健康診断の結果表に「要精密検査」と印字されていたけれど、何も症状がないので封筒に入れたまま数か月が過ぎてしまった──外来でよくうかがうお話です。数値の外れ方はわずかに見えますし、結果表には「どの科へ行けばよいか」までは書かれていません。行き先が分からないこと自体が、そのまま先延ばしの理由になっていきます。
このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(総合内科専門医・呼吸器専門医・アレルギー専門医)が、健診の判定区分の意味・項目ごとの受診先・受診時に持っていくものを整理します。数値の詳しい読み方や治療の話はそれぞれの疾患のページに譲り、ここでは「次にどこへ行けばよいか」をはっきりさせることに絞ります。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。
健診結果の「要精密検査」と「要再検査」は何が違いますか?
人間ドックや企業健診で広く使われている判定区分(2026年4月1日改定)では、結果を次の5段階で示します。
- A:異常なし
- B:軽度異常
- C:要再検査・生活改善
- D:要精密検査・治療
- E:治療中
CとDの違いは、次に何をするかです。Cは「同じ検査をもう一度行い、あわせて生活を見直す」段階で、いつ再検査するかの時期が示されます。Dは「原因を調べるための別の検査に進むか、治療を始めるか」を医療機関で決める段階です。
ここで誤解が起きやすいのがDです。かつては「要精密検査」と「要医療(要治療)」が別々の区分でしたが、現在はこの2つがDにまとめられています。精密検査に進むのか治療を始めるのかは、紹介先の医療機関が診察したうえで決めることになるからです。つまりDは「薬が決まった」という意味ではなく、「医療機関で判断してもらう段階に来た」という意味の記号です。
もうひとつ知っておいていただきたいのは、判定区分が初回受診時の拠り所として作られている点です。Dと判定された方でも、精密検査の結果、原因となる病気が見つからなかった場合や、体質的なもの・長期間変化しない所見と判断された場合には、その内容に応じて次回以降の判定がCなどに変更されることがあります。基準を外れたことと、病気が確定したことは別だと考えてください。
なお、区民健診や企業健診では「要指導」「要観察」「要医療」といった別の言葉が使われることがあります。呼び方は違っても、求められている行動は「生活を見直す」「もう一度測る」「医療機関で調べる」のいずれかに整理できます。血圧については補足があり、Cと判定された血圧を確かめるときは、健診機関での再検査よりも家庭で測る血圧のほうが勧められています。数日分の記録を持って受診していただくと、判断が早く進みます。
健診の項目ごとに、どの科を受診すればよいですか?
指摘された項目は、大きく2つに分かれます。総合内科でそのまま診ていける項目と、その科ならではの検査が必要になる項目です。
内科(生活習慣病を診る内科)へ
- 血圧が高い → 高血圧
- 血糖・HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー:過去1〜2か月の血糖の平均を映す検査)が高い → 糖尿病、HbA1cが高いと言われたら
- LDL(悪玉)コレステロール・中性脂肪が高い → 脂質異常症、LDLコレステロールが高いと言われたら、中性脂肪が高いとどうなる?
