卵料理を食べたあとにじんましんや腹痛が出て、「大人になってから卵アレルギーになったのでは」と心配される方は少なくありません。大人になって新しく卵アレルギーが起こることは少なく、一緒に食べた別の材料や、運動・痛み止めの重なり、食中毒などアレルギーではない不調が原因のこともあります。まずは本当に卵が原因かを確かめることをお勧めします。ただし、まれでも大人の卵アレルギーは起こり、鳥を飼っている方に起こる型のように、大人に多い型もあります。症状が出たら自己判断で済ませず、受診してください。
このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(日本内科学会 総合内科専門医・日本アレルギー学会 アレルギー専門医)が、大人で卵アレルギーが起こる頻度と型、卵ではなかった例、血液検査で卵が陽性と言われたときの考え方、受診の目安をご説明します。牛乳で症状が出る場合は大人の牛乳アレルギーと乳糖不耐症のページで解説しています。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。
大人になってから卵アレルギーになることはありますか?
あります。ただし、大人になって新しく起こる食物アレルギーの中では少数です。医療機関を受診した即時型の食物アレルギーの全国調査(2020年)では、18歳以上で新しく発症した183人の原因食物のうち、5%以上を占めたのは小麦、甲殻類、果物、魚、大豆、木の実で、卵は入っていませんでした。この調査は「食物アレルギーで受診した人の中での割合」を見たもので、大人全体のうち何人が卵アレルギーになるかを示すものではありません。
大人の食物アレルギー全体の特徴は大人の食物アレルギーで、果物や野菜で口がかゆくなるタイプは花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)で解説しています。
一方で、子どもの頃からの卵アレルギーが大人まで続いている方もいます。学童期まで続いた卵・牛乳・小麦のアレルギーが12歳までに治るのは、半数程度とされています。
少ないとはいえ、ゼロではありません。卵を食べたあとにじんましん、唇やまぶたの腫れ、息苦しさなどが出たら、「大人には珍しいから違うだろう」と考えずに受診してください。
大人の卵アレルギーには、どんな型がありますか?
大人の卵アレルギーには、食べること以外のきっかけで始まる型があります。型によって、避ける卵の範囲(生だけか、加熱しても出るか)や、鳥や化粧品から離れる必要があるかが変わります。
子どもの頃から続いている、または再び出てきた型
子どもの頃からの卵アレルギーが続いている方のほか、頻度は分かっていませんが、いったん食べられるようになったあと大人になって再び症状が出た例もあります。
鳥を飼っている方に起こる「鳥-卵症候群」
インコなどの鳥を長く飼っている方が、羽毛や糞に含まれるタンパク質を吸い込み続けるうちに体が反応する準備をし(感作:かんさ)、そのタンパク質とよく似た卵黄の成分(α-リベチン:アルファ-リベチン)にも反応するようになる型です。鳥-卵症候群(とり-らんしょうこうぐん)と呼ばれ、主に大人の女性に多いとされています。
- 卵白よりも卵黄で症状が出やすい
- 原因の成分が熱で壊れやすいため、生卵や半熟卵で症状が出やすい
- 鶏肉で症状が出ることもある(十分に加熱した鶏肉では比較的少ないとされます)
- 鳥のそばで鼻水・くしゃみ・咳・喘息のような症状が出ていることがある
鳥との接触をやめたあと、卵が食べられるようになった例もあります。
化粧品の関与が疑われた例
ダチョウの卵黄エキスを含む化粧品を、それぞれ約5年、約1年使っていた大人の女性2人が、半熟卵や生の卵黄で全身のアレルギー症状を起こした国内の報告があります。病歴と検査の結果から、化粧品が感作(体が反応する準備をすること)や症状の悪化に関わった可能性が疑われました。
仕事で卵の粉を吸い込む型(職業性)
製菓・製パンなどで卵の粉を日常的に吸い込む方では、まず鼻炎や喘息が起こり、のちに卵を食べたときにも症状が出るようになることがあります。手荒れのある皮膚から食品のタンパク質に感作される可能性もあるため、仕事で食品に触れる機会や手荒れについても伺います。
このほか、はっきりしたきっかけが見当たらないまま、生や半熟の卵でだけ症状が出るようになる方もいます。
卵だと思ったら、実は別の原因だったということはありますか?
