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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

執筆:斎藤史武 公開日:2026-09-09

のどの痛みで目が覚めて、そういえば熱っぽい気もする——そんなとき、以前ほどの緊張感はなくなった代わりに、「これは検査を受けるべきなのか」「仕事はいつから戻ってよいのか」が前より分かりにくくなった、という声をよく伺います。重症化する方の割合が下がった一方で、高齢の方やご病気をお持ちの方にとっては、今も注意の要る感染症であることは変わっていません。

このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(総合内科専門医・呼吸器専門医・アレルギー専門医)が、新型コロナウイルス感染症の症状と経過、インフルエンザとの見分け方、重症化しやすい方の特徴、検査と治療の考え方、そして症状が長引いたときの対応までをご説明します。ワクチンの費用や接種の受け方は新型コロナワクチンのご案内にまとめてありますので、あわせてご覧ください。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。

新型コロナウイルス感染症とはどんな病気ですか?

SARS-CoV-2 というウイルスによる急性の呼吸器感染症です。2021年末に流行の主体がオミクロンに置き換わって以降、重症化する患者さんの割合は低下しました。2023年5月8日からは五類感染症となり、季節性インフルエンザなどと同じ枠組みで診療されています。

感染するのは、感染した方から1〜2メートル以内の距離で、ウイルスを含む飛沫やエアロゾルを吸い込む経路が中心です。換気の悪い屋内では、感染した方から離れた場所にいても感染が起こります。飛沫や物の表面に触れた手指で、目・鼻・口の粘膜を触ることでもうつります。

ウイルスにさらされてから発症するまでの潜伏期間は1〜7日で、中央値は2〜3日です。人にうつす可能性のある期間は、発症する前から発症後5〜10日ほどとされています。症状が出る前から感染性がある点が、対策を難しくしている理由のひとつです。

なお、一度かかった後の再感染は、直前の感染から3か月間は起こりにくいとされています。ただし、起こらないわけではありません。時間が経つほど、再びかかる可能性は高くなります。

どのような症状が、どのくらい続きますか?

のどの痛み、鼻水、鼻づまりといった上気道の症状に、だるさ、発熱、筋肉痛といった全身の症状が加わることが多くみられます。のどの痛みが最初の症状になることがしばしばあり、飲み込みにくさを訴える方もいらっしゃいます。

咳は有症状の方の50〜70%にみられ、痰をともなうよりも乾いた咳が一般的です。オミクロンに置き換わる前と比べると、嗅覚や味覚の障害を起こす頻度は減りました。

軽症の場合、症状は発症から1週間以内に軽くなることが多いという経過をたどります。ただし咳だけは他の症状より長く残りやすく、これは新型コロナに限らず、かぜの後によくみられる経過です。

注意が必要なのは高齢の方です。高齢の方では熱が出ないまま、ぼんやりする・受け答えがかみ合わないといった、いつもと様子が違うという形で始まることがあります。「熱がないから違う」と考えず、普段の様子との違いを目安にしていただくほうが確実です。

インフルエンザや、かぜとの見分けはつきますか?

症状だけで見分けることはできません。国の診療の手引きでも、新型コロナの症状はインフルエンザに類似しており、臨床症状のみから両者を区別することは困難である、と明記されています。

見分けにくい相手はインフルエンザだけではありません。のどの痛み、鼻水、咳、発熱、だるさという組み合わせは、ふだん「かぜ」とひとまとめに呼ばれている多くのウイルス感染でも同じように起こります。かぜを起こすウイルスは何種類もあり、症状の見え方という点では、新型コロナもインフルエンザもその並びに入ります。

高熱で急に始まればインフルエンザ、のどの痛みから始まれば新型コロナ、といった説明を見かけることがありますが、実際には同じような始まり方をします。流行している時期にどちらが多いか、身近に感染した方がいるか、といった情報は手がかりになりますが、それだけで決めることはできません。

「前にかかったときと違う」は判断材料になりません

診察でよく伺うのが、「前のコロナはこんな症状ではなかった」というお話です。ただ、前回と違うことは、今回がコロナではない理由にはなりません。

ひとつには、流行しているウイルスが入れ替わっていくためです。オミクロンに置き換わってからは、それ以前に比べて嗅覚や味覚の障害を起こす頻度が減りました。国内の15歳以下のお子さま1万例の調査でも、オミクロンの流行前と流行後を比べると、37.5℃以上の発熱は46.5%から86.3%へ、頭痛は6.6%から15.0%へ増えた一方、味覚障害は3.6%から0.4%へ減っています。同じ「コロナ」でも、時期によって表に出る症状の組み合わせが変わります。