- 肝機能(AST・ALT・γ-GT〈ガンマジーティー:お酒や薬の影響を受けやすい肝臓の値〉)が高い → 脂肪肝、肝機能の数値の読み方
- 尿酸が高い → 高尿酸血症
- BMI(体格指数)・腹囲の指摘 → 肥満症
- 複数の項目が同時に引っかかっている → 生活習慣病
その科の検査が必要になるもの
- 便潜血(べんせんけつ:便に混じった目に見えない血を調べる検査)が陽性 → 消化器内科。精密検査は全大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が基本で、便潜血をもう一度調べて陰性でも精密検査の代わりにはなりません
- 胃のバリウム検査・胃カメラでの指摘 → 消化器内科
- 尿蛋白と尿潜血がともに陽性、尿蛋白が強い、eGFR(イージーエフアール:腎臓が老廃物をこし取る力の推定値)が大きく下がっている、または腎機能が短期間に悪化している → まず内科または腎臓内科。年齢・蛋白尿の程度・腎機能の推移に応じて腎臓内科へ紹介します
- 心電図の異常 → 循環器内科
- 胸部X線(レントゲン)の影 → 呼吸器内科
- 乳がん・子宮頸がん検診の指摘 → 乳腺外科・婦人科
- 眼底・眼圧・視力 → 眼科
- 聴力 → 耳鼻咽喉科
同じ項目でも、CとDでは急ぎ方が変わります。判定の目安を挙げると、血圧は収縮期160mmHg以上または拡張期100mmHg以上、肝機能はAST・ALTが51U/L以上またはγ-GTが101U/L以上、尿酸は9.0mg/dL以上、尿蛋白・尿潜血は(2+)以上がDにあたります。血糖は空腹時血糖126mg/dL以上とHbA1c6.5%以上がそろった場合がDです。便潜血だけは基準の立て方が異なり、2日法のうち1回でも陽性であればDとして扱います。
どこへ行けばよいか判断がつかないときは、まず内科に結果表をお持ちください。1枚の結果表を通して見て、どの項目から手をつけるか、どの科へおつなぎするかを整理します。
受診するときは何を持っていけばよいですか?
受診の際は、次のものをお持ちください。
- 健診の結果表(原本・コピー・PDF・スマートフォンの写真、いずれでも構いません)
- できれば過去1〜2年分の結果
- お薬手帳、飲んでいるサプリメントの記録
- マイナ保険証、または資格確認書(詳しくは保険証についてのご案内)
- 家庭血圧の記録(血圧を指摘された方)
結果表をお願いしているのは、その日の数値よりも前回からどう動いたかが判断を変えるためです。今年だけ外れた値と、3年続けて同じ方向に動いている値では、意味がまったく違います。手ぶらで受診すると、判定の根拠になった数値が分からないまま再検査からやり直すことになり、時間も費用も余分にかかります。
受診の時期は、Dは放置せず、まず医療機関へ予約・相談してください。一般的には数週間以内が目安ですが、結果表に「至急」「早急に受診」などの指示がある場合や、胸痛・息苦しさ・失神・黒い便や血便などの症状がある場合は、より早い受診が必要です。Cは結果表に書かれた再検査時期に合わせていただければ十分です。ただし、いずれの判定でも体調の変化があるときは待たずにご相談ください。
当院の個人健診では、結果を受診日から7日以内にメールまたはLINEでPDFにてお送りしています。当院で健診を受けられた方が結果のご説明だけを希望される場合、診察料はかかりません(追加の検査を行う場合は別途費用がかかります)。健診の内容やコースは健康診断のご案内をご覧ください。
「要精密検査」を後回しにすると、どうなりますか?
まず実態から。国立がん研究センターが公表している令和4年度の全国値では、大腸がん検診で要精密検査となった方のうち実際に精密検査を受けたのは71.5%、肺がん検診では83.0%でした。大腸では4人に1人以上が、次の一歩を踏まないままになっている計算です。
後回しになるのには理由があります。自覚症状がないこと、どの科に行けばよいか分からないこと、「どうせ生活習慣を注意されて終わり」と感じてしまうこと、平日の日中に時間を取りにくいこと。どれも責められる話ではありません。
その一方で、早めに動いたときの利点ははっきりしています。
- 血圧・血糖・脂質・肝機能などでは、1回の受診と採血で「様子を見てよいのか、追加の検査や治療が必要なのか」の見通しが立つことが少なくありません
- 調べて問題がなければ、その事実が次の年の結果表の読み方を変えます。重大な異常がなく、体質的なものや長期間変化しない所見と判断されれば、その内容に応じて次回以降の判定がCなどに変更されることもあり、毎年同じ指摘に不安になる状態から抜けられます
- 生活習慣が関わる項目の一部では、早い段階から食事・運動・飲酒を見直すことで数値を改善できる可能性があります。もっとも、体質や病気の種類によっては薬物治療や追加の検査が必要です
「要精密検査」は病気が確定したという意味ではありませんが、放置してよいという意味でもありません。まだ手の打ちようがあるうちに見つかった合図として、原因を確かめ、必要な対応を始めるきっかけにしてください。
なみきばしクリニックでは、健診結果のどこまで対応できますか?
