帯状疱疹は、80歳までにおよそ3人に1人が経験するといわれる身近な病気です。子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスが神経に潜み続け、加齢や疲労で免疫の力が落ちたときに再び活動を始めて起こります。
やっかいなのは、皮膚の症状が治った後も痛みだけが長く残ることがある点です。帯状疱疹後神経痛と呼ばれ、50歳以上で発症した方の約2割に起こるとされ、年単位で続く方もいます。いったん残ってしまうと治療に時間がかかるため、発症そのものを防ぐ意味が大きい病気です。
その予防手段がワクチンです。2025年度からは65歳の方などを対象とした定期接種が始まり、公費で受けられる方の範囲が広がりました。渋谷区には、定期接種の対象年齢にあたらない方向けの費用助成もあります。
ただし、対象になるかどうかは年齢と年度で細かく分かれており、ワクチンも2種類あって費用が大きく異なります。「自分は無料で受けられるのか」「今受けるべきか、待つべきか」が分かりにくいのが実情です。
このページでは、2種類のワクチンの違い、定期接種と助成の対象、実際にお支払いいただく金額、そして接種する時期の考え方を整理してご説明します。
ご不明な点は、受診の際にお尋ねください。お役に立てれば幸いです。
Q. 帯状疱疹ワクチンはどんな病気を予防するのですか?
帯状疱疹の発症と、その後に残る神経の痛み(帯状疱疹後神経痛)を予防するワクチンです。
ほとんどの成人は子どもの頃に水ぼうそうのウイルスに感染しているため、帯状疱疹は誰にでも起こりえます。発症は50歳を過ぎると増えていきます。
ワクチンは、このウイルスに対する免疫を再び高めることで、発症そのものを減らし、発症した場合も症状を軽くする働きが示されています。
Q. ワクチンには何種類ありますか?
不活化ワクチン(シングリックス®)と生ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」®)の2種類があり、当院ではどちらも接種いただけます。予防効果と持続性の点から、当院では主にシングリックスをお勧めしています。
不活化ワクチン(シングリックス®)
2か月の間隔をあけて2回、筋肉内に接種します。帯状疱疹の発症を防ぐ効果は、50歳以上で97.2%、70歳以上で89.8%と報告されています。70歳以上では帯状疱疹後神経痛を防ぐ効果も88.8%と示されています。
効果の持続も確認されており、2回目の接種から10年が経過した時点でも73.2%の予防効果が保たれていました。
生ワクチン(ビケン®)
1回の皮下接種で完了します。海外の大規模な試験では帯状疱疹の発症が51.3%、帯状疱疹後神経痛の発症が66.5%減少したと報告されていますが、国内で50歳以上を対象に行われた試験では、帯状疱疹の予防効果は27.8%、帯状疱疹後神経痛の予防効果は73.8%という結果でした。
効果の持続は接種後4〜7年で39.6%まで下がり、8年目には4.2%との報告があります。
1回で済み費用の負担も軽い一方、発症を防ぐ力と持続性はシングリックスに及びません。そのため当院では、ご希望がなければシングリックスをお勧めしています。
Q. どなたが接種できますか?
50歳以上の方が対象です。50歳未満でも、18歳以上で帯状疱疹にかかるリスクが高いと考えられる方は、シングリックスの接種対象となります。
「リスクが高いと考えられる方」には、病気や治療によって免疫の働きが低下している方、低下する可能性がある方のほか、医師が接種を必要と判断した方も含まれます。
生ワクチンは、免疫の働きが低下している方や妊娠中の方には接種できません。
また、どちらのワクチンも、明らかな発熱がある方、重い急性の病気にかかっている方、そのワクチンの成分でアナフィラキシーを起こしたことがある方は、その日の接種を見合わせます。持病や服用中のお薬がある方は、接種の可否を診察時に判断しますのでお知らせください。
