「ハンドクリームを塗っても指先の皮むけが治らない」「仕事で手を洗う回数は減らせない」──手の湿疹が長引くのは、手入れが足りないからではありません。手は一日に何度も洗われる場所で、塗った薬も保湿剤も、そのたびに洗い流されてしまいます。薬を塗ることと手を守ることを同時に進めないかぎり、治りきらないまま再発を繰り返します。
このページでは、なみきばしクリニックの皮膚科担当医(日本皮膚科学会 皮膚科専門医)が、手湿疹(しゅしっしん。主婦湿疹とも呼ばれます)が長引く理由と、保護と塗り薬を組み合わせる進め方をご説明します。湿疹という病気そのものの解説は湿疹(皮膚炎)のページにありますので、ここは手に限った話に絞ります。ご相談はWeb予約からどうぞ。
Q. 手だけが荒れて治らないのは、なぜですか?
手湿疹の約7割は、洗剤や水、摩擦といった刺激が積み重なって起こるタイプです。手は一日に何度も洗われるため、皮膚を守る角層(かくそう:いちばん外側の薄い層)の脂が奪われ続け、ほかの部位と同じ治療をしても治りが遅くなります。
洗剤に含まれる界面活性剤は角層のたんぱく質の構造を変え、除光液などの有機溶媒は角層の脂を溶かします。守りが薄くなったところに弱い刺激が繰り返し加わると、赤みと皮むけ、かゆみが出て、慢性的に続けば皮膚が厚く硬くなり、亀裂(ひび割れ)が入ります。手湿疹が「治りかけては戻る」のは、原因の刺激が生活や仕事から消えないためです。
珍しい症状ではありません。海外の一般集団の調査では、生涯のうちに手湿疹を経験する人はおよそ15%と報告されており、女性に多く、20歳代から30歳代前半に目立ちます。もともと皮膚が乾燥しやすい方やアトピー性皮膚炎のある方は、同じ刺激でも起こしやすくなります。
Q. 手湿疹には、どんなタイプがありますか?
見た目から5つに分けられます。指紋が薄くなるもの、厚い角質と亀裂が主体のもの、小さな水ぶくれが出るものなど、悪化する季節も対処も違います。
| タイプ | 出やすい場所・見た目 | 特徴 |
|---|---|---|
| 進行性指掌角皮症(しんこうせいししょうかくひしょう) | 指先や指の腹(特に親指・人差し指・中指、利き手側)が乾いて粗くなり、指紋が見えなくなる | 悪化すると亀裂。水仕事の多い方やキーボードを多く使う職種に多い |
| 乾燥・亀裂型 | 手のひらと指全体の乾燥と亀裂 | 水ぶくれは出ない。冬に悪化しやすい |
| 角化型 | 手のひらに、境界のはっきりした厚い鱗屑(りんせつ:皮がはがれた状態) | 水ぶくれを欠き、足の裏にも同じ病変が出ることが多い |
| 再発性水疱型(汗疱型) | 手のひらと指の側面に、左右対称に小さな水ぶくれが多発 | かゆみが強く、夏に悪化しやすい |
| 貨幣状型 | 主に手の甲に、コイン大の円い湿疹 | かゆみが強い |
タイプは固定ではなく、季節や仕事の内容で移り変わります。刺激で起こるものは利き手の指先・手のひら・爪のまわりから始まることが多く、かぶれが関わる場合は指の間や側面など、原因物質が残りやすい場所にも出ます。
Q. 水仕事や手洗い、手指消毒はどこまで関係しますか?
関係します。仕事に関連して起こる皮膚の病気の7〜8割は接触皮膚炎・湿疹で、その発症部位の8割以上が手や腕です。水や洗剤に触れる回数と時間が、そのまま手湿疹の起こりやすさに響きます。
医療・介護、理容や美容、調理や飲食、保育など、手を洗う回数が多い仕事や、水に触れる時間の長い仕事では手湿疹が起こりやすくなります。ただし職業だけで決まるわけではありません。家事の量、皮膚のもともとの乾燥しやすさ、かぶれやすい体質が重なるため、同じ職場でも症状が出る方と出ない方に分かれます。