当院は総合内科として、結果表を1枚ずつ確認し、①どの項目が急ぐか ②再検査で足りるか、別の検査が必要か ③今日から始められる生活の見直しは何か、の3点を整理してお伝えします。
院内では、血液検査(肝機能・脂質・血糖・HbA1cを含む)、尿検査、心電図、胸部X線を実施しています。健診のオプションとして、動脈硬化検査(ABI/PWV)、肺機能検査、骨密度検査(DXA法)、便潜血検査(2回法)、肝炎ウイルス検査もご用意しています。胸部X線は院内で撮影でき、呼吸器専門医が結果をご説明しますので、健診で肺の影を指摘された方の相談先としてもお使いいただけます。
一方で、大腸内視鏡・胃内視鏡・腹部超音波・心エコーなど当院で行っていない検査が必要と判断した場合には、連携する医療機関へ紹介状をご用意します。何の検査を、どういう目的で受けるのかをご説明してからおつなぎしますので、紹介先で受ける検査の見通しを持ったまま進めます。
当院は渋谷区の特定健診の実施医療機関です。内科でどこまで診ているかは内科のご案内をご覧ください。渋谷駅・恵比寿・代官山からも通いやすい場所にありますので、結果表を封筒から出すところからご一緒させてください。
診察室でよくあるご相談
複数の診療経験をもとに再構成した典型的な例です。40代の男性が、会社の健診で肝機能とLDLコレステロールにDの判定がつき、半年ほど迷ってから来院されました。自覚症状はなく、体重は5年で6kg増えていました。問診では、週4日の飲酒と深夜の食事が続いていることを確認しました。院内の血液検査で肝機能・脂質・血糖・HbA1cをまとめて測り直したところ、肝機能の数値は健診時より下がっていたものの、LDLコレステロールは同じ水準にとどまり、血糖も境界の域にありました。1回だけの外れ値ではないと判断し、まず食事と飲酒の見直しから始めて3か月後に採血で確認する方針とし、肝臓の状態をさらに詳しく調べる必要が出た場合には連携先へご紹介する見通しもあわせてお伝えしました。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 「要再検査」と「要精密検査」では、どちらを先に受けるべきですか? 先に動いていただきたいのは要精密検査(D)のほうです。要再検査(C)は同じ検査をもう一度行って確かめる段階、要精密検査は原因を調べる別の検査や治療の判断へ進む段階を指します。ただしCでも、数値の動き方によっては早めの受診をお勧めすることがあります。
Q. 「要精密検査」と言われたら、必ず薬を飲むことになりますか? そうとは限りません。現在の判定区分は、精密検査を行うか治療を始めるかを紹介先の医療機関が診察のうえで決める前提で作られています。検査の結果、生活の見直しと定期的な確認だけで様子をみる方も多くいらっしゃいます。
Q. 結果表をなくしてしまいました。受診できますか? 受診はできますが、判定の根拠になった数値が分からないと再検査からやり直すことになります。健診を受けた機関で再発行を受けられる場合が多いので、まずお問い合わせください。当院で健診を受けられた方は、こちらで結果を確認できます。
Q. 会社の健診と区の健診で判定の書き方が違います。どちらを見ればよいですか? どちらも見ていただいて構いません。健診の種類によって判定の言葉づかいは異なりますが、求められている行動は「生活を見直す」「もう一度測る」「医療機関で調べる」のいずれかに整理できます。判断に迷うときは、結果表をそのままお持ちいただくのがいちばん早い方法です。
参考文献
- 日本人間ドック・予防医療学会「判定区分(2026年4月1日改定)」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん検診(医療関係者向け)」
- 国立がん研究センター がん統計「がん検診の都道府県別プロセス指標」(令和4年度精検受診率・令和5年度地域保健・健康増進事業報告に基づく)
- 日本腎臓学会『CKD診療ガイド2024』
※本ページは一般的な情報提供を目的としています。判定の基準は健診の種類や実施機関によって異なる場合があり、診断・治療方針は個々の状態により変わります。最終的な判断は診察のうえで行いますので、気になる結果のある方は医療機関にご相談ください。
