「家族にいびきがうるさいと言われる」「しっかり寝たはずなのに日中に眠くなる」──そうした変化を、年齢や疲れのせいだと考えて受診を先延ばしにしている方は少なくありません。睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間にのどの奥の空気の通り道がふさがり、呼吸が止まったり浅くなったりすることを繰り返す病気で、いびき・日中の眠気・起床時の頭痛といったサインがあれば、ご自宅で受けられる検査で確かめられます。
このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(日本内科学会 総合内科専門医・日本呼吸器学会 呼吸器専門医)が、睡眠時無呼吸症候群の全体像として、自覚症状と受診の目安、起こる理由、放置したときの体への影響、検査と治療の流れをご説明します。当院では、簡易検査も精密検査(PSG)も入院せずご自宅で受けられ、診断からCPAP治療の継続まで一貫して対応しています。いびき・眠気・血圧など、気になっている点ごとの詳しい解説ページもご用意しています。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。
睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気ですか?
眠るとのどの筋肉がゆるみ、咽頭(いんとう:のどの奥の空気の通り道)はふだんより狭くなります。この狭まりが強いと、空気の流れが10秒以上ほぼ止まる「無呼吸」や、10秒以上弱くなり、血液中の酸素の低下や睡眠中の短い覚醒を伴う「低呼吸」が起こります。これが一晩に何度も繰り返されるのが閉塞性睡眠時無呼吸(へいそくせいすいみんじむこきゅう)で、一般に睡眠時無呼吸症候群(SAS)と言うときは、このタイプを指します。心不全などに伴い、脳からの呼吸の指令が弱まって起こる中枢性(ちゅうすうせい)のタイプもありますが、このページでは閉塞性を中心に扱います。
診断には、睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数であるAHI(無呼吸低呼吸指数)を使います。成人では、AHIが5以上で、日中の眠気や目撃された無呼吸などの症状、または高血圧などの関連する病気を伴う場合に、睡眠時無呼吸症候群と診断します。AHIが15以上であれば、症状がはっきりしない場合でも診断の対象になります。重症度は、5以上15未満が軽症、15以上30未満が中等症、30以上が重症です。
2019年に公表された推計では、日本で中等症以上(AHI 15以上)にあたる方は、30〜69歳だけで約900万人とされています。治療を受けている方はこれよりはるかに少なく、多くの方が気づかないまま過ごしていると考えられます。
どんな自覚症状があれば受診を考えるべきですか?
次のようなサインは、睡眠時無呼吸症候群を疑って検査を考える目安になります。
- 眠っている間に呼吸が止まっている、息が詰まるようだと家族に指摘される
- 毎晩のように大きないびきをかく
- 睡眠時間は足りているはずなのに、日中に強い眠気がある
- 起床時に頭痛や頭の重さがある
- 夜中にトイレで何度も目が覚める(夜間頻尿)
- 健診で血圧が高めと言われた、または降圧薬を飲んでいても血圧が下がりにくい
なかでも1つ目は、それだけで検査に進む理由になります。眠っている間の自分の呼吸は本人には分からないため、同居する方による無呼吸の目撃は、受診につながる重要な手がかりです。ただし、目撃がなくても睡眠時無呼吸を否定することはできません。また、いびきがあっても無呼吸がほとんどない方もいて、いびきの音だけでは区別できません。
眠気を感じていないから大丈夫、とは言えません。国内の睡眠時無呼吸の患者さんについての報告では、約半数が日中の強い眠気を感じていないとされています。眠気の程度は、エプワース眠気尺度という8項目の質問票で点数にでき、合計11点以上が過度の眠気の目安です。ただし眠気の原因は、睡眠時間の不足や服用中のお薬、体内時計のずれなど、睡眠時無呼吸以外にもあります。
気になっている症状ごとの詳しい解説はありますか?
状況に応じて、次のページで詳しくご説明しています。
- いびきだけなのか、無呼吸なのかを知りたい方 → いびきと睡眠時無呼吸症候群の違い
- 家族に「寝ているとき息が止まっている」と言われた方 → 家族にいびきを指摘されたら
- 日中の眠気が強く、原因を知りたい方 → 日中の強い眠気は病気のサイン?
- 太っていないのに睡眠時無呼吸を疑われた方 → やせていても睡眠時無呼吸になる?
- 朝の血圧が高い、薬で血圧が下がりにくい方 → 睡眠時無呼吸と高血圧の関係
- 自宅での検査の流れや費用を知りたい方 → 睡眠時無呼吸の自宅検査
- CPAPをいつまで続けるのか知りたい方 → CPAP治療はいつまで続ける?
