「唇のはしがピリピリすると思ったら、また水ぶくれができた」──ヘルペスは、疲れがたまったときに限って現れる、やっかいな繰り返す病気です。何度も経験している方ほど「またか」と市販薬や我慢でやり過ごしがちですが、今は「繰り返す人のための治療」も選べるようになっています。
このページでは、なみきばしクリニックの皮膚科担当医(日本皮膚科学会 皮膚科専門医)が、ヘルペスの原因と治療、再発への備え方をご説明します。ご相談はWeb予約からどうぞ。
Q. ヘルペス(単純疱疹)とはどんな病気ですか?
単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染によって、痛みを伴う小さな水ぶくれが集まってできる病気です。
もっとも多いのは唇やそのまわりにできる「口唇ヘルペス」で、陰部にできる「性器ヘルペス」もあります。唇・陰部のほか、顔、からだ、おしり、指にできることもあります。
典型的な経過は、まず患部にピリピリ・チクチクするような違和感(前兆)があり、半日〜数日のうちに赤みと小さな水ぶくれが出てきます。水ぶくれはやがてかさぶたになり、1〜2週間ほどで治っていきます。
Q. なぜ何度も繰り返すのですか?
一度感染したヘルペスウイルスは体から消えず、神経の根もと(神経節)に潜んでいるためです。
ヘルペスウイルスは、初めての感染のあと、症状が治まっても神経節に潜伏し続けます。そして、疲労、ストレス、発熱、強い紫外線(日焼け)、月経などで体の抵抗力が落ちたときに再び活動を始め、神経を通って皮膚に出てきて、同じような場所に水ぶくれを作ります。
再発の頻度には個人差が大きく、年に1回程度の方もいれば、月に1回近く繰り返してつらい思いをされている方もいます。
外来では「日焼けをした数日後に決まってできる」「大事な予定や旅行の前に限って出てくる」という声をよく聞きます。発熱・強い紫外線・疲労やストレスは、いずれも医学的に知られた再発の誘因であり、気のせいではありません。ご自身の再発パターンを知っておくことは、後で述べる早期治療にも役立ちます。
Q. ヘルペスは人にうつりますか?
水ぶくれの中にはウイルスが多く含まれており、直接の接触などでうつることがあります。
症状が出ている間は、患部に触れた手で目をこすらない、タオルや食器・リップクリームの共用を避ける、といった配慮をお勧めします。特に、アトピー性皮膚炎などで皮膚のバリアが弱っている方や、新生児への接触には注意が必要です。
なお、症状のない時期にもウイルスがわずかに排出されることがあるため、「完全にうつさない」ことは難しい病気です。過度に神経質になる必要はありませんが、症状のある時期の接触には気をつけていただくのが現実的です。
Q. 治療はどのように行いますか?
抗ウイルス薬の飲み薬が治療の中心です。早く始めるほど、症状を軽く・短くする効果が期待できます。
抗ウイルス薬は、ウイルスが盛んに増えている初期に使ってこそ力を発揮します。水ぶくれが出そろってから受診するより、「いつもの前兆かな」という段階で治療を始めることが勧められます。症状の程度によっては、塗り薬を併用することもあります。
なお、薬局で買える口唇ヘルペスの塗り薬もありますが、これらは「過去に医師の診断・治療を受けたことのある方の再発」に限って使えるお薬です(パッケージにもその旨が記載されています)。初めての症状や、いつもと様子が違うとき、範囲が広いときは、市販薬でしのがずに受診してください。
目のまわりに水ぶくれが出たとき、目の充血・痛み・まぶしさ・見え方の変化があるときは、市販薬を使わずに眼科を受診してください。 単純ヘルペスは角膜にうつることがあり、視力に影響する場合があります。
繰り返している方は、ご自身の前兆のパターン(ピリピリ感、むずがゆさなど)を覚えておくと、早期治療につなげやすくなります。
Q. 頻繁に繰り返す場合の治療はありますか?
「前兆を感じたらすぐ飲めるように、あらかじめ薬を処方しておく治療(PIT)」と、「毎日少量を飲み続けて再発自体を減らす再発抑制療法」があります。
- PIT(Patient Initiated Therapy):再発を繰り返す方に、あらかじめ抗ウイルス薬を処方しておき、前兆を感じた時点でご自身の判断ですぐに内服を開始する治療法です。受診を待たずに早いタイミングで治療を始められるのが利点で、保険診療で行えます。対象となるか(再発を繰り返しているか、前兆をご自身で自覚できるか等)は診察で判断します
- 再発抑制療法:抗ウイルス薬を毎日少量内服して、再発そのものを減らす治療です。保険診療の対象となるのは性器ヘルペスの再発抑制(目安として年6回以上再発する場合など)で、口唇ヘルペスは対象になりません。当てはまるかどうかは診察で確認します
「大事な予定の前にいつもできる」「痛みで仕事に集中できない」という方は、我慢を続けずにご相談ください。生活への影響に応じて、治療の組み立てをご提案します。
当院での診療
当院では、日本皮膚科学会 皮膚科専門医が、ヘルペスの診断と抗ウイルス薬による治療を行っています。繰り返す方への事前処方や再発予防のご相談にも対応します。皮膚科の診療日は火曜・木曜・第1/第3土曜です(皮膚科のご案内)。ご予約はWeb予約からどうぞ。
まとめ
ヘルペスは神経に潜んだウイルスが、疲れやストレスをきっかけに繰り返す病気です。治療の鍵はスピードで、前兆の段階で抗ウイルス薬を始めるほど、軽く済むことが期待できます。頻繁に繰り返す方には PIT や再発抑制療法という備えもあります。「またできた」を繰り返している方は、一度ご相談ください。
