「昼食のあと駅まで急いで歩いたら、全身にじんましんが出て息苦しくなった」「同じパンを食べても、何ともない日もある」。こうした症状の背景には、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(しょくもついぞんせいうんどうゆうはつアナフィラキシー:特定の食べ物を食べたあとに運動などが重なったときに、強いアレルギー症状が出る病気)が隠れていることがあります。多くは食べただけ、運動しただけでは症状が出ないため気づかれにくく、対策の中心は、原因の食べ物を確かめること、食べてから運動するまでの時間を空けること、発作が出たときの備えをしておくことの3つです。
このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(日本内科学会 総合内科専門医・日本アレルギー学会 アレルギー専門医)が、この病気の症状と起こりやすい場面、原因になりやすい食べ物、発作が出たときの対応、診断の進め方、日常生活の注意をご説明します。小麦が原因の場合の詳しい解説は大人の小麦アレルギー、エビやカニが原因の場合は甲殻類アレルギーのページをご覧ください。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーとはどんな病気ですか?
特定の食べ物を食べたあとに運動などが重なることで、じんましんや息苦しさなどのアレルギー症状が誘発される病気です。英語の頭文字から FDEIA とも呼ばれます。通常は食べるだけ、運動するだけでは症状が出ませんが、痛み止めや飲酒などが重なると、運動をしなくても症状が出ることがあります。食べ物に対するアレルギーの抗体(IgE 抗体)が関わる即時型のアレルギーで、運動は、アレルギー症状が出るきっかけの「しきい値」を下げる役割をしていると考えられています。
初めて起こる年齢は10代から20代が多いものの、大人になってから起こることも珍しくありません。大人の食物アレルギーでは、口腔アレルギー症候群(花粉症に伴って果物などで口がかゆくなるタイプ)と並んで多いタイプです。食物アレルギーの型の中でも、アナフィラキシーショック(血圧が下がって意識が遠のく、命に関わる状態)に至る可能性が高く、自然には治りにくいとされているため、一度でも症状が出た方は原因を確かめておくことが大切です。
どんな症状が出ますか?どんな運動で起こりますか?
多くは、食べてから2時間以内に運動をしているうちに症状が出ます。食後4時間ほどたってから起こった報告もあります。
はじめは皮膚のかゆみや赤み、じんましんが出ることが多く、次のような症状に広がることがあります。
- まぶたや唇、顔の腫れ
- 息苦しさ、咳込み、ゼーゼーする呼吸、喉の締めつけ感、声のかすれ
- 腹痛、吐き気、嘔吐
- ふらつき、血圧の低下、意識が遠のく感じ
きっかけになる運動は、球技やランニングなど負荷の大きいものが多く、国内の集計では発症時の運動の6割以上を占めます。ただし歩行も17%あり、散歩や入浴中に起こった例もあります。「激しい運動はしていないから関係ない」とは言い切れません。
もう一つの特徴は、同じ物を食べて同じように体を動かしても、症状が出る日と出ない日があることです。そのため食べ物との関係に気づきにくく、原因がはっきりしないまま症状を繰り返すことがあります。
喉や胸の締めつけ、声のかすれ、息苦しさ、続く強い咳込み、繰り返す嘔吐、我慢できない強い腹痛、強いふらつきや意識が遠のく感じが今まさにある場合や、複数の症状が急速に広がっている場合は、119番で救急車を呼んでください。アドレナリン自己注射薬を処方されている方は、説明を受けた手順に従って使ってください。
原因になりやすい食べ物は何ですか?
国内の過去の報告例149人の集計では、原因の食べ物は小麦が約6割、エビやカニなどの甲殻類が約3割で、この二つで大半を占めます。残りはソバ、魚、果物、牛乳などで、最近は果物や野菜による報告が増えています。
原因の食べ物は、それまで問題なく食べてきた物であることが多く、「ずっと食べているから違う」とは考えないことが大切です。とくに小麦は、パン・麺・揚げ物の衣・お菓子など多くの料理に使われていて、原因として気づきにくい食べ物です。
小麦が原因の場合の検査や、どこまで避けるかの考え方は大人の小麦アレルギーで、エビやカニの場合は甲殻類アレルギーで詳しくご説明しています。
運動のほかに、症状を起こしやすくするものはありますか?
