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パンや麺でお腹の調子が悪い:アレルギー以外の小麦の不調

執筆・監修:斎藤史武 公開日:2026-10-13

 「パンやパスタを食べるとお腹が張って苦しい」「ラーメンやうどんのあとに下痢をしやすい」。こうした不調は、小麦アレルギー以外でも起こります。過敏性腸症候群や、小麦に含まれる糖質(フルクタン)への反応、仕組みがまだはっきりしない非セリアック・グルテン過敏症などが考えられ、日本ではまれですが、小腸に炎症が起こるセリアック病という病気もあります。自分でグルテンフリーを始める前に、早めに受診すべき症状がないかを確かめ、必要な検査を済ませておくことをお勧めします。

 このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(日本内科学会 総合内科専門医・日本アレルギー学会 アレルギー専門医)が、小麦アレルギーとの見分け方、3つの不調の違い、自己判断のグルテンフリーの落とし穴、受診の目安と調べる順番をご説明します。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。

小麦でお腹の調子が悪くなるのは、アレルギーとは違うのですか?

 小麦を食べたあとの不調では、代表的に次のような病気や仕組みを考えます。過敏性腸症候群と非セリアック・グルテン過敏症には、重なる部分もあります。このうち小麦アレルギーは、食後に急速にアナフィラキシーを起こし、命に関わることがあります。

種類仕組み症状の出方
小麦アレルギー免疫(IgE 抗体)が小麦のタンパク質に過剰に反応する食後すぐから2時間以内のじんましん・腫れ・息苦しさ・腹痛・嘔吐。食後の運動で起こる型もある
セリアック病グルテンをきっかけに、免疫が自分の小腸を傷つける続く下痢・お腹の張り・体重減少・貧血。日本ではまれ
非セリアック・グルテン過敏症仕組みはまだはっきりしない食後数時間〜数日以内にお腹の張り・腹痛・便通の変化。疲れ・頭痛を伴うことも
過敏性腸症候群とフルクタン腸の知覚や動きの異常などが関わる。フルクタンによるガスや水分の増加が症状の引き金になることがあるお腹の張り・腹痛・下痢や便秘。小麦以外の食品でも起こる

 食べてから2時間以内に、じんましん、唇やまぶたの腫れ、喉のイガイガ、息苦しさが出る場合や、食後に運動や入浴をしたあとに症状が出る場合は、小麦アレルギーの可能性があります。大人の小麦アレルギーと食物依存性運動誘発アナフィラキシーをご覧ください。喉の締めつけ、息苦しさ、意識が遠のく感じが今まさにある場合は、119番で救急車を呼んでください。

 このページで扱うのは残りの3つです。いずれも症状の中心はお腹の張り・腹痛・下痢や便秘で、アレルギーの血液検査(特異的 IgE 抗体:とくいてき IgE こうたい:特定の食べ物に反応する抗体)では見つかりません。大人の食物アレルギー全体については大人の食物アレルギーで解説しています。

セリアック病とはどんな病気ですか?日本人にもありますか?

 セリアック病(小麦などに含まれるグルテンというタンパク質をきっかけに、免疫が自分の小腸の粘膜を傷つける病気)は、自己免疫の病気です。栄養を吸収する小腸の表面の細かい突起(絨毛:じゅうもう)が傷んで平らになり、下痢やお腹の張り、体重減少が起こります。栄養の吸収が落ちるため、鉄が足りないことによる貧血や疲れやすさ、骨粗しょう症のきっかけになることもあります。お腹の症状がほとんどない方もいます。

 欧米では人口の約1%にみられますが、日本ではまれです。健診を受けた大人約2,000人を調べた国内の研究では、確定したのは1人(0.05%)でした。セリアック病が起こるには HLA-DQ2(エイチエルエー・ディーキューツー:免疫に関わる遺伝子の型)などの体質が関わります。この型を持つ人は欧米の白人では4人に1人ほどですが、日本人では1%に満たず、もともと小麦を食べる量が少なかったこととあわせて、少なさの理由と考えられています。

