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HbA1cとは?基準値と数値の読み方

執筆:斎藤史武 公開日:2026-09-09

「健診の結果に HbA1c という見慣れない項目があり、そこだけ色がついていた」「6.2% と書かれていたけれど、高いのか低いのか見当がつかない」──健診票を前にそう感じた方は少なくありません。HbA1c(ヘモグロビン エーワンシー)は、血糖の状態を映す検査値のなかでも、数字の意味が伝わりにくい項目です。基準を少し外れたからといってすぐに治療が始まるわけではなく、かといって放置せず、生活の見直しや再検査の時期を確認しておきたい数値です。まずは、その数字の意味からご説明します。

このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(総合内科専門医・呼吸器専門医・アレルギー専門医)が、HbA1c は何を測っている数値なのか、血糖値とはどう違うのか、5.6%・6.0%・6.5% という区切りをどう読むのか、そして指摘されたあと何をすればよいのかまでをご説明します。健診で「要指導」「要精密検査」と言われた方が、次の一歩を決める材料になればと願っています。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。

HbA1cとは何を表す数値ですか?

HbA1c は、過去1〜2か月の平均的な血糖値を映す検査値です。

赤血球の中には、酸素を運ぶヘモグロビンというたんぱく質があります。血液中のブドウ糖はこのヘモグロビンと自然に結びつき、いったん結びつくと、その赤血球が入れ替わるまで離れません。血糖の高い状態が続くほど、ブドウ糖と結びついたヘモグロビンは増えていきます。HbA1c は、この結びついたヘモグロビンがヘモグロビン全体の何%を占めるかを示した数値です。

つまり HbA1c が表しているのは、採血した日の食事や体調ではなく、この1〜2か月の血糖の平均的な高さです。健診の前日だけ食事を控えても、この数値はほとんど動きません。反対に、生活を見直して血糖が下がり始めても、数値に表れるまでには時間差が出ます。HbA1c は「1か月以上前からの積み重ね」を見ているのだと考えると分かりやすいでしょう。

なお HbA1c は、健診では平成25年度から NGSP 値という国際基準で表記されています。それ以前の健診票は JDS 値で書かれており、体の状態が同じでも NGSP 値のほうがおおむね 0.3〜0.4 ポイント高い数字になります。10年以上前の結果と見比べるときはご注意ください。

HbA1cと血糖値は何が違うのですか?

違いは「いつの状態を見ているか」です。血糖値は採血したその瞬間の値、HbA1c は過去1〜2か月の平均です。

血糖値は食事の影響を強く受けます。食後すぐなら高く出ますし、朝食を抜いて受けた検査なら低めに出ます。健診で「空腹時血糖」を測るのはこのためで、絶食10時間以上あけた状態で採血する決まりになっています。一方 HbA1c は、食事から採血までの時間の影響を受けにくいため、当日の条件にかかわらず測れます。

どちらか一方に優劣があるという話ではありません。両方そろって初めて全体像が見えます。特定健診の血糖検査は、原則として空腹時血糖か HbA1c を測定します(やむを得ず空腹時以外に採血し、HbA1c も測定しない場合は、食直後を除く随時血糖が使われることもあります)。両方を実施することが望ましいとされています。空腹時血糖だけが高い方、HbA1c だけが高い方、どちらも高い方では、次に必要な検査が変わってくるためです。

日本人では HbA1c 6.5% が、空腹時血糖 126 mg/dL や 75g経口ブドウ糖負荷試験(ブドウ糖の溶けた飲み物を飲み、血糖の上がり方を調べる検査)の2時間値 200 mg/dL にほぼ対応します。健診票の血糖値と HbA1c を並べて読むときの手がかりになります。ただし、個人ごとの検査値が必ず一致するわけではありません。

HbA1cの基準値と、数値ごとの読み方を教えてください

健診では、HbA1c に2つの区切りが設けられています。5.6% が保健指導判定値、6.5% が受診勧奨判定値です。国の健診プログラムでは、この2つを軸に、次の4段階で結果を読むことになっています。