運動のほかにも、次のような条件が重なると症状が出やすくなります。問診ではこれらも一つずつ伺います。
- 疲れ、睡眠不足、かぜ
- 精神的なストレス
- 月経前
- 暑さ・寒さ・湿度
- 痛み止めや解熱薬のうち、非ステロイド性抗炎症薬(ひステロイドせいこうえんしょうやく:NSAIDs。アスピリンなど)
- お酒、入浴、花粉の飛ぶ時期
とくに痛み止め(NSAIDs)や飲酒が重なると、運動をしなくても症状が出ることがあります。処方されている薬は自己判断で中止せず、診察時にお伝えください。
発作が出たときはどうすればよいですか?
運動中に皮膚のかゆみや違和感、じんましんが出てきたら、前ぶれの段階ですぐに運動をやめ、安静にすることが勧められています。症状が皮膚のかゆみやじんましんだけの場合は、あらかじめ医師から指示された抗ヒスタミン薬を使い、じんましんが全身に広がる、だんだん悪くなるといった場合は医療機関を受診してください。抗ヒスタミン薬はかゆみなどの皮膚の症状を和らげる薬で、息苦しさや血圧の低下を止めることはできません。息苦しさ、喉の締めつけ、強いふらつきなどがある場合は、抗ヒスタミン薬の効果を待たずに、次の対応をとってください。
次の症状が一つでもある場合は、アドレナリン自己注射薬を処方されている方はすぐに使い、救急車を呼んでください。
- 喉や胸が締めつけられる、声がかすれる
- ゼーゼーする呼吸、息がしにくい、強い咳込みが続く
- 繰り返し吐く、がまんできない強い腹痛
- 唇や爪が青白い、意識がもうろうとする、ぐったりしている
アドレナリン自己注射薬は、医療機関に着くまでの間に症状の進行を抑えるための薬です。使ったあとは、症状が軽くなっても歩いて受診せず、救急車で医療機関へ向かってください。
救急車を待つ間は、原則として横になり、急に立ち上がったり座ったり、歩いたりしないでください。息苦しくて横になれない場合は、上体を起こした楽な姿勢に、吐いている場合は横向きなど楽な姿勢にします。重い症状があった場合は、自己注射薬を使っていなくても、いったん良くなっただけで受診をやめないでください。
この病気と診断された方や、一度でも全身の症状が出た方には、症状の内容や起こった回数、喘息の有無など重くなりやすい条件に応じて、アドレナリン自己注射薬の処方を検討します。初めての発作が軽かったとしても、次も軽く済むとは限りません。当院では処方とあわせて、使うタイミングと、太ももの前外側に打つ使い方を一緒に確認します。使っている薬によって注意点があるため、受診の際はお薬手帳をお持ちください。緊急時には、あらかじめ説明を受けた使う目安に従い、自己注射をためらわないでください。
発作に備えて、運動はできるだけ一人で行わず、一緒にいる人に病気のことと自己注射薬の置き場所を伝えておくと安心です。
どのように診断するのですか?
