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花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)──果物・野菜・豆乳で口がかゆくなる方へ

執筆・監修:斎藤史武 公開日:2026-10-11

 「リンゴをかじると口の中がかゆい」「桃を食べると喉がイガイガする」「豆乳を飲むと唇が腫れる」。こうした症状の多くは、花粉症と同じ仕組みで起こる花粉-食物アレルギー症候群(かふん-しょくもつアレルギーしょうこうぐん:花粉に反応する体質の方が、花粉と似たタンパク質を持つ果物や野菜に反応して症状が出る病気)です。多くは生の果物や野菜で症状が出て、十分に加熱したものは食べられることが多い一方で、豆乳や、加熱しても反応するタイプでは全身の症状になることがあり、個別の見分けが必要です。

 このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(日本内科学会 総合内科専門医・日本アレルギー学会 アレルギー専門医)が、花粉-食物アレルギー症候群の仕組み、関東で多い花粉と食べ物の組み合わせ、症状の目安と危険なサイン、検査と対処の考え方をご説明します。果物ごと・豆乳の詳しい解説は、順次このページから案内していきます。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。

花粉-食物アレルギー症候群とはどんな病気ですか?

 花粉-食物アレルギー症候群(英語の頭文字で PFAS)は、花粉症の方が、生の果物や野菜、豆乳などの植物性の食べ物を口にしたときに、口や喉を中心にアレルギー症状が出る病気です。食べた直後から数分のうちに、唇・口の中・喉のかゆみ、ヒリヒリ感、イガイガ感、腫れが起こります。症状が口の中に限られる形は「口腔アレルギー症候群(こうくうアレルギーしょうこうぐん:OAS)」とも呼ばれます。OAS は口や喉に出る症状の呼び名、PFAS は花粉との交差反応という原因の呼び名で、両者は重なりますが同じ意味ではありません。花粉症を自覚していない方に起こることもあります。

 決して珍しい病気ではありません。福井県の耳鼻咽喉科外来の患者さんと付き添いのご家族を対象にした調査では、約1割に口腔アレルギー症候群の症状があり、花粉症のある方に限ると約17%でした。

 大人になってから、それまで問題なく食べていた果物で急に症状が出ることも珍しくありません。「今まで平気だったから原因ではない」という考え方が通用しない点は、おとなの食物アレルギー全体に共通する特徴です。

どうして花粉症の人が果物で症状が出るのですか?

 花粉症の方の体は、花粉に含まれる特定のタンパク質を「異物」と覚えています。果物や野菜、大豆には、その花粉のタンパク質と形がよく似たタンパク質が含まれているものがあり、体がこれを花粉と取り違えて反応します。これを交差反応(こうさはんのう:似たもの同士を区別できずに反応すること)と呼びます。花粉そのものを食べているわけではなく、「似ている」ことが原因です。

 関係するタンパク質には、性質の違うタイプがあります。

 どのタイプのタンパク質に反応しているかで、「加熱すれば食べられるか」「どこまで避けるべきか」が変わります。この見分けが診療の要になります。

どの花粉がどの食べ物と関係しますか?

 原因になる花粉によって、症状の出やすい食べ物は決まっています。関東で診療していると、次の組み合わせをよく経験します。

原因の花粉飛ぶ時期(関東の目安)症状の出やすい食べ物の代表例
ハンノキ・シラカンバ(カバノキ科)1月ごろから春リンゴ・モモ・サクランボ・ナシ・アンズなどバラ科の果物、ヘーゼルナッツ、豆乳・大豆(豆もやしを含む)、キウイ、ニンジン・セロリ
イネ科(カモガヤなど)春から夏メロン・スイカ、トマト、オレンジ、キウイ
ブタクサ夏の終わりから秋メロン・スイカ・キュウリ・ズッキーニ、バナナ
ヨモギ夏の終わりから秋セロリ・ニンジン、スパイス類(クミン・コリアンダーなど)、マンゴー

 関東の平野部にはシラカンバがほとんど生えていないため、カバノキ科の花粉としてはハンノキが重要です。ハンノキは公園や川沿いに普通にある木で、スギより早く1月ごろから花粉を飛ばし始めます。横浜近郊の皮膚アレルギーの患者さんを調べた研究では、ハンノキに反応する体質の方の12.7%に口腔アレルギー症候群があり、反応しない方(1.9%)の6倍以上でした。スギ花粉症しか自覚がなくても、ハンノキにも反応していることは珍しくありません。