太っていなければ、睡眠時無呼吸の心配はないのですか?
太っていなくても起こります。睡眠時無呼吸は、のどの奥が狭くなりやすい体の条件に、眠ってのどの筋肉がゆるむことが重なって起こります。
もっとも大きな要因は肥満です。首やのどのまわりに脂肪がつくと、空気の通り道が狭くなります。米国の追跡研究では、体重が10%増えるとAHIが約32%増え、10%減ると約26%減ると推定されています。ただし変化には個人差があり、減量しても無呼吸が残ることがあります。
一方で、骨格や形の特徴でも気道は狭くなります。あごが小さい、下あごが後ろに引っ込んでいる、扁桃(へんとう)が大きい、鼻づまりが続いている、といった場合です。新潟県内の病院で精密検査を受けた患者さんを対象とした報告では、閉塞性睡眠時無呼吸と判定された方の約4割がBMI 25未満で、肥満ではありませんでした。男性に多く、男性では40〜50歳代が半数以上を占めます。女性は閉経後に増えます。
睡眠時無呼吸を放置すると、体にどんな影響がありますか?
無呼吸や低呼吸が繰り返されると、血液中の酸素が下がったり、呼吸を再開する際に脳が短く目覚めたりします。これが一晩中続くため、眠りが細切れになり、日中の眠気や集中力の低下につながります。
呼吸が止まるたびに交感神経(こうかんしんけい:体を活動状態に切り替える神経)が高ぶり、血圧が上がります。そのため睡眠時無呼吸症候群は高血圧と深く関係しており、朝の血圧が高い方や、降圧薬を複数使っても血圧が目標まで下がらない方では、背景に睡眠時無呼吸がないかを確かめる意味があります。重症の方ほど、心筋梗塞や脳卒中などの心臓・血管の病気のリスクも高くなります。
日中の眠気は運転にも影響します。睡眠時無呼吸と交通事故には関連があり、研究をまとめた解析では、事故のリスクが約2.4倍と報告されています。運転中に強い眠気が出る、居眠りしそうになるという場合は、運転を控えて早めに受診してください。運転中に眠気を感じたときは、安全な場所に車を止めて休んでください。
まずは検査で無呼吸の程度を知り、症状や血圧の状態に合わせて治療を選ぶことが次の一歩になります。
どのように検査・診断しますか?
検査には2つの種類があります。
- 簡易検査:指と鼻にセンサーを付けて眠り、呼吸の流れと血液中の酸素の値を記録します。ご自宅で、ご自身で装着して行います。
- 精密検査(PSG:睡眠ポリグラフ検査):脳波も含めて記録し、睡眠の深さや質まで詳しく調べます。以前は入院して行うのが一般的でしたが、近年は自宅でも受けられるようになりました。
大きな持病のない方は、簡易検査から始めることが多くあります。簡易検査は、実際に眠っていた時間ではなく記録した時間をもとに回数を計算するため(REI:呼吸イベント指数)、精密検査のAHIより低く出ることがあります。簡易検査の数値が低くても、無呼吸の目撃や症状、併存する病気などから睡眠時無呼吸が疑われる場合は、精密検査で確かめます。センサーの外れなどで十分な記録が取れなかった場合も、追加の検査が必要です。
当院では、簡易検査も精密検査もご自宅で受けていただけます。入院での検査が望ましい場合は、実施している医療機関にご紹介します。検査の具体的な流れや費用の目安は、睡眠時無呼吸の自宅検査のページでご案内しています。
睡眠時無呼吸症候群はどのように治療しますか?
治療の目的は、日中の眠気や起床時の頭痛などの症状を軽くすること、そして高血圧をはじめとする体への負担を減らすことです。中等症から重症では、CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)が治療の中心になります。

鼻(または鼻と口)にマスクを付けて眠ると、装置から送られる空気の圧で狭くなった気道が押し広げられ、呼吸が止まるのを防ぎます。始めたばかりの時期は、空気の勢いやマスクに違和感を覚える方もいます。マスクの種類や設定を見直しながら、続けやすい形を一緒に探します。
CPAPを保険診療で始める目安は、2026年6月以降、一般に精密検査でAHI 15以上、簡易検査でAHI(REI)30以上です。数値だけでなく、日中の眠気などの症状で日常生活に支障があることなども含めて判断します。
CPAPは、使っている間に気道がふさがるのを防ぐ治療で、病気そのものを治すものではありません。原因となる体の条件が変わっていなければ、使うのをやめると無呼吸は速やかに再発します。自己判断で中止せず、減量などで状態が変わった場合は、再検査で続ける必要があるかを判断します。続ける期間や、やめられる条件についてはCPAP治療はいつまで続ける?で詳しくご説明しています。
このほかの選択肢として、口腔内装置(こうくうないそうち:下あごを前に出して気道を広げるマウスピース)があります。主に軽症から中等症の方や、CPAPがどうしても合わない方が対象で、歯科で作製します。当院では作製を行っていないため、診断した医師から歯科へ診療情報を提供してご案内します。肥満がある方では、減量も治療の柱です。のどの形に原因がある場合でも、まずCPAPなどで治療を始め、手術はそのうえで検討するのが一般的です。
なみきばしクリニックでは、どのように診療していますか?
