ある日突然、美容室で「丸く抜けているところがありますよ」と言われた。シャンプーのたびに抜け毛が増えて、鏡を見るのが怖い──円形脱毛症は、見た目の変化が心に直接響く病気です。「ストレスのせい」と片付けられがちですが、実際には免疫の病気であり、近年は治療の選択肢が大きく広がっています。
このページでは、なみきばしクリニックの皮膚科担当医(日本皮膚科学会 皮膚科専門医)が、円形脱毛症の原因と経過、治療の考え方をご説明します。ご相談はWeb予約からどうぞ。
Q. 円形脱毛症とはどんな病気ですか?
円形〜楕円形にまとまって毛が抜ける病気です。頭髪に多いですが、眉毛やまつ毛、体毛が抜けることもあります。
境界のはっきりした、コインのような脱毛斑が突然できるのが典型です。抜けた部分の皮膚はつるっとしていて、かゆみや痛みはないことがほとんどです。
脱毛斑が1ヶ所だけの「単発型」のほか、何ヶ所もできる「多発型」、頭髪全体に及ぶ「全頭型」、眉毛・まつ毛・体毛まで抜ける「汎発型」まで、広がりには大きな幅があります。
Q. 円形脱毛症の原因はストレスですか?
主な原因はストレスではなく、免疫が毛根を誤って攻撃してしまう「自己免疫」と考えられています。
診察室でも、ほとんどの方が「ストレスのせいでしょうか」「自分の生活が悪かったのでしょうか」とご自身を責めるように質問されます。しかし、本来は体を守るはずの免疫が、毛を作る組織(毛包)を異物と間違えて攻撃することで毛が抜けるのがこの病気の本態です。感染症やストレスが引き金になることはあっても、それはきっかけのひとつにすぎず、はっきりしたきっかけがないことも多くあります。「気の持ちよう」や本人の生活の問題で起こる病気ではありません。
また、円形脱毛症の方にはアトピー性皮膚炎の合併が多く、甲状腺の病気や膠原病といった自己免疫に関わる病気のほか、1型糖尿病を合併することもあります。診察では、こうした背景の病気のチェックも大切になります。
Q. 円形脱毛症は自然に治りますか?
小さな脱毛斑が1〜数個のタイプは、治療をしなくても自然に毛が生えてくることが少なくありません。一方、脱毛の範囲が広いタイプは治療が長期戦になりがちです。
小さな脱毛斑はご自身からは見えない場所にできることも多く、「美容室で指摘されて初めて知った」「家族に言われるまで、いつからあったのか分からなかった」というのが、外来で聞く典型的な気づかれ方です。それだけ、静かに始まる病気だと言えます。
生え始めの毛は細く柔らかく、白髪のこともありますが、多くは次第に元の毛に戻っていきます。ただし、どのタイプでも再発はありえます。
「どんどん広がっている」「短期間で複数できた」「眉毛やまつ毛も抜けてきた」という場合は、進行の速いタイプの可能性があるため、早めの受診をお勧めします。
Q. 治療はどのように行いますか?
脱毛の範囲・期間・年齢に応じて治療を選びます。基本はステロイドなどの外用で、重症の場合には飲み薬(JAK阻害薬)が保険で使えるようになるなど、選択肢は近年広がっています。
- 外用療法:ステロイドなどの塗り薬で、毛根への免疫の攻撃を抑えます。範囲の狭いタイプの基本治療です
- ステロイド局所注射:脱毛斑に直接少量のステロイドを注射する方法で、成人の限られた範囲の脱毛に行われることがあります
- 局所免疫療法:特殊な薬品でわざと軽いかぶれを起こし、免疫の攻撃の矛先を変える治療です。広範囲の脱毛に行われ、実施できる施設が限られます
- JAK阻害薬(飲み薬):毛根を攻撃する免疫の信号を抑える薬で、重症の円形脱毛症に対して近年保険適用となりました。適応の判断や副作用の管理が必要なため、専門の医療機関での治療になります
どの治療にも「すぐに生える」即効性はなく、毛周期の関係で効果の判定には数ヶ月単位の時間がかかります。焦らず、しかし放置せず、状態に合った治療を続けることが大切です。
Q. 受診の目安と、日常生活で気をつけることはありますか?
「広がるスピード」が受診の目安です。生活面では、特別な制限は基本的にありません。
シャンプーや洗髪で脱毛が悪化することはないため、頭皮は普段どおり清潔に保っていただいて構いません。食事制限も不要です。
脱毛が目立つ間は、ウィッグ(かつら)や帽子などで整えることも、生活の質を保つ立派な選択肢です。見た目の悩みやお仕事への影響も含めて、遠慮なくご相談ください。
当院での診療
当院では、日本皮膚科学会 皮膚科専門医が、脱毛の範囲と経過を診断し、外用治療を中心とした治療を行っています。背景の病気(甲状腺疾患など)が疑われる場合の検査や、局所免疫療法・JAK阻害薬など専門的な治療が必要な場合の連携医療機関へのご紹介にも対応します。皮膚科の診療日は火曜・木曜・第1/第3土曜です(皮膚科のご案内)。ご予約はWeb予約からどうぞ。
まとめ
円形脱毛症はストレスの病気ではなく、毛根への自己免疫で起こる病気です。小さな脱毛斑は自然に治ることも多い一方、広がるタイプは早めの診断と治療開始が大切で、重症例への飲み薬など治療の選択肢も増えています。ひとりで抱え込まず、一度皮膚科でご相談ください。
