「大人になってから、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロするようになった」「チーズを食べたあとにじんましんが出た」。牛乳を飲んでお腹が張る、下痢をするといった症状では、まず乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう:牛乳に含まれる糖分である乳糖を、体の中でうまく分解できない体質)を考えます。ただし、お腹の症状だけでも、牛乳のアレルギーや別のお腹の病気が原因のことがあります。大人になってから新しく起こる牛乳アレルギーもまれにあり、全身の症状につながることがあるため、症状の出方から見分けることが大切です。
このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(日本内科学会 総合内科専門医・日本アレルギー学会 アレルギー専門医)が、牛乳アレルギーと乳糖不耐症の違い、検査と見分け方、それぞれの場合の乳製品との付き合い方、受診の目安をご説明します。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。
牛乳アレルギーと乳糖不耐症は、どう違うのですか?
牛乳アレルギーは、牛乳のタンパク質に免疫が反応して起こるアレルギーです。乳糖不耐症は、乳糖を分解する酵素が足りないために起こるお腹の不調で、免疫は関わりません。仕組みが違うため、症状の出方も、避け方も違います。
| 牛乳アレルギー(主に即時型) | 乳糖不耐症 | |
|---|---|---|
| 原因 | 牛乳のタンパク質(カゼインなど)に対する免疫の反応 | 乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)の不足 |
| 主な症状 | じんましん、唇やまぶたの腫れ、咳・息苦しさ、腹痛・嘔吐。重いとアナフィラキシー | お腹の張り、ゴロゴロ鳴る、腹痛、下痢 |
| 症状が出るまで | 多くは2時間以内 | 数時間以内 |
| 量との関係 | 少量でも出ることがある | 量が多いほど出やすく、少量なら平気なことが多い |
| 乳糖を分解した牛乳 | 症状が出ることがある(タンパク質は残っているため) | 症状が出にくい |
| ヨーグルト・硬いチーズ | 症状が出ることがある | 硬いチーズは乳糖が少なく、ヨーグルトも乳糖の消化を助ける乳酸菌の働きなどにより、比較的とりやすいことがある |
| 血液検査(IgE 抗体) | 診断の手がかりになる | この検査では分からない |
大人になってから牛乳アレルギーになることはありますか?
まれですが、あります。医療機関を受診した即時型の食物アレルギーの全国調査(2020年)では、18歳以上で新しく発症した方の原因食物のうち5%以上を占めたものに、牛乳は入っていませんでした。この調査は「食物アレルギーで受診した人の中での割合」を見たもので、大人全体のうち何人が牛乳アレルギーになるかを示すものではありません。
子どもの頃からの牛乳アレルギーが、大人まで続いている方もいます。学童期まで続いた卵・牛乳・小麦のアレルギーが12歳までに治るのは、半数程度とされています。
頻度は低いものの、大人の牛乳アレルギーの患者さん30人を調べた海外の研究では、約3分の2が重い症状を経験していました。ただし、少数の患者さんを対象とした研究で、大人の牛乳アレルギー全体での重い症状の割合を示すものではありません。牛乳や乳製品でじんましんや息苦しさが出たら、少ないからと軽く考えずに受診してください。大人の食物アレルギー全体の特徴は大人の食物アレルギーで解説しています。
乳糖不耐症は、日本人の大人に多いのですか?
日本人では、成長とともに乳糖を分解する酵素の働きが弱くなることは珍しくありません。ただし、乳糖を十分に分解・吸収できないことと、実際に腹痛や下痢が出ること(乳糖不耐症)は同じではありません。牛乳や乳製品でお腹の症状を自覚する10〜68歳の46人を調べた日本の研究では、約4分の3で乳糖の吸収不良が確かめられました。これは症状のある方を集めた研究で、日本人全体の割合ではありません。
もともとの体質だけでなく、胃腸炎などで小腸が傷んだあとに、乳糖を分解しにくくなることもあります。この場合は、原因が治ると再び乳糖をとれるようになることがあります。以前は平気だったのに急に症状が出た場合や、長く続く場合は、ほかのお腹の病気がないかも確かめます。
症状は、牛乳や乳製品をとってから数時間以内に、お腹の張り、ゴロゴロ鳴る、腹痛、下痢として出ます。とる量が多いほど出やすく、少量なら平気なことが多いのが特徴です。乳糖不耐症はつらい症状を起こしますが、命に関わる病気ではありません。
どのように見分け、検査するのですか?