 ただし、同じ研究で、原因のわからないお腹の症状が続く方47人を調べたところ、1人がセリアック病と診断されており、日本でもゼロではありません。子どもの病気と思われがちですが、大人になってから見つかることもあります。日本ではこの病気自体があまり知られていないため、下痢やお腹の張りが続いて過敏性腸症候群と診断され、セリアック病が見過ごされている方もいると考えられます。

 血液検査では主に抗 tTG-IgA 抗体(こう ティーティージー アイジーエー こうたい)を調べ、検査を正しく読むために IgA の量も確認します。大人では、胃カメラで十二指腸の組織を少し採って顕微鏡で調べる検査(十二指腸生検:じゅうにしちょうせいけん)と合わせて診断するのが基本です。日本のようにセリアック病の少ない地域では、血液検査が陽性でも組織検査で確定しない方が多いため、血液検査だけで結論を出さないことが大切です。治療は、小麦・大麦・ライ麦を含む食品を生涯にわたって厳格に避けるグルテンフリーの食事で、調味料や加工食品に含まれる分まで気を配る必要があります。

非セリアック・グルテン過敏症とはどんな状態ですか?

 非セリアック・グルテン過敏症(ひセリアック・グルテンかびんしょう:セリアック病でも小麦アレルギーでもないのに、小麦を食べると不調が出る状態。非セリアック小麦過敏症とも呼ばれます)では、お腹の張り、腹痛、下痢や便秘に加えて、疲れやすさ、頭痛、頭がぼんやりする感じなど、お腹以外の症状を伴うことがあります。症状は食後数時間から数日以内に現れることがありますが、出るまでの時間には個人差があり、時間だけで診断することはできません。大人の女性に多いとされています。

 海外の調査では、大人の約1割が「グルテンや小麦を含む食品で不調が出る」と自己申告しています。ただし、これはグルテン過敏症と診断された方の割合ではありません。ところが、グルテン入りの食品とグルテンを含まない食品を、本人にも医師にもわからない形で食べ比べる試験(二重盲検試験:にじゅうもうけんしけん)を行うと、グルテンのときだけ症状が出る方は16〜30%にとどまります。症状そのものは本物ですが、原因がグルテンとは限りません。小麦に含まれるフルクタンなどの糖質が原因だった例や、「小麦を食べた」と思うこと自体が症状を強めている例が多いことがわかってきました。

 血液検査などで診断できる目印はありません。セリアック病と小麦アレルギーを否定したうえで、医師と相談しながら、一定期間(6週間ほど)グルテンを除いて症状が軽くなるかを確かめ、その後に戻して症状の変化を見ます。ただし、ふつうの小麦食品で症状が再び出ても、グルテンとフルクタンのどちらが原因かまでは確定できないことがあります。

過敏性腸症候群と小麦(フルクタン)はどう関係しますか?

 過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん:腹痛と便通の異常が続き、症状を説明する炎症や腫瘍などの病気が見つからない状態)は、日本人のおよそ1割にみられます。腹痛が排便と関係して起こり、便の回数や形が変わるのが特徴で、下痢が多い型、便秘が多い型、両方を繰り返す型があります。

 小麦には、フルクタン(小腸で吸収されにくい糖質の一種)が多く含まれています。こうした糖質はまとめて FODMAP(フォドマップ:小腸で吸収されにくく、大腸で発酵しやすい糖質のグループ)と呼ばれ、大腸に届くと腸内細菌に分解されてガスが発生し、腸の中に水分を引き込みます。腸が敏感な過敏性腸症候群の方では、これがお腹の張り・腹痛・下痢の引き金になります。FODMAP は小麦のほか、玉ねぎ、豆類、リンゴ、牛乳、はちみつなどにも多く含まれます。「パンでも、玉ねぎをたっぷり使った料理でもお腹が張る」という場合は、グルテンより FODMAP が関わっている可能性があります。牛乳で起こる症状とアレルギーとの見分け方は、大人の牛乳アレルギーと乳糖不耐症のページでご説明しています。