当院の呼吸器内科では、内科担当医(日本呼吸器学会 呼吸器専門医)が、問診から検査、診断、CPAPの導入と継続まで一貫して担当します。
- 受診時には、いびき・眠気・起床時の症状・血圧・服用中のお薬などを伺います
- 簡易検査・精密検査(PSG)とも、ご自宅で受けていただけます
- CPAPを始めたあとも定期的に受診していただき、使用状況や症状、血圧の経過を確認します
- 口腔内装置が適している場合は歯科へ、入院での検査が必要な場合は実施している医療機関へご紹介します
長引く咳や喘息など、ほかの呼吸器の病気とあわせてご相談いただくこともできます。呼吸器の診療全体は呼吸器内科のご案内を、診療日と時間は診療時間のページをご覧ください。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 睡眠時無呼吸症候群は何科を受診すればよいですか? いびきや日中の眠気、家族に指摘された無呼吸がきっかけであれば、睡眠時無呼吸を診療している内科(呼吸器内科など)が窓口になります。鼻づまりや扁桃の大きさなど、鼻やのどの形が主な原因と考えられる場合は、耳鼻咽喉科での診察が必要になることもあります。
Q. 検査のために入院は必要ですか? 当院では簡易検査も精密検査(PSG)もご自宅で受けていただけます。ご自宅でセンサーを付け、いつもどおりに眠っていただく形です。入院での検査が望ましいと判断した場合は、実施している医療機関にご紹介します。
Q. 日中の眠気がなければ、検査は受けなくてもよいですか? 眠気がなくても、睡眠時無呼吸を否定することはできません。国内の患者さんについての報告では、約半数が日中の強い眠気を感じていないとされています。家族に無呼吸を指摘された、朝の頭痛や夜間頻尿が続く、血圧が下がりにくい、といった場合は検査をおすすめします。
Q. CPAPは一生続けなければいけませんか? CPAPは使っている間に効果を発揮する治療で、原因となる体の条件が変わっていなければ、やめると無呼吸が再発します。そのため多くの方は長く続けることになりますが、減量などで状態が変わった場合は、再検査で治療を見直すことがあります。詳しくはCPAP治療はいつまで続ける?をご覧ください。
Q. やせていても睡眠時無呼吸になりますか? なります。新潟県内の病院で精密検査を受けた患者さんを対象とした報告では、閉塞性睡眠時無呼吸と判定された方の約4割がBMI 25未満でした。あごの骨格や扁桃の大きさなど、体型以外の要因でも起こります。詳しくはやせていても睡眠時無呼吸になる?をご覧ください。
参考文献
- 日本呼吸器学会ほか編『睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020』南江堂
- 日本呼吸器学会「呼吸器の病気 I-05 睡眠時無呼吸症候群」
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 15. 医療技術の適切な評価」p.50「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料の見直し」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠時無呼吸症候群 / SAS」
- 佐藤誠「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疫学」日本内科学会雑誌 2020;109(6):1059-1065
- 竹上未紗、笽島茂、山崎新、中山健夫、福原俊一「The Epworth Sleepiness Scale の性・年齢階級別得点分布と日中の過度の眠気の有症割合の推定──地域住民を対象とした調査」日本公衆衛生雑誌 2005;52(2):137-145
- 国土交通省 物流・自動車局『自動車運送事業者における睡眠時無呼吸症候群対策マニュアル ~SAS対策の必要性と活用~』令和7年7月
- Peppard PE, et al. Longitudinal study of moderate weight change and sleep-disordered breathing. JAMA. 2000;284(23):3015-3021.
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- Kent D, et al. Referral of adults with obstructive sleep apnea for surgical consultation: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. J Clin Sleep Med. 2021;17(12):2499-2505.
※本ページは一般的な情報提供を目的としています。診断・治療方針は個々の状態により異なります。最終的な判断は診察のうえで行いますので、気になる症状のある方は医療機関にご相談ください。