手指衛生そのものは減らせませんので、外来では次の3点を一緒に組み立てます。
- 洗う場面を選ぶ:目に見える汚れが付いているときは石けんと流水で洗いますが、汚れがないときはアルコールの手指消毒に置き換えられる場面があります
- 洗ったら塗る:手を洗うたびに保湿剤を塗る流れを日課に組み込みます。手湿疹の診療ガイドラインでも、日中や仕事のあと、就寝前の保湿が勧められています
- 職場に相談する:仕事との関係がはっきりしている場合は、産業医や衛生管理の担当者に伝えます。刺激の少ない代替品に変更できれば、それが最も根本的な対策になります
Q. かぶれ(アレルギー)が隠れていることはありますか?
あります。刺激だけでは説明のつかない手湿疹には、ゴム手袋の成分や金属、塗り薬そのものへのアレルギーが隠れていることがあります。手袋を使い始めてから悪くなった場合はとくに疑います。
触れてから時間をおいて出る遅延型のアレルギーでは、ニッケルやクロムなどの金属、ゴム製品に含まれる加硫促進剤(かりゅうそくしんざい:ゴムを固める工程で使う添加物)、洗剤やシャンプーの成分、毛染めの主剤、ウルシやキクなどの植物が代表的な原因です。手に触れるものはすべて原因になりえます。
一方、食品を扱う仕事では、触れて数分で膨らみとかゆみが出て、触るのをやめると数時間以内に引くタイプもあります。果物・野菜・香辛料、肉や魚、エビやカニ、小麦、ゴム手袋のラテックスなどが原因です。「特定の物や食材を扱った日に限って出る」という規則性に気づいたら、診察でお聞かせください。なお、手の症状に加えて、全身のじんましん、息苦しさ、喉の違和感、めまいや意識が遠のく感じが出た場合は、アナフィラキシーの可能性があるため、119番への連絡を検討してください。
原因を確かめる検査としては、遅延型にはパッチテスト、即時型にはプリックテストがあります。3か月以上続く場合、適切な治療を行っても改善しない場合、特定の製品や手袋との関係が疑われる場合には、パッチテストを検討します。当院ではパッチテストを行っていないため、必要な場合は連携する医療機関へご紹介します。
Q. 手湿疹とまぎらわしい病気はありますか?
あります。とくに手白癬(てはくせん:手にできる水虫)は手湿疹によく似ており、片方の手だけに出ていることが多いのが手がかりです。見た目では決まらないため、顕微鏡で菌を確かめます。
手湿疹は両手、あるいは利き手を中心に出ることが多いのに対し、白癬は片側性のことが多く、皮膚の一部を採ってその場で観察すると菌糸が確認できます。当院では真菌の顕微鏡検査を院内で行っており、早ければ数分で菌の有無が分かります。ここを確かめずに白癬にステロイドの塗り薬を続けると、炎症だけが一時的に抑えられる一方で、感染が広がったり、見た目が変わって診断しにくくなったりすることがあります。足の水虫は水虫(白癬)のページ、顔や体にできる白癬は体部白癬のページで解説しています。
小さな水ぶくれが繰り返し出るものを「汗疱(かんぽう)」と呼ぶことがありますが、多くは手湿疹のひとつのタイプとして扱います。このほか、手のひらに膿をもった発疹が繰り返す掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、爪の点状のへこみや濁りを伴う乾癬、指の間や手首がかゆくなる疥癬(かいせん)も候補に挙がります。手以外にも発疹があるときはかゆい発疹の見分け方もご覧ください。
Q. 手袋と保湿剤は、どう使えばよいですか?
水仕事のときは保護手袋を使い、長くつけるときは下に木綿の手袋を重ねます。保湿剤は、種類を選ぶことより「手を洗うたびに塗り直す」ほうが結果を左右します。
手袋については次の点に気をつけます。
- 家事にはゴム製またはポリ塩化ビニル製の家事用手袋を使い、職場では触れるものに合わせて選びます
- 手袋の中は蒸れて、それ自体が刺激になります。つける時間は短くし、長時間になるときは下に木綿の手袋を重ねます
- 素材によっては手荒れを悪化させたり、アレルギーの原因になったりします。材質とパウダーの有無を確かめます
保湿剤には、ヘパリン類似物質、尿素、白色ワセリンなどが使われます。どれが優れているかを比べた質の高い研究は乏しく、ガイドラインでも「十分な根拠はないが使用は考慮してよい」という位置づけです。ただし、症状がいったん落ち着いた53人を対象とした研究では、5%尿素配合の保湿剤を使った群で再発までの期間の中央値が20日、無治療群では2日でした。すべての保湿剤で同じ効果が得られるとは限りませんが、続けることの意味を示す結果です。効き目を分けるのは製品選びよりも、続けられるかどうかです。洗面所・台所・職場の机・かばんと、手を洗う場所ごとに1本ずつ置く方法をお勧めしています。保湿剤の選び方全般は乾燥肌のページにまとめました。