 食事の工夫は、まず脂っこい食事、カフェイン、香辛料の多い料理、牛乳・乳製品など、症状を起こしやすい食品を控えることから始めます。FODMAP の多い食品をいったん減らし、症状が落ち着いたら1種類ずつ戻して自分に合わないものを見つける「低 FODMAP 食」は、海外の研究で症状を軽くする効果が示されています。ただし、日本人での続けやすさや効果はまだ十分に確かめられておらず、制限する食品も多いため、自己流で長く続けず、期間を区切って医師と相談しながら行うことをお勧めします。食事だけで落ち着かない場合は、症状の型に合わせた薬も使います。

グルテンフリーを自分で始めてもよいですか?

 症状が軽くなるならと、自己判断でグルテンフリーを始める方は少なくありません。始める前に、次の点を知っておいてください。

 セリアック病と診断された方には、生涯にわたる厳格なグルテンフリーが必要です。非セリアック・グルテン過敏症が疑われる方では、医師と相談して食事の調整を試み、症状に応じて制限の範囲や続ける必要があるかを見直します。小麦を完全に除く食事を始める前に、一度ご相談ください。セリアック病が疑われる場合は、除去を始める前に検査を行います。

遅延型の IgG 検査で「小麦アレルギー」と言われたのですが?

 多くの食べ物に対する IgG 抗体(アイジージーこうたい)をまとめて調べ、『遅延型フードアレルギー検査』として結果を出す検査があります。この検査で小麦が陽性と出ても、それだけで小麦アレルギーや、小麦が不調の原因だと判断することはできません。

 IgG 抗体は、ふだん食べている食べ物に対して健康な人にもできる抗体で、食べる量が多いほど高く出る傾向があります。実際に食べて症状が出るかを確かめる試験の結果とも一致しないため、日本アレルギー学会は、食物アレルギーの原因を診断する方法としては推奨しないという見解を示しています。陽性の結果だけを理由に小麦を除くと、本来は避けなくてよい食べ物まで減らし、栄養が偏るおそれがあります。

 お腹の不調が続いている場合は、IgG の結果とは別に、このページでご説明する順番で原因を整理します。IgG抗体の検査で分かること・分からないことは『遅延型フードアレルギー検査』(IgG検査)で食物アレルギーは分かる?、アレルギー検査の考え方はやみくもなアレルギー検査はしないほうが良いで解説しています。

どんな症状があれば早めに受診すべきですか?

 次のような症状がある場合は、小麦との関係を考える前に、大腸や小腸の病気がないかを調べる必要があります。食事の工夫で様子を見ずに、早めに受診してください。

 これらに当てはまる場合は、大腸カメラなどの検査が必要になることがあります。当院では胃カメラ・大腸カメラを行っていないため、診察と血液検査で状況を確かめたうえで、検査を行える医療機関へご紹介します。

受診したら、どのような順番で調べるのですか?

 小麦に関係するお腹の不調では、次の順番で原因を絞り込みます。

  1. 問診:何を、どのくらい食べて、何時間後に、どんな症状が出たか。パンや麺だけか、玉ねぎや豆、牛乳でも出るか。食べてすぐのじんましんや息苦しさ、食後の運動での症状はないか。食事と症状の記録(食事日誌)があると役立ちます。
  2. 早めに受診すべき症状の確認:上の項目に当てはまれば、大腸などの検査を優先します。
  3. 血液検査など:貧血、炎症、甲状腺の働きなど、お腹の症状を起こすほかの病気がないかを調べます。小麦アレルギーが疑われる場合は、小麦の特異的 IgE 抗体も調べます。
  4. セリアック病の評価:貧血や体重減少、続く下痢など、問診や診察からセリアック病が疑われる場合は、その時点で、血液検査と組織検査を行える大きな病院へご紹介します。
  5. 過敏性腸症候群・非セリアック・グルテン過敏症の評価と治療:ほかの病気が否定されれば、症状の経過から過敏性腸症候群かどうかを判断し、食事の工夫と薬で治療します。小麦との関係が強く疑われる場合は、セリアック病や小麦アレルギーを含むほかの病気について必要な評価を済ませたうえで、医師と相談しながら期間を区切って食事を調整し、再び食べたときの症状の変化を確認します。ふつうの小麦食品で症状が再び出ても、グルテンとフルクタンのどちらが原因かまでは確定できないことがあります。