あります。「卵を食べて症状が出た」と思っていても、一緒に食べた別の材料や、アレルギー以外の原因が関わっていることがあります。
同じ料理に入っていた別の材料
オムライスやお好み焼き、天ぷらの衣には小麦、ケーキやプリンには牛乳、茶わん蒸しにはエビがよく使われ、卵と一緒に食べた材料のほうが原因のことがあります。大人で新しく発症しやすいのは小麦や甲殻類なので、料理全体の材料を振り返ります(大人の小麦アレルギー・甲殻類アレルギー)。開封後に常温で長く置いた小麦粉やお好み焼き粉ではダニが増え、それを使った料理でアレルギー症状を起こした例があります。
運動や痛み止めが重なったとき
食べたあとに運動などが重なったときに、じんましんや息苦しさが出るタイプがあります。食物依存性運動誘発アナフィラキシー(しょくもついぞんせいうんどうゆうはつアナフィラキシー)と呼ばれ、痛み止め(解熱鎮痛薬)、飲酒、入浴、疲労なども引き金になります。同じ物を食べても症状が出たり出なかったりするため原因が分かりにくく、大人では小麦やエビが原因のことが多いタイプです。詳しくは食後の運動で起こるアナフィラキシーをご覧ください。
アレルギーではない不調
- 食中毒: 生卵や半熟卵を食べて半日から2日ほどたってから、発熱を伴う強い腹痛や下痢、嘔吐が出た場合は、サルモネラ菌などによる食中毒が考えられます。
- お腹の不調: 食後にお腹が張る、下痢をするといった症状は、アレルギー以外の原因で起こることが多くあります。過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん:検査で異常がないのに、腹痛と便通の乱れが続く病気)のように、食事をきっかけに症状が出る病気もあります(パンや麺でお腹の調子が悪いとき)。
- 食べ物と関係のないじんましん: じんましんは、食べ物や薬のアレルギーが原因のものは一部で、大多数ははっきりした原因が見つからないタイプです(蕁麻疹)。
食物アレルギーかどうかを見分ける手がかり
食物アレルギー(即時型)を疑う手がかりは、次のような点です。
- 食べてから2時間以内に症状が出た
- じんましん、唇やまぶたの腫れ、咳や息苦しさなど、皮膚や呼吸の症状がある
- 同じ物を食べるたびに、似た症状が出る
反対に、発熱を伴う場合や、時間がたってからお腹の症状だけが出る場合、食べるたびに症状が違う場合は、食中毒などアレルギー以外の原因も考えます。ただし、まれに、卵を食べて数時間後に強い腹痛や繰り返す嘔吐・下痢が出る、IgE 抗体によらない食物アレルギーもあります。同じ食べ物で繰り返す場合は、じんましんがなくてもご相談ください。
血液検査で卵が「陽性」と言われたら、卵を避けるべきですか?
普段から卵を食べていて症状が出ていないなら、検査の結果だけを理由に卵をやめる必要はありません。血液検査で調べる特異的 IgE 抗体(とくいてき IgE こうたい:特定の物質に反応する準備ができているかを示す抗体)が陽性というのは、体がその物質に反応する準備をしている状態(感作)を示すもので、実際に症状が出るアレルギーと同じではないためです。
卵に関する血液検査には、主に次の3つがあります。
- 卵白: 卵の白身全体に対する抗体
- オボムコイド: 卵白に含まれるタンパク質のひとつで、加熱しても性質が変わりにくいとされています。この抗体が高い方は、加熱した卵でも症状が出やすい目安になります
- 卵黄: 卵の黄身に対する抗体。鳥-卵症候群が疑われるときの手がかりになります
ただし、これらの数値の目安は主に子どもの研究から得られたもので、大人にそのまま当てはまるとは限りません。鳥-卵症候群の原因成分(α-リベチン)を個別に調べる検査は、保険では受けられません。
数十項目をまとめて調べる検査は、卵のアレルギーの診断には向きません。原因の見当がつかないときの目安という位置づけの検査で、症状のない食べ物まで陽性に出て、かえって判断が難しくなることがあります。理由はやみくもなアレルギー検査はしないほうが良いで詳しく解説しています。
反対に、検査が陰性でもアレルギーを否定できないことがあります。卵でじんましんや息苦しさが出たことがある方は、陰性でも自己判断で食べて試さず、ご相談ください。結論は、検査の数字と「何を、どのくらい食べて、どのくらいたって、どんな症状が出たか」という経過を合わせて出します。
卵で症状が出たとき、どんな場合に受診すればよいですか?
