場合は、痛風以外に細菌による関節の感染などの可能性もあります。この場合は当日中に医療機関へご相談ください。
当院では、尿酸・腎機能・肝機能・脂質・血糖・HbA1cを含む血液検査と尿検査、心電図、胸部X線検査を院内で行っています。渋谷区の特定健診の実施医療機関で、個人健診では動脈硬化検査(ABI/PWV)もオプションでご用意しています。健診の内容は健康診断のご案内をご覧ください。関節の中の結晶を画像で確かめる検査や関節液の検査、腹部の画像検査が必要な場合は、連携する医療機関へご紹介します。
診察室でよくあるご相談
以下は、複数の診療経験をもとに再構成した典型的な例です。
40代の男性が、会社の健診で尿酸値8.4mg/dLと指摘され、結果表を持って来院されました。関節が痛んだことは一度もなく、過去3年の結果を見ると7台後半が続いていました。問診では、週5日の晩酌がビール中心であること、体重が3年で5kg増えていることが分かりました。院内の採血で尿酸・腎機能・脂質・血糖をまとめて確認したところ、尿酸値は8.1mg/dLで、腎機能と尿検査に目立った異常はなく、中性脂肪と血圧が境界の域にありました。1回だけの外れ値ではないと判断し、まず飲酒量と体重を動かす方針として3か月後に採血で確かめることとし、そのあいだに関節の痛みや背中・脇腹の痛みが出た場合は待たずに受診していただくようお伝えしました。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 尿酸値が高いだけで、痛風の発作は一度もありません。放置してはいけませんか?
発作のない時期でも、関節の中に結晶が沈着していることが画像の検査で見つかる場合があります。とはいえ、すぐ薬という話になるわけではありません。まずは数値が本当に続いているのかを確かめ、腎機能・尿・ほかの生活習慣病の項目とあわせて評価するところから始めます。
Q. 7.0mg/dLを超えたら、薬を飲むことになりますか?
多くの場合はそうなりません。7.0mg/dL超は高尿酸血症という状態を指す線であって、薬を始める線ではないためです。痛風発作や痛風結節のない方では、合併症の有無に応じて8.0mg/dL以上または9.0mg/dL以上が薬物療法を考慮する目安とされており、その場合も相談のうえで決めていきます。
Q. ビール以外なら大丈夫ですか。「プリン体ゼロ」の表示があれば安心ですか?
アルコールは種類を問わず尿酸値を上げます。ビールはプリン体を含むぶんリスクが高い、ということであって、蒸留酒や「プリン体ゼロ」の飲料でも、量が増えれば影響します。表示ではなく、1日にどれだけ飲むかで考えてください。
Q. 尿酸値が高いと言われたら、何科を受診すればよいですか?
内科が窓口になります。尿酸は、腎機能・血圧・血糖・脂質・体重と一緒に見て初めて意味がはっきりする数値だからです。健診で複数の項目を指摘された方は健康診断で要精密検査と言われたらもご覧ください。当院の内科は総合内科専門医が担当し、渋谷駅C1出口から徒歩7分、並木橋交差点から徒歩1分です。結果表をお持ちのうえお立ち寄りください。
参考文献
- 日本痛風・尿酸核酸学会(旧:日本痛風・核酸代謝学会)『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』診断と治療社、2018年 ― 「高尿酸血症・痛風の基本的特徴」「高尿酸血症の定義」「高尿酸血症のリスク(腎障害・尿路結石)」「尿酸の測定」「痛風の診断」「治療」「生活指導」の各項
- 日本痛風・尿酸核酸学会『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版 2022年追補版』診断と治療社、2022年
- 日本人間ドック・予防医療学会「判定区分(2026年4月1日改定)」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「特定健康診査の検査項目」/渋谷区「健康診査」
- Shimizu T, et al. Prevalence of kidney stones in patients with gout: a CT study. J Urol. 2013
- Li L, et al. Is hyperuricemia an independent risk factor for new-onset chronic kidney disease?: A systematic review and meta-analysis. PLOS ONE. 2014
※本ページは一般的な情報提供を目的としています。診断・治療方針は個々の状態により異なります。最終的な判断は診察のうえで行いますので、気になる症状のある方は医療機関にご相談ください。