HbA1c(%)併せて見る血糖値(mg/dL)健診での判定想定される対応
〜5.5〜99基準範囲内今後も健診を継続する
5.6〜5.9100〜109保健指導判定値を超えるレベル生活習慣の見直しを。他のリスクが重なっていれば精密検査
6.0〜6.4110〜125保健指導判定値を超えるレベル生活習慣の見直しに加え、精密検査が勧められる
6.5〜126〜受診勧奨判定値を超えるレベル定期的な受診がなければ早めに医療機関へ

※空腹時血糖と HbA1c は別々の判定軸です。必ず同じ行にそろうわけではなく、片方だけ高い場合もあります。糖尿病の診断は、両方の結果や再検査を組み合わせて判断します。

ここで押さえておきたいのは、基準値を外れたことと治療を始めることは別だという点です。5.6〜5.9% でいきなり薬が始まることはありません。この範囲は「今なら生活の見直しで戻せる余地が大きい」という合図で、体重・血圧・脂質・喫煙といった他のリスクが重なっているかどうかも含めて判断します。6.0〜6.4% になると、糖尿病かどうかを詳しく調べる段階に入ります。

また、HbA1c が 5.6% 以上の方、肥満や脂質異常症のある方、ご家族に糖尿病の方がいる場合には、経口ブドウ糖負荷試験の検討が勧められています。空腹時血糖と HbA1c が基準内でも、食後だけ血糖が高くなっている方がいらっしゃるためです。

HbA1cが高ければ、それだけで糖尿病と診断されるのですか?

いいえ。HbA1c の値だけで糖尿病と診断することはありません。

糖尿病の診断では、空腹時血糖 126 mg/dL 以上、経口ブドウ糖負荷試験2時間値 200 mg/dL 以上、随時血糖 200 mg/dL 以上、HbA1c 6.5% 以上のいずれかを「糖尿病型」と呼びます。診断が確定するのは、別の日に行った検査で糖尿病型が2回以上認められたときです。しかも、そのうち1回は血糖値で確認する決まりになっており、HbA1c を何度測り直しても、それだけでは診断に至りません。ただし、血糖値が糖尿病型で、口渇・多飲・多尿・体重減少といった典型的な症状、または確実な糖尿病網膜症がある場合は、1回の検査でも診断できます。

一方、同じ1回の採血で血糖値と HbA1c がともに糖尿病型を示した場合は、その時点で診断がつきます。健診では血糖値も一緒に測られていることが多いため、両方に印がついている方は早めの受診をお勧めします。

HbA1c だけが 6.5% を超えていた場合は、血糖検査を含めた再検査を、なるべく1か月以内に行います。一方だけが糖尿病型で診断に至らなかった場合は「糖尿病疑い」として、3〜6か月以内に両方を測り直します。一度の数値で決まらないことを不安に感じられるかもしれませんが、これは、一時的な血糖上昇や HbA1c と血糖値のずれを確認し、慢性的な高血糖が続いているかを見分けるための手順です。糖尿病そのものの原因・合併症・治療の進め方は糖尿病のページにまとめています。

HbA1cが実際の血糖と食い違うことはありますか?

あります。HbA1c は赤血球のヘモグロビンを見ている検査のため、赤血球や血液の状態が変わると実際の平均血糖からずれます。

高めに出やすい状況低めに出やすい状況
鉄欠乏の状態鉄欠乏性貧血の回復期
急速に改善した糖尿病溶血(赤血球が壊れやすい状態)、失血後、輸血後
肝硬変、透析中、腎性貧血の治療中
急速に発症・悪化した糖尿病

このほか、異常ヘモグロビン血症(ヘモグロビンの形が生まれつき通常と異なる体質)では、高くも低くもずれます。急に発症したタイプの糖尿病で数値が低く出るのは、血糖がかなり高くても HbA1c がまだ追いついていないためです。

こうした事情があるため、健診で貧血や肝機能の異常も併せて指摘されている方、透析を受けている方、輸血を受けたばかりの方では、HbA1c だけで判断せず、血糖値による確認を行います。健診票は1項目ずつ拾い読みするよりも、全体を並べて読むことが大切です。

HbA1cを指摘されたら、次に何をすればよいですか?