まず、何を、どのくらいとって、何時間後に、どんな症状が出たかを伺います。じんましん、唇やまぶたの腫れ、咳や息苦しさなど皮膚や呼吸の症状がある場合や、少量でも症状が出る場合は、牛乳アレルギーを考えます。お腹の症状だけで、量が多いときに出やすい場合は、乳糖不耐症を考えます。ただし、少量でも強い腹痛や繰り返す嘔吐が出る場合や、毎回同じような症状が出る場合は、皮膚の症状がなくても、IgE 抗体によらないタイプも含めて食物アレルギーを検討します。
牛乳アレルギーが疑われるときは、牛乳と、牛乳に含まれるタンパク質(カゼイン、β-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミン)に対する特異的 IgE 抗体(とくいてき IgE こうたい:特定の物質に反応する準備ができているかを示す抗体)を、症状に合わせて選んで血液で調べます。陽性でも症状がなければアレルギーとは限らず、陰性でも否定できないため、症状の経過と合わせて判断します。数十項目をまとめて調べる検査は勧めていません。理由はやみくもなアレルギー検査はしないほうが良いで解説しています。
乳糖不耐症はこの検査では分からず、牛乳の量を減らしたり、乳糖を分解した牛乳に替えたりして症状が変わるかが手がかりになります。
牛乳アレルギーと分かったら、何に気をつければよいですか?
- 原因の乳製品を避けます。加工食品では「乳」は表示が義務づけられた原材料なので、原材料表示で確認できます。外食や出前、量り売り・ばら売りなど容器包装されずに売られる惣菜には、表示の義務がありません。表示がない場合や分からない場合は、お店に確認してください。
- 薬にも乳の成分を含むものがあります。下痢止めのタンニン酸アルブミンや、カゼインを含む栄養剤などは、牛乳アレルギーの方には使えません。乳糖を含む吸入薬などで、ごく敏感な方に症状が出ることもまれにあります。これは乳糖そのものではなく、乳糖にごく微量に混ざる乳のタンパク質が原因です。受診先や薬局では、牛乳アレルギーがあることを伝えてください。
- 牛肉や、食品の原材料として使われる乳糖は、通常、避ける必要はありません。
- 山羊や羊の乳は牛乳とよく似たタンパク質を含むため、牛乳の代わりにはなりません。反対に、牛乳は平気なのに、山羊や羊の乳のチーズでだけ症状が出る方もまれにいます。
乳糖不耐症なら、乳製品はどうとればよいですか?
乳製品をすべてやめる必要はないことが多く、牛乳は少量ずつ食事と一緒にとる、比較的とりやすいヨーグルトや、乳糖の少ない硬いチーズ(チェダーなど)を選ぶ、乳糖を分解した牛乳に替える、といった工夫で、症状を抑えながら乳製品をとれることがあります。少量から少しずつ増やして症状が軽くなったという日本の小規模な研究もありますが、効果が確かめられた治療ではありません。症状を我慢して量を増やす必要はなく、無理なくとれる量を探すことが基本です。牛乳アレルギーが疑われる方は、自己判断で飲んで試したり、量を増やしたりしないでください。
乳製品を減らす場合は、骨ごと食べられる小魚や缶詰の魚、豆腐、カルシウムを強化した食品などで補います。牛乳の代わりに植物性の飲み物を使うときは、製品によってカルシウムの量が違うため、栄養成分表示も確認してください。
牛乳だけでなく、玉ねぎや豆類、パンでもお腹が張る場合は、腸が発酵しやすい糖質に敏感な過敏性腸症候群が関わっていることもあります。パンや麺でお腹の調子が悪いときのページもご覧ください。
どんなときに受診すればよいですか?