 このほか、モモ・ウメ・柑橘類などでは、熱や消化に強い GRP(ジーアールピー)というタンパク質が原因になることがあり、スギなどヒノキ科の花粉との関連が研究されています。上の表の組み合わせと違って全身症状に注意が必要なタイプで、次の節で改めて説明します。

 この表は「心当たりを整理するための地図」です。表にある食べ物を予防的に全部避ける必要はありません。症状が出たものだけを避けるのが原則で、食べて何も起きない食べ物は食べ続けて構いません。

 花粉の飛ぶ季節には、同じ食べ物でも症状が強く出やすくなります。「春だけリンゴで口がかゆい」「秋にメロンを食べると喉が変」という季節性は、この病気を疑う手がかりになります。秋の症状については秋のアレルギーの多くはダニもご覧ください。

どんな症状が出ますか?危険なサインはありますか?

 典型的な症状は、食べた直後から数分以内に始まる、唇・舌・口の中・喉のかゆみやヒリヒリ感、イガイガ感、軽い腫れです。多くは短時間で自然に治まります。口の中だけの軽い症状であれば、命に関わることはまずありません。ただし、喉の締めつけ感や息苦しさは別で、次に挙げる危険なサインに含まれます。

 一方で、次のような症状が出た場合は、口の中にとどまらない全身の反応で、注意が必要です。

 このうち、喉の締めつけ、声のかすれ、息苦しさ、強いふらつきや意識が遠のく感じが今まさにある場合や、複数の症状が急速に広がっている場合は、119番で救急車を呼んでください。アドレナリン自己注射薬を処方されている方は、説明を受けた手順に従って使ってください。重い症状を抗ヒスタミン薬だけで様子を見ることは避けてください。

 全身の症状が出やすいのは、次の場面です。

 顔やまぶたの腫れ、喉の締めつけ感、全身の蕁麻疹、息苦しさが一度でも出た方は、原因の食べ物を加工品も含めて避け、早めに受診してください。全身症状の既往がある方には、症状の内容と重症化のリスクに応じてアドレナリン自己注射薬の処方を検討し、緊急時の対応をご説明します。

どのように診断するのですか?

 診断の中心は問診です。次の点を伺います。

  1. 何を食べて、どのくらいの時間で、どんな症状が出たか
  2. 生で食べたときだけか、加熱したもの(ジャム・缶詰・焼いたもの)でも出るか
  3. 症状は口の中だけか、顔の腫れ・蕁麻疹・息苦しさなど全身に及んだか
  4. 花粉症があるか、春や秋に症状が強くなるか
  5. 運動・飲酒・痛み止め・胃薬が重なっていなかったか
  6. 同じ仲間の食べ物(リンゴとモモ、豆乳など)でも症状があるか

 そのうえで、院内の採血で、疑わしい花粉(関東ではまずハンノキ)と、心当たりのある食べ物に絞って特異的 IgE 抗体(とくいてき IgE こうたい:特定の物質に反応する抗体)を調べます。リンゴやモモで口の症状が出る方では、果物そのものの検査で多くの場合に反応が確認できます。ただし、検査が陽性でも必ず症状が出るとは限らず、陰性でもアレルギーを否定できないため、実際の症状と合わせて判断します。豆乳が疑わしいときは、大豆の中の原因タンパク質(Gly m 4)を個別に調べる検査があり、保険で受けられます。大豆全体の検査が陰性でも、この成分だけ陽性のことがあります。

 数十項目をまとめて調べる検査は、この病気の診断には向きません。花粉症の方は、食べても何も起きない果物の項目まで陽性に出ることが多く、本当に避けるべきものがかえって分かりにくくなるためです。検査は症状から項目を絞って行います。理由はやみくもなアレルギー検査はしないほうが良いで詳しく解説しています。

 血液検査だけで結論が出ないときは、果物そのものを皮膚に当てて反応を見る皮膚テスト(プリックテスト)を当院で行います。口の症状が中心の方では、この皮膚テストのほうが血液検査より診断の精度が高いとされています。全身症状があった方や「加熱しても出るタイプ」が疑われる方で、保険では調べられない成分の検査や、実際に食べて確かめる食物経口負荷試験が必要なときは、それらを行える医療機関へご紹介します。当院では負荷試験は行っていません。

どのように治療・対処するのですか?