Q. 費用はどのくらいかかりますか?
定期接種の対象の方は渋谷区の公費で無料です。対象外の方も、渋谷区の助成を使うとシングリックスは2回で24,000円、生ワクチンは1回4,800円になります。
定期接種(無料)の対象
- その年度末に65歳になる方
- 2029年度までの経過措置として、その年度末に70・75・80・85・90・95・100歳になる方
- 60〜64歳で、HIVによる免疫の機能に障害があり、日常生活が極度に制限される方(身体障害者手帳1級相当)
接種できるのは対象年度の4月1日から翌年3月31日までです。年齢で対象になる方には渋谷区からお知らせが届きますが、60〜64歳の対象の方は予診票の発行申請が必要です(渋谷区 地域保健課 予防接種係 03-3463-1412)。シングリックスは2回接種のため、2回目を年度内に受けられるかを含めて、日程は早めに渋谷区にご確認ください。
任意接種と渋谷区の助成
定期接種の対象年齢にあたらない方も、渋谷区に住民票のある50歳以上で過去に区の助成を受けていない場合は、費用助成を利用できます。
| ワクチン | 接種回数 | 当院の料金 | 区の助成 | お支払い額 |
|---|---|---|---|---|
| シングリックス® | 2回 | 22,000円/回 | 10,000円/回 | 24,000円(2回分) |
| 生ワクチン(ビケン®) | 1回 | 8,800円 | 4,000円 | 4,800円 |
助成は生涯に1回、どちらか一方のワクチンにのみ使えます。利用するには事前に渋谷区へ申請し、区が発行する予診票を持参していただく必要があります。当日窓口で申し出ても助成は受けられませんのでご注意ください。
Q. いつ接種するのがよいですか?
定期接種の対象年齢が近い方は、その年度まで待つと無料で接種できます。渋谷区では、任意接種を完了していると定期接種の対象外になります。
対象になる年度は、その年度の終わり(3月31日時点)で何歳になるかで決まります。今の年齢ではありません。たとえば今64歳でも、来年3月31日までに65歳になる方はすでに今年度の対象です。ご自身が今年度の対象か、それとも翌年度以降かは、生年月日で決まりますので渋谷区の案内でご確認ください。
対象の年度に入る前に任意接種を済ませてしまうと、無料で受けられる機会がなくなります。また、シングリックスを1回だけ自費で接種した方の残り1回の扱いは、定期接種の対象かどうかで変わります。どちらに当たるかは渋谷区にご確認ください。
一方で、待っている間に発症する可能性はあります。免疫を抑えるお薬を使っている方や、ご家族に帯状疱疹後神経痛で苦しんだ方がいて不安が強い場合など、待たずに接種する判断もあります。
ご自身がいつ対象になるのか、待つべきかどうかは、生年月日と体調をふまえて診察時にご相談ください。
Q. 副反応はありますか?
シングリックスは接種部位の痛みや腫れ、筋肉痛や疲労感が高い頻度で起こります。多くは数日でおさまりますが、事前に知っておいていただきたい点です。
シングリックスでは、接種後7日以内に接種部位の反応が81.5%、筋肉痛や疲労感などの全身の反応が66.1%の方に報告されています。もっとも多いのは接種部位の痛みで79.1%、全身の反応では筋肉痛が46.3%です。日常生活に支障が出る程度の強い症状は17.0%の方にみられました。
生ワクチンでは、副反応は50.6%の方に報告されており、接種部位の赤み44.0%、かゆみ27.4%、熱感18.5%が主なものです。
まれではありますが、重い副反応が報告されています。シングリックスではショックやアナフィラキシーのほか、手足のしびれや力が入らなくなるギラン・バレー症候群が報告されています。生ワクチンでもアナフィラキシーをはじめとする重い副反応の報告があります。
接種のあとに、息苦しさ・じんましん・顔やのどの腫れ、手足のしびれや力の入りにくさが出たときは、すぐに医療機関へご連絡ください。そのほか、接種後に体調の変化が続く場合もご相談ください。
当院での接種
当院は渋谷区の予防接種実施医療機関です。定期接種・任意接種のいずれにも対応しています。
ワクチンは在庫を確保する必要があるため、事前にお電話(03-3499-6223・診療時間内)でご予約ください。渋谷区の助成や定期接種を利用される方は、区から届いた予診票をお持ちください。
料金はワクチン・予防接種 料金表、他のワクチンを含めた対象や助成の詳細は高齢者の予防接種でご案内しています。