診断の中心は問診です。症状が出た日のことを、次の点に沿って伺います。
- 何を、どのくらい食べたか
- 食べてからどのくらい後に、どんな運動や行動をしたか
- 運動を始めてから、どのくらいで症状が出たか
- 痛み止め・飲酒・疲れ・睡眠不足・月経などの条件が重なっていなかったか
- 同じ物を食べて運動しなかった日や、別の物を食べて運動した日はどうだったか
症状が出たときの皮膚の写真や、その日に食べた物と行動の記録があると、診断の手がかりになります。
そのうえで、院内の採血で、疑わしい食べ物に絞って特異的 IgE 抗体(とくいてき IgE こうたい:特定の物質に反応する抗体)を調べます。小麦が疑われるときは、小麦そのものに加えて、小麦の中で原因になりやすい成分(ω-5グリアジン)も保険で調べられます。ただし、検査が陽性でもその食べ物が原因とは限らず、陰性でも否定はできません。検査の数値だけで決めず、問診の内容と合わせて判断します。
数十項目をまとめて調べる検査は、この病気の診断には向きません。食べても何も起きない食べ物まで陽性に出ることが多く、本当の原因がかえって分かりにくくなるためです。理由はやみくもなアレルギー検査はしないほうが良いで詳しく解説しています。
問診と血液検査で原因がはっきりしないときは、皮膚テストや、疑わしい食べ物を食べてから運動して症状が出るかを確かめる誘発試験を検討します。誘発試験は強い症状が出るおそれがあるため、入院できる専門の医療機関で、医師が付き添って行う検査で、行える施設は限られます。また、誘発試験で症状が再現されないこともあり、結果が陰性でも病気を否定しきれない場合があります。原因を確かめるために、自分で疑わしい食べ物を食べて運動したり、痛み止めや飲酒を組み合わせたりしないでください。当院では誘発試験は行っておらず、誘発試験や小麦の皮膚テストが必要な場合は、行える医療機関へご紹介します。エビや果物が疑われる場合は、皮膚テストを当院で行えます。
日常生活ではどんなことに気をつければよいですか?
原因の食べ物が分かったら、食べ物と運動の組み合わせを避けることが対策の基本です。診療の指針では、次の点が勧められています。
- 運動の前には、原因の食べ物を食べない
- 原因の食べ物を食べたときは、食後最低2時間、できれば4時間は運動を避ける
- 痛み止め(NSAIDs)を飲んでいるときなど、ほかの条件が重なるときは原因の食べ物を食べない
- 抗ヒスタミン薬と、処方されている方はアドレナリン自己注射薬を持ち歩く
- 皮膚の違和感などの前ぶれが出た段階で安静にし、必要に応じて薬を使い、受診する
これらは一般的な目安で、時間を過ぎれば必ず安全という意味ではありません。過去に食後4時間を過ぎてから症状が出たことがある方など、時間の空け方は人によって調整が必要です。通勤で歩く距離、仕事で体を動かす時間帯、ジムや週末のスポーツの予定など、生活に合わせて一緒に決めていきます。
原因の食べ物を完全に避ける必要があるか、どの程度の運動を控えるかは、人によって異なります。必要以上の食事や運動の制限で生活の質を損なわないよう、症状の重さや生活に合わせて決めます。ただし、食べるだけで症状が出る方や、重い症状を繰り返す方では、原因の食べ物を完全に避けることもあります。小麦の場合の段階的な考え方は大人の小麦アレルギーをご覧ください。
この病気は自然には治りにくく、長く付き合うことになる場合が多い病気です。そのぶん、原因の食べ物と時間の目安が分かれば、予定を立てて発作を避けやすくなります。生活や体調の変化に合わせて、定期的に対策を見直していきます。
なみきばしクリニックでの診療
当院のアレルギー科では、日本アレルギー学会 アレルギー専門医の資格を持つ内科担当医が、大人の食物アレルギーを診療しています。食後の運動や入浴でじんましんが出た、原因の分からないアナフィラキシーを起こしたことがある、という方には、症状が出た日の食事と行動を伺い、原因の候補を一緒に整理します。
検査は、問診で絞った項目の採血を院内で行います。結果は陽性・陰性の二択で終わらせず、「何を食べたら何時間は運動を避けるか」「痛み止めが必要なときはどうするか」など、日々の生活に落とし込んでご説明します。アドレナリン自己注射薬が必要な方には、処方と使い方の指導を行います。誘発試験など専門の検査が必要な方は、行える医療機関へご紹介します。喘息のコントロールが悪いと発作が重くなりやすいため、喘息のある方は喘息の治療もあわせて見直します。
渋谷駅・恵比寿駅・代官山駅からお越しいただけます。アレルギー科のご案内と大人の食物アレルギーもあわせてご覧ください。診察のご予約はWeb予約からどうぞ。
よくあるご質問
