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ステロイドの塗り薬は怖い? 強さ・塗る量・やめどきの考え方

執筆:斎藤史武 監修:高杉亜里紗 公開日:2026-09-09

処方されたステロイドの塗り薬を、心配だからと薄く伸ばし、数日でやめている。「皮膚が薄くなる」「体にたまる」と読んで、使うか迷ったまま湿疹が長引いている──外用のステロイドをめぐる不安の多くは、飲み薬のステロイドとの混同と、湿疹そのものの悪化を薬のせいと感じてしまうことから生まれます。

このページでは、なみきばしクリニックの皮膚科担当医(日本皮膚科学会 皮膚科専門医)が、塗り薬の強さの段階、塗る量の目安、部位ごとの使い分け、副作用として実際に起こること、やめていく手順をご説明します。ご相談はWeb予約からどうぞ。病気ごとの治療の進め方はアトピー性皮膚炎のページ湿疹(皮膚炎)のページにまとめてあり、ここでは塗り薬の使い方だけを扱います。

Q. ステロイドの塗り薬は、体に害のある薬なのですか?

強さと量と期間を選んで使うかぎり、日常の診療の使い方で全身の副作用が起こることはまずありません。不安の中身は3つに分けられます。飲み薬のステロイドとの混同、皮膚炎そのものの悪化を薬の副作用と感じてしまうこと、そして使い方を誤って効かず薬を信じられなくなることです。

日本皮膚科学会の患者向けQ&Aでも、飲み薬の副作用との混同、急な中止後の悪化を副作用と捉えること、塗る量が少なすぎて炎症が長引くことが、不安につながる要因として説明されています。飲み薬や点滴のステロイドは全身をめぐる薬ですが、塗り薬は炎症のある皮膚で作用し、適正な使用では飲み薬に比べて全身への影響は通常少なくなります。

迷うところは「使うか使わないか」ではなく、「どの強さを、どれだけ、いつまで」の3点です。以下はこの順にご説明します。

Q. 薬の「強さ」は、どうやって決まっていますか?

国内ではステロイドの塗り薬を、強い順にストロンゲスト(Ⅰ群)、ベリーストロング(Ⅱ群)、ストロング(Ⅲ群)、ミディアム(Ⅳ群)、ウィーク(Ⅴ群)の5段階に分けています。どの段階を使うかは、皮疹の重症度と塗る部位で決めます。

アトピー性皮膚炎では、ガイドラインに重症度に応じた選択の目安が示されています。腫れや浸潤が強い重症の皮疹にはベリーストロング(Ⅱ群)を第一に選び、それでも足りないときに部位を限ってストロンゲスト(Ⅰ群)を使います。中等度の赤みや鱗屑(りんせつ:皮膚のはがれ)が主体ならストロングかミディアム、軽い赤みならミディアム以下です。炎症に乏しく乾燥が主体の段階では、ステロイドを含まない外用薬を選びます。乾燥によるかゆみへの対処は乾燥肌(皮脂欠乏性湿疹)のページにまとめてあります。

「弱い薬から順に試す」という決め方ではありません。炎症に見合った強さで短期間に鎮め、良くなったら段階を下げます。弱すぎる薬を長く塗るほうが炎症は残り、結果として薬に触れる期間が延びます。

Q. 顔と体で薬や量が変わるのはなぜですか?

同じ薬を同じだけ塗っても、皮膚から吸収される量は部位によって大きく違うからです。前腕の外側を1とすると、頭部は3.5、首は6.0、頬は13.0、陰囊は42と報告されています。吸収の高い場所には原則としてミディアム(Ⅳ群)以下を使い、長く続けません。

塗る量の目安にはFTU(フィンガーチップユニット)を使います。口径5mmのチューブから人差し指の先端から第1関節まで押し出した量が約0.5gで、これが1FTUです。1FTUで成人の手のひら2枚分、体表面積のおよそ2%を塗れます。目標は「皮膚がしっとりする」量です。