もうひとつは、受け取る側の免疫の状態が毎回違うためです。ワクチンを受けてからの期間、前に感染してからの期間によって、症状の出方も重さも変わります。

「前回と似ているから今回もコロナ」も、「前回と違うからコロナではない」も、どちらも当てになりません。確かめる必要がある場面では、検査で確かめます。

両者を区別する意味があるのは、区別した結果として何かが変わる場合です。使う薬が変わる、学校や職場への対応が変わる、同居されているご家族に重症化リスクの高い方がいる——そうした事情があるときは、検査で確かめる価値があります。診察では、この「区別してどうするか」を一緒に整理したうえで、検査を受けるかどうかを決めています。

なお、咳が長引いている場合は、新型コロナやインフルエンザ以外に、長引く咳気管支炎喘息など別の原因が隠れていることもあります。

重症化しやすいのはどのような方ですか?

最も重要なのは年齢です。国内でオミクロンが流行した時期の調査では、重症となった822例の年齢の中央値は72歳、亡くなった5,549例の年齢の中央値は86歳で、亡くなった方の90%以上を70歳以上が占めていました。また複数の研究で、男性は女性より重症化や死亡のリスクが高いことが示されています。

年齢に加えて、次のようなご病気や生活習慣が重症化に関係すると報告されています。

分類主なもの
代謝の病気1型・2型糖尿病肥満(BMI 30以上)
心臓・血管の病気心不全、虚血性心疾患、心筋症、脳血管疾患、高血圧
呼吸器の病気COPD、間質性肺疾患、気管支喘息、気管支拡張症
腎臓・肝臓の病気慢性腎臓病(透析を受けている方)、肝硬変
その他悪性腫瘍、免疫の働きを抑える治療を受けている方、臓器移植後、妊娠中・産後、喫煙(現在および過去)、運動不足

お子さんは一般に軽症で経過しますが、2歳未満のお子さんと、もともとご病気のあるお子さんでは重症化のリスクが報告されています。

こうした条件に当てはまる方は、症状が軽いうちに一度受診していただくほうが、選べる手立てが多くなります。

検査は受けたほうがよいですか?

全員に必要な検査ではありません。国の診療の手引きでも、重症化リスクの高い患者さんには積極的に検査を行い、治療につなげることが重要である、という考え方が示されています。裏を返せば、若く健康な方で、症状が軽く、結果によって対応が変わらないのであれば、検査をせずに休んでいただく選択も成り立ちます。

当院では新型コロナのPCR検査(核酸検出検査)と、インフルエンザの抗原検査を行っています。必要と判断した場合にご提案しますが、ご希望されない検査は行いません。逆に、検査を受けておきたい事情がある方は遠慮なくお申し出ください。

肺炎が心配な場合には、胸部エックス線検査や血液検査で状態を確かめます。ただし胸部エックス線には限界があり、新型コロナによる肺炎はエックス線写真では写らないことがしばしばあります。画像だけで判断せず、症状や酸素の値と合わせて見ていきます。

発熱やのどの痛み、1週間以内に始まった咳でご受診される場合は、感染対策外来でお受けしています。通常の診察フロアとは別の専用エリアで、入口も分けてあります。

どのように治療しますか?

多くの方にとっては、休養と水分をとりながら、熱や痛みに対して解熱鎮痛薬を使い、体がウイルスを片づけるのを待つのが治療の中心になります。咳や鼻の症状に対しても、つらさを和らげる薬を組み合わせます。

重症化のリスクをお持ちの方には、飲み薬の抗ウイルス薬を検討します。ここで大切なのは発症からの日数です。抗ウイルス薬は、症状が出てから早い時期に飲み始めることを前提とした薬で、発症から日が経ってから飲み始めた場合の効果を裏づけるデータは得られていません。「数日様子を見てから受診しよう」と考えているうちに、薬を使う時期を過ぎてしまうことがあります。