やることは3つです。①健診結果を持って受診する ②血糖値と併せて読み直す ③変えられる生活習慣から手をつける。

6.5% 以上と書かれていた方、血糖値にも印がついていた方は、早めに受診してください。口の渇き・水をよく飲む・尿が多い・急に体重が減った、といった症状がある方は、再検査の時期を待たずに受診してください。再検査の時期と内容が決まりますし、仮に糖尿病だったとしても、早く分かるほど選べる手が多く残ります。6.0〜6.4% の方は詳しい検査に進むかどうかを診察で相談し、5.6〜5.9% の方は体重・血圧・脂質・喫煙と併せて、どこから手をつけるかを一緒に考えます。

なみきばしクリニックは、渋谷駅C1出口から徒歩7分、並木橋交差点から徒歩1分にあります。内科は総合内科専門医・呼吸器専門医・アレルギー専門医である斎藤史武医師が担当し、院内で血液検査・尿検査・心電図・胸部X線検査を行っています。渋谷区の特定健診(40〜74歳)の実施医療機関で、個人健診でも HbA1c を含むコースをご用意しています(健康診断のご案内)。診察では必要に応じて検査を追加し、その結果を踏まえて方針をご相談します。

HbA1c 以外の項目も指摘された方は、健康診断で要精密検査と言われたら健診でLDLコレステロールが高いと言われたらもあわせてご覧ください。血糖・血圧・脂質・体重はたがいに影響し合うため、まとめて見ておくと判断しやすくなります。全体像は生活習慣病のページにまとめています。

受診の際は健診結果の用紙をお持ちください。数年分そろっていれば、変化の向きが見えてきます。

診察室でよくあるご相談

以下は、複数の診療経験をもとに再構成した典型的な例です。

40代の男性が、職場の健診で HbA1c 6.2% と指摘され、結果用紙を持って来院されました。自覚症状はなく、前年の値は 5.8% だったとのことです。問診では、この1年で体重が4kg増え、夜遅い食事と週末のまとめ飲みが習慣になっていました。同じ健診で中性脂肪と血圧も基準を外れていたため、別日に空腹時の条件をそろえ、血糖・HbA1c・腎機能・脂質を測り直しました。血糖値は糖尿病型に届かず診断には至りませんでしたが、複数のリスクが重なっていたため、夜の食事量を減らすことと通勤で歩く距離を伸ばすことの2つに絞ってお願いし、3か月後の再検査をご案内しました。数値だけを追いかけるより、変えられる習慣を1〜2個に絞るほうが続きます。

よくあるご質問(FAQ)

Q. HbA1c は何%からが「高い」のですか? 健診では 5.6% 以上で保健指導の対象、6.5% 以上で受診勧奨の対象になります。ただし 5.6% を超えたことと、糖尿病であることは別です。5.6〜5.9% は生活の見直しを始める段階、6.5% 以上は受診が勧められる段階と、幅をもって読んでください。

Q. 健診の前日だけ食事を控えれば、HbA1c は下がりますか? 下がりません。HbA1c は過去1〜2か月の平均を映す数値のため、前日や当日の食事ではほとんど動きません。数値を良く見せる工夫より、今の状態を正しく知るほうが役に立ちます。

Q. 生活を変えました。次の検査でどのくらい下がりますか? 下がり方には個人差がありますが、変化が数値に表れるまでには時間差があります。HbA1c は1か月以上前の状態を反映するため、生活を変えた翌週に測っても、まだ以前の状態が残っています。再検査の間隔は、数値の水準と他のリスクに応じて診察で決めます。

Q. 健診の 6.5% と、治療中の目標値は同じものですか? 別のものです。健診の 6.5% は「詳しく調べる必要がある」ことを示す区切りで、糖尿病と診断されたあとの管理目標とは意味が異なります。合併症を防ぐための目標としては HbA1c 7.0% 未満が目安とされていますが、年齢・糖尿病になってからの長さ・低血糖の起こしやすさなどによって、お一人おひとり設定が変わります。

Q. 貧血を指摘されています。HbA1c はあてになりますか? 貧血の種類と時期によって、HbA1c は実際の平均血糖より高めにも低めにもずれます。鉄が不足している状態では高めに、鉄剤で回復していく時期には低めに出ます。この場合は HbA1c だけで判断せず、血糖値と併せて確認しますので、健診で貧血も指摘されている方は診察でお伝えください。

参考文献

※本ページは一般的な情報提供を目的としています。診断・治療方針は個々の状態により異なります。最終的な判断は診察のうえで行いますので、気になる数値のある方は医療機関にご相談ください。

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