成人の1回あたりの目安は次のとおりです。

塗る回数は、アトピー性皮膚炎の急な悪化では1日2回(朝と、入浴後の夕方)が原則とされ、落ち着いたら1日1回に減らします。ただし、1日1回で十分な薬や状態もありますので、処方時の指示を優先してください。保湿剤は1日2回のほうが保湿の効果が高く、うち1回は入浴の直後が望まれます。ステロイドと保湿剤を自己判断で混ぜると、濃度や均一性、安定性が変わる可能性があります。別々に塗るか、混合して使うかは医師・薬剤師の指示に従ってください。手に限った荒れの対処は手湿疹(主婦湿疹)のページをご覧ください。

Q. 塗り続けると皮膚が薄くなりますか?

塗った場所に起こりうる副作用として、皮膚萎縮(皮膚が薄くなること)、毛細血管が浮いて見える、ステロイドざ瘡(にきび)、多毛、細菌・真菌・ウイルスによる皮膚の感染症、塗り薬自体へのかぶれなどがあります。その多くは中止や手当てで回復しますが、皮膚線条(ひふせんじょう:皮膚が裂けたような線)は多くが元に戻りません。

起こりやすいのは、ランクの高い薬を長く使ったとき、顔面や陰部など吸収の高い部位に使ったとき、高齢の方に使ったときです。皮膚線条はわきの下、そけい部、陰部にできやすいことが分かっています。まぶたや眼の周囲は、とくに医師から指示された強さ・期間を守ってください。強い薬を頻回・長期間使用すると、眼圧上昇や緑内障のリスクが高まる可能性があります。眼の痛み、かすみ、見えにくさがある場合は早めにご相談ください。裏を返せば、皮疹の程度と部位と年齢に見合ったランクを選び、期間を区切り、良くなったら段階を下げれば、頻度は下げられます。

誤解されやすいのが色素沈着です。「ステロイドを塗ると黒くなる」と言われますが、これは皮膚炎が続いたことで生じた炎症後の色素沈着が、炎症が鎮まって表に見えてきたもので、ステロイド外用薬による変化ではありません。むしろ色素沈着を残さないためには、早い段階で炎症を鎮めることが大切だとされています。

Q. 体にたまったり、やめられなくなったりしませんか?

適正に使うかぎり、ステロイドが体内に蓄積し続けることを心配する必要は通常ありません。ただし、一部は皮膚から吸収されるため、強い薬を広い範囲に大量・長期間使う場合には、全身への影響を確認することがあります。また、長期間使った薬を突然やめると皮膚が反応することがあるため、やめるときには順序があります。

数字で見ると、2週間以上ステロイドの塗り薬で治療された小児を集めた解析では、副腎の働きの抑制がみられたのは3.8%で、副腎不全の症状との関連は認められませんでした。成人でも、ベリーストロング(Ⅱ群)を1日5〜10g程度から始めて症状に合わせて減らす使い方であれば、3か月使っても一時的で元に戻る範囲にとどまると報告されています。

短期間の使用では、炎症が治まった時点で医師の指示どおり終了できることもあります。一方、長期間使っている場合や再燃を繰り返す場合、顔・陰部に使用している場合には、急に中止せず、良い状態を保ちながらランクを下げる、塗る間隔をあける、という形で段階的に減らすことがあります。再燃を繰り返す部位には、炎症が消えた皮膚に週2回程度だけ塗って再発を防ぐ「プロアクティブ療法」があり、アトピー性皮膚炎で寛解を保つ方法として有用性が確かめられています。ただし皮膚炎が十分に良くなってから、塗る部位や期間を医師が管理して行う治療で、全員が行うものでも、ご自分の判断で始めるものでもありません。

一方、主に成人が顔や陰部に長期間使った薬を突然やめると、赤みやほてり、むくみ、ぶつぶつや膿疱が出て悪化することが知られています。この状態が疑われるときは、自己流でやめ続けずに皮膚科にご相談ください。処方薬は指示された期間で効果を確認し、悪化した場合や感染が疑われる場合は予定を待たずに受診してください。適切に治療しても改善しない場合は、塗る量や強さだけでなく診断そのものを見直す段階です。