もうひとつ気をつけたいのが、飲み合わせです。抗ウイルス薬の中には、他のお薬と相互作用を起こすものがあり、腎臓の働きによって量を調整したり、使用を見合わせたりする場合があります。受診の際は、お薬手帳か、今飲んでいるお薬の一覧をお持ちください。

どの薬を使うか、そもそも使うかどうかは、年齢・持病・症状の程度・発症からの日数・飲み合わせを合わせて判断します。「リスクがあるから必ず飲む」というものでも、「軽症だから何もしない」というものでもありません。

息苦しさが強い、水分がとれない、意識がぼんやりする、唇の色が悪いといった様子があるときは、日数にかかわらず早めにご連絡ください。

咳や倦怠感が長く続くときはどうすればよいですか?

感染から回復した後も、症状が続いたり、新しい症状が出たり、いったん治まった症状がぶり返したりすることがあります。世界保健機関は、新型コロナに罹患した方にみられ、少なくとも2か月以上続き、他の病気では説明がつかないものを罹患後症状と定義し、通常は発症から3か月経った時点でもみられるとしています。

報告されている症状は幅広く、疲労感やだるさ、関節痛、筋肉痛、咳、痰、息切れ、胸の痛み、動悸、もの忘れ、集中力の低下、頭痛、気分の落ち込み、嗅覚や味覚の障害、下痢、腹痛、睡眠の問題、脱力、脱毛などがあげられています。

このうち咳については、報告により17〜34%の方にみられ、2〜3か月かそれ以上続くことがあるとされています。罹患から1年後でも2.5〜4.9%の方に咳が残っていたという報告もあります。

長引く症状の中には、新型コロナの後遺症と考えられていたものが、実は別の病気だったという場合もあります。当院は呼吸器を専門としており、咳や息切れが続く場合には、呼吸機能検査や呼気NO検査で喘息などが隠れていないかを確かめられます。「コロナの後だから仕方がない」と抱え込まず、一度ご相談ください。

ワクチンはどうしたらよいですか?

新型コロナワクチンは、2024年度から予防接種法のB類疾病に位置づけられ、年1回・秋冬に接種する定期接種として運用されています。2026年度(令和8年度)の定期接種は、10月1日から始まります。

渋谷区にお住まいで対象となる方は、費用の負担なく接種を受けられます。対象・期間・当院で接種できるワクチンの種類・自費の費用は、新型コロナワクチンのご案内にまとめてあります。インフルエンザワクチンとの同時接種もお受けしています。

よくあるご質問

熱が下がれば、もう出勤してよいですか?

五類感染症になった現在、法律で外出を制限される期間は定められていません。ただし人にうつす可能性のある期間は発症前から発症後5〜10日ほどとされていますので、熱が下がった直後はまだうつす力が残っていると考えて行動されるのが安全です。職場や学校の規定がある場合は、そちらが優先されます。

症状が軽ければ受診しなくてもよいですか?

若く健康な方で症状が軽いのであれば、休養して様子をみていただく選択も成り立ちます。ただし、高齢の方、持病のある方、妊娠中の方は、症状が軽いうちにご相談ください。使える手立てには時間の制限があるためです。

家族にうつさないためにできることはありますか?

部屋を分ける、こまめに換気する、共用部分で短時間でもマスクを使う、手を洗う、といった基本的な方法が中心になります。とくに換気は、同じ室内で長く過ごす場合に意味が大きくなります。ご家族に高齢の方や持病のある方がいらっしゃる場合は、その方の受診の目安もあわせてご相談ください。

インフルエンザと同時にかかることはありますか?

両方に同時に感染することはあり得ます。症状だけでは区別がつかないため、必要に応じて両方の検査を行います。

咳がなかなか止まりません。何科にかかればよいですか?

咳が3週間以上続く場合は、呼吸器内科でのご相談をお勧めします。当院では、咳の始まりが1週間以内の場合や発熱がある場合は感染対策外来で、1週間以上続く咳で直近にかぜ症状がない場合は通常の診察フロアで拝見しています。詳しくは長引く咳のページもご覧ください。

参考

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第10.1版 厚生労働省 2024年4月

咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2025(第2版) 日本呼吸器学会 2025年

新型コロナウイルス感染症の罹患後症状について 厚生労働省

高齢者の予防接種 渋谷区

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