 この病気を根本から治す治療は、今のところ確立していません。対処の基本は「症状の出る食べ物との付き合い方を決めること」で、タイプによって内容が変わります。

生の果物・野菜で、軽い口の症状だけが出る方(多くの方がこちらです)

全身の症状が出た方、加熱しても症状が出る方

 なお、スギ花粉症やダニアレルギーの舌下免疫療法は、鼻や目の症状に対する治療です。花粉の免疫療法で果物や豆乳のアレルギーが治ることは確かめられておらず、果物アレルギーのために免疫療法を始めることはお勧めしていません。花粉症そのものがつらい方には、花粉症やアレルギー性鼻炎のページで治療の選択肢をご案内しています。

なみきばしクリニックでの診療

 当院のアレルギー科では、日本アレルギー学会 アレルギー専門医の資格を持つ内科担当医が、花粉症と食物アレルギーをあわせて診療しています。花粉症の診療の中で「果物で口がかゆくなりませんか」と伺うようにしており、逆に果物の症状でいらした方には、背景にある花粉症の診断と治療も一緒に行います。

 検査は、症状から絞った項目の採血と、必要に応じて果物そのものを使う皮膚テストを院内で行います。結果は陽性・陰性の二択で終わらせず、「生なら避ける」「加熱なら食べてよい」「加工品も含めてどの製品を避ける必要があるか」というように、日々の食事に落とし込んでご説明します。全身症状があった方や、食べてよいかの最終確認が必要な方は、負荷試験を行える医療機関へご紹介します。

 渋谷駅・恵比寿駅・代官山駅からお越しいただけます。アレルギー科のご案内もあわせてご覧ください。診察のご予約はWeb予約からどうぞ。

よくあるご質問

Q1. 果物で口がかゆくなるのは、何科を受診すればよいですか? アレルギー科または内科(アレルギーを診ている医療機関)です。花粉症と一体の病気なので、花粉症の診療をしているところで相談すると、原因の花粉と食べ物をまとめて評価できます。蕁麻疹や顔の腫れが主な症状のときは皮膚科でも診てもらえますが、原因の特定には花粉の評価が要ります。

Q2. 加熱すれば本当に食べられますか? 症状が口の中だけで、熱に弱いタイプのタンパク質が原因の方は、十分に加熱したものを食べられることが多いです。ただし「蒸す・さっと炒める」では不十分なことがあり、豆乳や、モモ・柑橘類などの「加熱しても出るタイプ」は例外です。全身症状が出たことのある方は、自己判断で試さず診察でご相談ください。

Q3. パイナップルやキウイで口がヒリヒリするのもアレルギーですか? パイナップルやキウイには、タンパク質を分解する酵素が含まれていて、アレルギーがなくても口の中がヒリヒリすることがあります。酵素による刺激でも、アレルギーでも、口のヒリヒリ感は起こり、腫れや蕁麻疹がなくてもアレルギーは否定できません。食べた量、症状の出方、花粉症の有無、他の果物での症状などから判断しますので、見分けがつかないときは診察で整理します。

Q4. 子どもの果物アレルギーも同じですか? お子さんにも花粉-食物アレルギー症候群は起こり、花粉症が始まる学童期以降に増えます。ただし、お子さんの果物アレルギーがすべて同じ仕組みとは限らず、花粉との交差反応によらない食物アレルギーもあります。このページは大人の方を対象にしており、お子さんは小児科(小児アレルギー)での評価をお勧めします。

Q5. 舌下免疫療法をすれば果物も食べられるようになりますか? 現時点では、花粉の免疫療法で果物や豆乳のアレルギーが治るとは確かめられていません。舌下免疫療法は花粉症(鼻・目の症状)の治療として検討し、果物の症状は、原因の食べ物や症状の程度に応じて、生食を避けるなどの個別の対処を行います。

参考文献

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