Q. 塗り薬はどう使い、いつ受診すればよいですか?
炎症が出ている間は、手袋や保湿剤による保護を続けながら、ステロイドの塗り薬で炎症を抑えます。良くなったら、保湿を続けつつステロイドの強さや使用間隔を調整します。ガイドラインでは、ストロング程度の強さの薬で4週間を目安に効き具合を確かめ、良くなったら強さを下げて間隔をあけていく手順が示されています。
手のひらは皮膚が厚く、腕や体幹と同じ強さの薬では効きが足りないことがあります。4週間たっても変わらないときは、薬を強くする前に、塗る量は足りているか、手袋と保湿による保護ができているか、原因が残っていないか、の3点を確かめます。かゆみが強いときは抗ヒスタミン薬の飲み薬を足すことがありますが、これは炎症を抑える薬ではなく、かゆみをやわらげる補助と考えてください。薬の強さや量、やめていく手順の考え方はステロイドの塗り薬のページで解説しています。
受診をお勧めするのは、次のような場合です。
- 市販の塗り薬を説明書どおりに数日〜1週間使っても良くならない
- 亀裂から血が出る、痛くて物がつかみにくい
- ジュクジュクする、黄色いかさぶたが付く、腫れて痛む(細菌の感染が加わっている可能性があります)
- 片手だけに出ている、輪のように広がっている(白癬かどうかを確かめます)
- 仕事や家事に支障が出ている、繰り返して治りきらない
よくあるご相談
以下は、複数の診療経験をもとに再構成した典型的な例です。
当院の皮膚科外来では、「仕事柄、一日に何十回も手を洗う。ハンドクリームは塗っているが、指先の皮むけとひび割れが半年以上続いている」というご相談をよくお受けします。まず、いつから始まったか、どちらの手から出たか、手袋の使用、洗剤や消毒薬を替えた時期との重なりをうかがいます。両手の指先が同じように荒れ、連休が続くと少し落ち着くという経過であれば、刺激の積み重なりによる手湿疹と考えます。皮むけが片手だけで、輪の形に広がっているときは、その場で顕微鏡検査を行って白癬を否定します。方針としては、炎症が出ているうちは塗り薬で抑え、同時に手袋と保湿剤で保護を組み立て、4週間後に効き具合を見直すところから始めます。
当院での診療
当院では、日本皮膚科学会 皮膚科専門医が、手湿疹のタイプの見きわめと、保護と外用治療の組み立てを行っています。湿疹と白癬の区別が必要なときは、その場で真菌の顕微鏡検査を行います。かぶれの原因を調べるパッチテストは行っていないため、必要な場合は連携する医療機関へご紹介します。皮膚科の診療日は火曜・木曜・第1/第3土曜です(皮膚科のご案内)。ご予約はWeb予約からどうぞ。
まとめ
- 手湿疹の約7割は刺激の積み重なりによるもので、手は一日に何度も洗われるため治りが遅くなります
- 見た目は5つのタイプに分かれ、指紋が薄くなる・亀裂が入る・小さな水ぶくれが出るなど悪化のしかたが違います
- 塗り薬だけでは足りません。手袋による保護と、洗うたびの保湿を同時に組み立てます
- 手袋を使い始めてから悪化した、片手だけに出ているときは、かぶれや白癬を確かめます
- 亀裂から血が出る、ジュクジュクする、繰り返して治りきらない手荒れは、皮膚科でご相談ください
参考文献
- 手湿疹診療ガイドライン(日本皮膚科学会・日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会, 2018)
- 接触皮膚炎診療ガイドライン2020(日本皮膚科学会, 2020)
- 介護現場における感染対策の手引き 第3版(厚生労働省老健局, 2023)
- 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)
- Thyssen JP, et al. Guidelines for diagnosis, prevention, and treatment of hand eczema. Contact Dermatitis. 2022;86(5):357-378.
- Lodén M, et al. Treatment with a barrier-strengthening moisturizer prevents relapse of hand-eczema. Acta Derm Venereol. 2010;90(6):602-606.