- 牛乳や乳製品をとったあとに、じんましん、唇やまぶたの腫れ、咳や息苦しさが出た場合は、牛乳アレルギーを疑ってアレルギー科を受診してください。
- お腹の症状だけでも、血便、体重の減少、発熱を伴う場合は、乳糖不耐症以外の病気を調べる必要があるため、早めに内科を受診してください。
喉や胸の締めつけ、声のかすれ、息苦しさ、続く強い咳込み、繰り返す嘔吐、我慢できない強い腹痛、強いふらつきや意識が遠のく感じが今まさにある場合や、複数の症状が急速に広がっている場合は、119番で救急車を呼んでください。アドレナリン自己注射薬を処方されている方は、説明を受けた手順に従って使ってください。使ったあとは、症状が軽くなっても歩いて受診せず、救急車で医療機関へ向かってください。救急車を待つ間は横になり、急に立ち上がったり歩いたりしないでください(息苦しいときは上体を起こした楽な姿勢にします)。重い症状があった場合は、自己注射薬を使っていなくても、いったん良くなっただけで受診をやめないでください。
受診の際は、とった物と量、症状が出るまでの時間、症状が出ているときの皮膚の写真があると、見分けの手がかりになります。
なみきばしクリニックでの診療
当院のアレルギー科では、日本アレルギー学会 アレルギー専門医の資格を持つ内科担当医が、大人の食物アレルギーを診療しています。牛乳や乳製品で症状が出た方には、とった量と時間、症状の種類を伺い、牛乳アレルギーが疑われる場合は、項目を絞った特異的 IgE 抗体検査を院内の採血で行います。全身の症状があった方には、症状の内容と重症化のリスクに応じてアドレナリン自己注射薬を処方し、使い方と緊急時の行動を一緒に確認します。
乳糖不耐症が疑われるお腹の症状は、内科でご相談いただけます。牛乳を実際に飲んで確かめる食物経口負荷試験は行っていないため、必要なときは行える医療機関へご紹介します。卵で症状が出る方は大人の卵アレルギーのページもご覧ください。
渋谷駅・恵比寿駅・代官山駅からお越しいただけます。アレルギー科のご案内・内科のご案内もあわせてご覧ください。診察のご予約はWeb予約からどうぞ。
よくあるご質問
Q1. 牛乳で症状が出たとき、何科を受診すればよいですか? じんましん、唇やまぶたの腫れ、息苦しさが出た場合は、アレルギー科、またはアレルギーを診ている内科です。お腹の張りや下痢だけの場合は、内科でご相談ください。喉の締めつけや息苦しさが今まさにある場合は、受診先を探す前に119番で救急車を呼んでください。
Q2. 乳糖を分解した牛乳なら、牛乳アレルギーでも飲めますか? 牛乳アレルギーの方は避けてください。乳糖を分解した牛乳でも、アレルギーの原因になるタンパク質はそのまま残っているため、症状が出ることがあります。乳糖を分解した牛乳が役立つのは、乳糖不耐症の方です。
Q3. 牛乳アレルギーでも、牛肉や、乳糖を含む食品は食べられますか? 牛肉や、食品の原材料として使われる乳糖は、通常、避ける必要はありません。ただし、乳糖には微量の乳のタンパク質が混ざっていることがあるため、乳糖を含む薬(特に一部の吸入薬など)は、製品ごとに医師・薬剤師に確認してください。
Q4. 乳糖不耐症と言われました。乳製品はすべてやめるべきですか? すべてやめる必要はないことが多いです。少量ずつ食事と一緒にとる、ヨーグルトや硬いチーズを選ぶ、乳糖を分解した牛乳に替えるといった工夫で、症状を抑えながらとれることがあります。お腹の症状に血便や体重の減少、発熱を伴う場合は、早めに受診してください。
参考文献
- 厚生労働科学研究班(研究代表者 海老澤元宏). 食物アレルギーの診療の手引き 2023.
- 日本小児アレルギー学会. 食物アレルギー診療ガイドライン 2021. 協和企画, 2021.
- 杉崎千鶴子, 他. 令和2年即時型食物アレルギー全国モニタリング調査結果. アレルギー. 2023;72:1032-1037.
- Lam HY, et al. Cow’s milk allergy in adults is rare but severe: both casein and whey proteins are involved. Clin Exp Allergy. 2008;38(6):995-1002.
- Bellioni-Businco B, et al. Allergenicity of goat’s milk in children with cow’s milk allergy. J Allergy Clin Immunol. 1999;103(6):1191-1194.
- Viñas M, et al. Allergy to goat and sheep cheese with tolerance to cow’s milk and its derivatives. Allergol Immunopathol (Madr). 2014;42(3):186-190.
- Hasegawa M, et al. Efficacy of incremental loads of cow’s milk as a treatment for lactose malabsorption in Japan. World J Clin Cases. 2023;11(4):797-808.
- National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases (NIDDK). Lactose Intolerance(Definition & Facts/Symptoms & Causes/Diagnosis/Eating, Diet, & Nutrition).
- González-Delgado P, et al. Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome in Adulthood: Clinical Characteristics, Prognosis, and Risk Factors. J Allergy Clin Immunol Pract. 2022;10(9):2397-2403.
- 厚生労働科学研究班(研究代表者 海老澤元宏). 食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022.
- 日本アレルギー学会. アナフィラキシーガイドライン2022. 2022.