なみきばしクリニックでの診療

 当院の内科では、過敏性腸症候群をはじめ、お腹の張り・腹痛・下痢や便秘が続く方の診療を行っています。担当する内科担当医は日本内科学会 総合内科専門医で、日本アレルギー学会 アレルギー専門医でもあるため、「小麦アレルギーなのか、それ以外の不調なのか」の見分けから一緒に整理できます。

 血液検査は院内の採血で行い、小麦の特異的 IgE 抗体も調べられます。セリアック病の血液検査(抗 tTG 抗体)は当院では行っていないため、問診などからセリアック病が疑われる場合は、その時点で検査を行える大きな病院へご紹介します。

 胃カメラ・大腸カメラは行っていないため、セリアック病の確定に必要な十二指腸の組織検査や、早めに受診すべき症状があるときの精密検査は、行える医療機関へご紹介します。小麦アレルギーが疑われる場合の小麦のプリックテスト(皮膚テスト)や食物経口負荷試験も、行える医療機関へご紹介します。

 渋谷駅・恵比寿駅・代官山駅からお越しいただけます。内科のご案内・アレルギー科のご案内もあわせてご覧ください。診察のご予約はWeb予約からどうぞ。

よくあるご質問

Q1. 小麦でお腹の調子が悪いとき、何科を受診すればよいですか? 内科、または消化器内科です。食べてすぐのじんましんや息苦しさがあるときは、アレルギー科でご相談ください。当院では内科で診察し、アレルギーかどうかの見分けもあわせて行います。内視鏡検査が必要な場合は、行える医療機関へご紹介します。

Q2. 「グルテン不耐症」とセリアック病は同じものですか? 「グルテン不耐症」という言葉は、セリアック病と非セリアック・グルテン過敏症のどちらを指しても使われています。両者は、検査の方法も、どこまで小麦を避けるかも違うため、診察では区別して考えます。

Q3. グルテンフリーにしたら調子がよくなりました。グルテン過敏症ということですか? そうとは限りません。グルテンを除くと、フルクタンなどの糖質も同時に減り、食事全体も見直されるため、どれが効いたのかは区別できません。グルテンだけを食べ比べる試験では、グルテンのときだけ症状が出る方は一部です。セリアック病の検査は小麦を食べている状態で行う必要があるため、続ける前に一度ご相談ください。

Q4. 米粉やそばなら食べても大丈夫ですか? セリアック病の方は、小麦に加えて大麦・ライ麦も避けますが、米、とうもろこし、そばなどの穀物は食べられます。ただし、そばには小麦粉を混ぜた製品も多いため、原材料の表示を確かめてください。過敏性腸症候群で FODMAP が関わっている場合は、合わない食品に個人差があるため、症状の記録から一緒に判断します。

Q5. 症状が軽ければ、様子を見てもよいですか? 早めに受診すべき症状がなく、日常生活への影響が小さければ、食事と症状の記録をつけながら様子を見てもかまいません。ただし、小麦を完全に除く食事を始める前に、一度ご相談ください。セリアック病が疑われる場合は、除去を始める前に検査を行います。症状が続く、強くなる、上に挙げた早めに受診すべき症状が出てきた、という場合は受診してください。

参考文献

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