卵を含む料理を食べたあとに、次のような症状が出た方は、アレルギー科の受診をお勧めします。
- じんましんやかゆみ、唇・まぶたの腫れ
- 咳込み、ゼーゼーする、息苦しさ
- 食べてすぐに出た吐き気・嘔吐・腹痛
- 同じ物を食べるたびに症状が出る
- 鳥を飼っていて、生卵や半熟卵、鶏肉で口の中のかゆみなどが出る
このうち、喉や胸の締めつけ、声のかすれ、息苦しさ、続く強い咳込み、繰り返す嘔吐、我慢できない強い腹痛、強いふらつきや意識が遠のく感じが今まさにある場合や、複数の症状が急速に広がっている場合は、119番で救急車を呼んでください。アドレナリン自己注射薬を処方されている方は、説明を受けた手順に従って使ってください。使ったあとは、症状が軽くなっても歩いて受診せず、救急車で医療機関へ向かってください。救急車を待つ間は横になり、急に立ち上がったり歩いたりしないでください(息苦しいときは上体を起こした楽な姿勢にします)。重い症状があった場合は、自己注射薬を使っていなくても、いったん良くなっただけで受診をやめないでください。
受診の際は、食べた料理や原材料表示の写真、症状が出ているときの皮膚の写真、食べた時刻と症状が出た時刻、前後の運動・飲酒・薬のメモがあると、原因を絞る手がかりになります。
卵アレルギーと分かっている方は、市販薬にも注意が必要です。卵白から作られる成分(リゾチーム塩酸塩)を含むかぜ薬・鼻炎薬・トローチ・目薬などは、卵アレルギーの方は使えません。購入時に成分表示を確認するか、薬剤師にご相談ください。加工食品では卵は表示が義務づけられた原材料ですが、外食や出前、量り売り・ばら売りなど容器包装されずに売られる惣菜には、表示の義務がありません。表示がない場合や分からない場合は、お店に確認してください。
なみきばしクリニックでの大人の食物アレルギーの診療
当院のアレルギー科では、日本アレルギー学会 アレルギー専門医の資格を持つ内科担当医が、大人の食物アレルギーを診療しています。卵で症状が出た方には、料理の材料、生か加熱か、症状が出るまでの時間、運動や薬の重なり、鳥の飼育や仕事、化粧品、子どもの頃のアレルギーを伺い、本当に卵が原因かを整理したうえで、疑わしいものに絞って特異的 IgE 抗体を院内の採血で調べます。結果は陽性・陰性の二択で終わらせず、「生や半熟は避ける」「加工品も含めて避ける」「今までどおり食べてよい」というように、日々の食事に落とし込んでご説明します。全身の症状があった方には、症状の内容と重症化のリスクに応じてアドレナリン自己注射薬を処方し、使い方と緊急時の行動を一緒に確認します。
実際に食べて確かめる食物経口負荷試験、運動との関係を確かめる誘発試験、保険では調べられない成分の検査、胃カメラ・大腸カメラは当院では行っていません。必要なときは、それらを行える医療機関へご紹介します。お腹の症状が中心でアレルギー以外の原因が考えられる場合は、内科で引き続き診療します。
渋谷駅・恵比寿駅・代官山駅からお越しいただけます。アレルギー科のご案内もあわせてご覧ください。診察のご予約はWeb予約からどうぞ。
よくあるご質問
Q1. 大人の卵アレルギーは何科を受診すればよいですか? アレルギー科、またはアレルギーを診ている内科です。大人の食物アレルギーは、食べた物に加えて運動や薬の重なり、鳥の飼育や仕事など生活全体から原因を探すため、大人の食物アレルギーを診ている医療機関をお勧めします。喉の締めつけや息苦しさなどがあるときは、受診先を探す前に119番で救急車を呼んでください。
Q2. よく加熱した卵なら食べられますか? 原因のタンパク質によって変わります。生や半熟の卵でだけ症状が出て、十分に加熱した卵は食べられる方もいれば、オボムコイドに反応している方などでは、加熱した卵でも症状が出やすくなります。全身の症状が出たことのある方は、自己判断で試さず、診察でご相談ください。
Q3. 卵アレルギーがあっても、インフルエンザワクチンは受けられますか? 卵アレルギーがあっても、インフルエンザワクチンは通常接種できます。国内の診療の手引きや海外の推奨では、卵アレルギーの重さにかかわらず接種できるとされています。一方、ワクチンの添付文書では接種に注意が必要な方に位置づけられているため、過去の症状を予診で確認して接種を判断します。予診では、卵で起きた症状と、過去のワクチン接種でアレルギー反応が起きたことがあるかをお伝えください。ワクチンそのものでアナフィラキシーを起こしたことがある方は、別に接種できるかを判断します。当院の予防接種は予防接種のご案内をご覧ください。
Q4. 卵アレルギーと言われました。卵殻カルシウムや鶏肉も避けるべきですか? 卵殻カルシウム(卵の殻から作るカルシウムで、加工食品に使われます)は、原則として避ける必要はありません。鶏肉は卵とは別の食品ですが、鳥-卵症候群の方では鶏肉で症状が出ることもあるため、どこまで避けるかは型に合わせて診察で決めます。
Q5. 子どもの頃の卵アレルギーは治ったと言われました。大人になってまた出ることはありますか? 頻度は分かっていませんが、大人になって再び症状が出た例はあります。普段から卵を食べていて症状がなければ、そのまま食べ続けて構いません。卵を食べたあとにじんましんや息苦しさなどが出た場合は、昔治ったからと考えずに受診してください。
Q6. 牛乳でも症状が出ます。卵と同じように考えればよいですか? 牛乳を飲んでお腹が張る、下痢をするといった症状では、まず乳糖をうまく分解できない乳糖不耐症を考えます。じんましんや息苦しさが出る牛乳アレルギーとは仕組みも避け方も違うため、大人の牛乳アレルギーと乳糖不耐症をご覧ください。
参考文献
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