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咳にクラリス(クラリスロマイシン)は効く?風邪の咳に使わない理由と、使う病気

執筆・監修:斎藤史武 公開日:2026-10-17

 咳が続いて受診したときに、「クラリス」という抗生物質を処方されたことのある方は少なくありません。けれども、風邪や急性気管支炎の咳、風邪のあとに残る咳に、クラリス(一般名:クラリスロマイシン)は効きません。原因のはっきりしない長引く咳でも、同じ種類の抗生物質で咳は改善しなかったという試験結果があります。一方で、百日咳や、痰の多い咳が長く続く一部の病気など、クラリスを含むマクロライド系の抗生物質が役立つ場面もあります。

 このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(日本内科学会 総合内科専門医・日本呼吸器学会 呼吸器専門医)が、咳にクラリスを使わない理由、必要のないときに使うことで起こる問題、マクロライド系の抗生物質を使う病気をご説明します。長引く咳のご相談は呼吸器内科のご案内をご覧ください。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。

クラリス(クラリスロマイシン)とは、どんな薬ですか?

 クラリスロマイシンは、マクロライド系と呼ばれる抗生物質の一つで、「クラリス」「クラリシッド」などの名前で処方されています。細菌がたんぱく質を作るしくみを妨げて、細菌が増えるのを抑える薬です。同じマクロライド系には、エリスロマイシンやアジスロマイシン(ジスロマック)などがあります。

 マクロライド系は、日本で咳や風邪によく出されてきた抗生物質です。2012年から2017年の診療データを調べた研究では、抗生物質が要らないと考えられる気道の感染症(風邪や急性気管支炎など)に出された抗生物質のうち、約3分の1(34.1%)がマクロライド系でした。

風邪や急な咳に、クラリスは効きますか?

 効きません。急な咳の原因の大部分はウイルスで、クラリスに限らず、抗生物質はウイルスには効きません。厚生労働省も、風邪と、持病のない大人の急性気管支炎には、抗生物質を使わないことを推奨しています。詳しくは風邪に抗生物質は効きませんでご説明しています。

 風邪が治ったあとも、咳だけが数週間残ることがあります。これはウイルスで傷ついた気道が回復するまでの咳で、原因の微生物がいなくなったあとも続きます。この段階で抗生物質を飲んでも、咳の治療にはなりません。咳が長引くときの考え方は咳の原因で一番多いのは?自然経過と受診の目安をご覧ください。

長引く咳には、クラリスは効きますか?

 原因のはっきりしない長引く咳の方に、マクロライド系の抗生物質(エリスロマイシン)を12週間飲んでもらい、偽薬と比べた試験では、咳の強さ、咳の回数、生活への影響のいずれも改善しませんでした。アジスロマイシンを8週間使った別の試験でも、全体では偽薬との差は見られませんでした。

 長引く咳には、咳喘息、喘息、胃食道逆流症、鼻や副鼻腔の病気、肺の感染症など、それぞれ原因があり、治療は原因によって違います。抗生物質を試す前に、まず原因を調べることが先です。

必要のないときにクラリスを使うと、どんな問題がありますか?

薬が効きにくい菌が増えます

 マクロライド系の抗生物質は、長く使うほど、口やのどにマクロライド系が効きにくい菌が増えます。気管支拡張症の方にエリスロマイシンを12か月間飲んでもらった試験では、のどにいる連鎖球菌のうちマクロライド系が効きにくい菌の割合が大きく増え、偽薬を飲んだ人ではほとんど変わりませんでした。日本では、肺炎球菌など、のどや気管支の感染症の原因になる菌にマクロライド系が効きにくいものが多く、子どもの中耳炎などでは、国内の菌の性質からマクロライド系は勧められていません。マイコプラズマや百日咳でも、マクロライド系が効きにくい菌が増えてきています。