Q1. 食後の運動でじんましんが出ました。何科を受診すればよいですか? アレルギー科、またはアレルギーを診ている内科です。この病気の診断は、症状が出た日の食事と行動を詳しく伺うことが中心になるため、大人の食物アレルギーを診療している医療機関で相談すると、原因の食べ物と対策をまとめて検討できます。息苦しさや意識が遠のく感じなど、重い症状が今まさにある場合は、受診先を探さずに119番で救急車を呼んでください。
Q2. 運動するとじんましんが出ます。この病気でしょうか? 食べた物に関係なく、運動や入浴、緊張などで汗をかく場面に、チクチクした数mm程度の小さな膨らみがたくさん出る場合は、コリン性蕁麻疹という別の病気のことが多く、多くは皮膚の症状にとどまります。この病気では、特定の物を食べた日に限って症状が出て、大きめのじんましんが広がり、息苦しさなどに進むことがあります。ただし、コリン性蕁麻疹でも、重い場合はまれに全身の症状を伴うことがあり、じんましんの大きさだけでは判断できません。息苦しさやふらつきがあるときは、救急車を呼んでください。また、まれに、食事と関係なく運動だけで起こるアナフィラキシーもあります。見分けがつかないときは、症状が出たときの皮膚の写真と、その日の食事・運動の記録をお持ちください。コリン性蕁麻疹は蕁麻疹(じんましん)のページで解説しています。
Q3. 症状が出たのは一度だけです。受診したほうがよいですか? 受診をお勧めします。この病気は同じ条件でも症状が出たり出なかったりするため、一度だけでも原因の食べ物が関わっていることがあります。初めての発作が軽くても次も軽く済むとは限らないため、原因を確かめ、発作が出たときの備えを決めておくことが大切です。
Q4. 運動さえしなければ、原因の食べ物を食べても大丈夫ですか? 運動の前に食べないことと時間の空け方を守ったうえで、原因の食べ物を食べられる方もいます。ただし、痛み止めや飲酒、体調不良が重なると、運動をしなくても症状が出ることがあります。食べるだけで症状が出るほど敏感な方もいるため、どこまで食べてよいかは自己判断せず、診察でご相談ください。
Q5. 運動の前に抗ヒスタミン薬を飲めば防げますか? 抗ヒスタミン薬などを運動の前に飲んで発作を防ぐ方法は、効果を確かめた十分な根拠がなく、それだけで安全に運動できるとは言えません。予防の基本は、原因の食べ物と運動の組み合わせを避けることです。抗ヒスタミン薬は、症状が出たときに使う薬として持ち歩いてください。
Q6. この病気は治りますか? 自然には治りにくい病気とされています。ただ、原因の食べ物と、運動するまでの時間の目安が分かれば、予定を立てて発作を避けやすくなります。また、石鹸などに含まれていた加水分解小麦(小麦のタンパク質を分解して作った成分)がきっかけで小麦アレルギーになった方では、その製品の使用をやめたあと、時間をかけて改善した方が多くいます(大人の小麦アレルギー)。
参考文献
- 日本小児アレルギー学会. 食物アレルギー診療ガイドライン2021. 協和企画, 2021(第13章 食物依存性運動誘発アナフィラキシー).
- 厚生労働科学研究班(研究代表者 海老澤元宏). 食物アレルギーの診療の手引き2023(2026年4月10日版).
- 蕁麻疹診療ガイドライン策定委員会. 蕁麻疹診療ガイドライン2026(第4版). 日本皮膚科学会雑誌. 2026;136(4):375-493.
- Iglesia EGA, et al. Management of Food Allergies and Food-Related Anaphylaxis. JAMA. 2024;331(6):510-521.
- Bernstein JA, et al. The diagnosis and management of acute and chronic urticaria: 2014 update. J Allergy Clin Immunol. 2014;133(5):1270-1277.
- Giannetti MP. Exercise-Induced Anaphylaxis: Literature Review and Recent Updates. Curr Allergy Asthma Rep. 2018;18(12):72.
- Sicherer SH, Simons FER; Section on Allergy and Immunology. Epinephrine for First-aid Management of Anaphylaxis. Pediatrics. 2017;139(3):e20164006.
- 日本アレルギー学会. アナフィラキシーガイドライン2022. 2022.
- 日本アレルギー学会. アレルギーを知ろう/Q&A「特殊な食物アレルギー」「アナフィラキシー」.