Q. かゆいところに、手持ちの薬を塗ってもよいですか?

塗ってはいけない病気があるため、以前もらった薬の使い回しはお勧めしません。とくに顔や体にできた白癬(はくせん:いわゆるたむし)にステロイドを塗ると菌が抑えられず広がります。ステロイド外用薬の副作用の一覧には、体部白癬をはじめとする皮膚の感染症を招くことが挙げられています。

体にできる白癬は輪の形に広がり中心が治って見えるのが典型ですが、顔では境界がぼやける例が少なくなく、かゆみも強いため湿疹と見分けがつきません。診断は皮膚の一部を採って顕微鏡で菌を確かめるのが原則で、当院でもその場で観察しています。詳しくは顔や体にもできる水虫のページかゆい発疹の見分け方のページをご覧ください。

市販のステロイド外用薬には、「5〜6日間使用しても症状がよくならない場合は使用を中止し、医師・薬剤師または登録販売者に相談する」「顔面には、広範囲に使用しない」と使用上の注意が定められています。この目安を超えて塗り続けているなら、薬を替えるより診断を確かめる段階です。どの科にかかるか迷う場合はその皮膚トラブル、何科に行けばいい?もご覧ください。

Q. 子どもに使っても大丈夫ですか?

小児のアトピー性皮膚炎では、年齢だけを理由に薬の強さを下げる必要はないとされています。ただし、部位・重症度・期間は考慮します。子どもは短期間で効果が表れやすいので、注意するのは強さより使う期間です。塗る量は体格に合わせて少なくなり、1〜2歳では顔と首で1.5FTU(約0.75g)、6〜10歳では2FTU(約1g)が1回の目安になります。

小さなお子さまは皮膚からの吸収が高く、体重に比べて体表面積の割合が大きいため、条件としては全身への影響が出やすい側にあります。それでも2歳未満で副作用が現れる頻度は少ないと報告されており、心配から量を減らして湿疹がくすぶり続けるほうが、塗る期間が延びて体への負担は大きくなります。

保護者の方からは「このまま一生塗り続けるのでは」というご質問をよくいただきます。目指すのは反対で、炎症を鎮めてから段階を下げ、回数を減らし、保湿を続けて中止していく流れです。とびひや水いぼなど、うつる病気で保育園や学校を休むかどうかは子どもの肌トラブルと保育園のページにまとめてあります。

よくあるご相談

以下は、複数の診療経験をもとに再構成した典型的な例です。

当院の皮膚科外来では、「処方されたステロイドを1週間塗ったが良くならない」というご相談を伺うことがあります。問診では、どの範囲に1日何回いつから塗っているか、1本のチューブが何日でなくなったかを確かめます。伺うと、両腕と体の広い範囲に1本を1か月以上かけて使っていて、目安のFTUに照らすと塗れている量がごく一部にとどまる例が少なくありません。診察では、人差し指の第1関節までの量が手のひら2枚分にあたることをその場でお見せし、朝と入浴後の1日2回から始めて炎症が落ち着いたら1日1回へ減らす見通しをお伝えしました。副作用を心配して薄く塗ると炎症が残り、薬を使う期間がかえって延びることもご説明しています。それでも4週間で変化がなければ、量ではなく診断を見直す方針です。

当院での診療

当院では、日本皮膚科学会 皮膚科専門医が皮疹の重症度と部位から塗り薬の強さを選び、塗る量と減らし方まで一緒に決めています。湿疹に見えて白癬が隠れていないかは、真菌の顕微鏡検査でその場で確かめます。乳幼児から小学生のお子さまは小児皮膚科でも承ります(小児皮膚科のご案内)。皮膚科の診療日は火曜・木曜・第1/第3土曜です(皮膚科のご案内)。ご予約はWeb予約からどうぞ。

まとめ

参考文献

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