肺の非結核性抗酸菌症が隠れていると、治療の中心となる薬を失います

 長引く咳や痰の原因の一つに、肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)があります。中高年のやせ型の女性に多い病気で、その約9割を占める肺MAC症の治療では、クラリスロマイシンが、ほかの薬と組み合わせて使う中心の薬です。ところが、肺MAC症の方にクラリスロマイシンだけを長く使うと、菌がクラリスロマイシンに耐性を持ち、この中心の薬が効かなくなってしまいます。

 このため、痰の多い慢性の気道の病気にクラリスロマイシンを長く使う前には、肺NTM症(とくに肺MAC症)が隠れていないかを確かめることが重要とされています。

飲み合わせと副作用に注意が必要です

 クラリスロマイシンは、肝臓などで薬を分解する酵素(CYP3A)の働きを抑えるため、一緒に飲んでいる薬の血液中の濃度を上げることがあります。睡眠薬、心臓や血圧の薬、片頭痛の薬、血液を固まりにくくする薬などのなかには、一緒に飲んではいけない薬や、とくに注意が必要な薬があり、添付文書で定められています。重大な副作用としては、心電図のQT延長などの不整脈や、強い下痢を伴う大腸炎も挙げられています。ほかに飲んでいる薬がある方は、お薬手帳をお持ちください。

クラリスなどのマクロライド系の抗生物質を使うのは、どんなときですか?

 マクロライド系の抗生物質は、次のような病気では、診断を確かめたうえで役立つ薬です。

いまクラリスを飲んでいる場合は、どうすればよいですか?

 自己判断で中止せずに、処方した医師にご相談ください。上のような病気で、目的があって処方されていることもあります。何のために、いつまで飲むのかを確かめておくと安心です。副作用が気になるとき、ほかの薬との飲み合わせが心配なときは、薬剤師にもご相談いただけます。呼吸器内科医が咳への抗生物質に慎重な理由は、呼吸器内科医が、咳に抗菌薬(抗生物質)を使うのに慎重になる理由でもご説明しています。

長引く咳で受診したとき、当院ではどのように診察しますか?

 当院の内科外来では、日本呼吸器学会 呼吸器専門医が咳の診療を担当しています。咳がいつから続いているか、痰の有無や色、鼻の症状、持病やお薬を伺ったうえで、胸部X線検査、呼吸機能検査(スパイロメトリー)、呼気NO検査(FeNO)などで原因を調べます。痰の多い咳が続く場合は、痰の検査で肺NTM症などがないかも確かめます。

 治療は原因に合わせて行い、マクロライド系の抗生物質は、副鼻腔気管支症候群や気管支拡張症など、効果が確かめられている病気に限って使います。発熱や風邪の症状がある場合は、専用エリアの感染対策外来で診療しています。

よくあるご質問

Q1. クラリスは咳止めとして効きますか? クラリスは抗生物質で、咳を止める薬ではありません。咳の原因が百日咳やマイコプラズマなど、マクロライド系が効く細菌の感染で、早い時期に使った場合には、病気の経過を短くできることがあります。風邪や風邪のあとに残る咳を止める効果はありません。

Q2. 以前、咳でクラリスを飲んだら治りました。効いたのではないのですか? 風邪の咳は、何もしなくても2〜3週間ほどで少しずつ治まっていきます。クラリスを飲んだ時期と、咳が自然に治まる時期が重なっていたことも考えられます。マイコプラズマなどの感染だった場合は、クラリスが役立っていたこともあります。どちらだったかを後からはっきり区別するのは難しいため、次に咳が長引いたときは、まず原因を確かめることをおすすめします。

Q3. マイコプラズマと言われてクラリスを飲んでいますが、熱が下がりません。 飲み始めて2〜3日(48〜72時間)たっても熱が下がらない場合は、マクロライド系が効きにくい菌の可能性も含めて、診断や治療を見直す必要があります。処方した医師にご相談ください。

Q4. クラリスとジスロマックは、どう違いますか? どちらもマクロライド系の抗生物質で、ジスロマック(アジスロマイシン)は、1日1回・3日間などの短い期間で飲む使い方が多い薬です。風邪や、風邪のあとに残る咳に効かないことは同じです。

参考文献

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